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オッペンハイマーのkomagire23のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)

この映画『オッペンハイマー』を見事な作品にしている要因に、以下の3つの柱があると感じられました。

1.ナチスの原爆開発に対抗するための、核分裂による兵器(原爆)の開発を量子力学の物理学者として陣頭指揮する姿
2.妻や恋人(愛人)との悲劇的含めた関係性
3.赤狩り(共産主義者の追放)により、戦後にソ連・共産党との関係を疑われ事実上に公職追放される聴聞会の場面

これら3つの、原爆開発での物理学者の振る舞い、妻や恋人(愛人)との関係、共産主義者としてのスパイ疑い、にまつわる不安や深刻さは、時系列が織り交ぜられることで、それぞれの場面で溶け合い錯綜し、映画で人間の矛盾に満ちた深さを表現することに成功していると思われました。

私個人も、当時のアメリカによる焼夷弾による日本の都市への焼き払い空爆や、原爆の投下は、明らかな国際法違反だと思われています。
であるので、この映画が原爆被害を直接描いていない批判があることも理解します。

ただ一方で、日米の当時の戦闘で、特にペリリュー島や硫黄島や沖縄戦での日本軍の激しい玉砕的な抵抗で、日米双方に多大な犠牲が出ていたこと、沖縄戦での多大な犠牲が出ても日本は(沖縄戦と同様の)本土決戦をあきらめる気配がなかったこと、そもそも日本が中国や東南アジアを侵略的に民衆含めて攻撃していたこと、もっと言えば当時は国際法違反である民間人への攻撃をさしてどの国も考慮していなかったこと、元はと言えば西欧もアジアを植民地的に支配していたこと、など、双方の積み重ねられたそれまでの経緯描写が出来ない限り、この映画で1つの場面だけ切り取って一方的な加害者/被害者の描写をしなかったことは、私には許容範囲で理解は出来ました。

よって、映画としてこの『オッペンハイマー』を、原爆・水爆への強い拒否感も含む複雑な対峙を含めて、見事な作品であると私的には思われました。
多くの日本の観客も、一方的な加害者/被害者には分けられない、その複雑さを受け取ったと思われています。
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