スズキ

ノースマン 導かれし復讐者のスズキのレビュー・感想・評価

3.4
力作だとは思うけど、いまいちハマりきれなかったな。

儀式的シーンのやりすぎ感、スケールの大きい映画なのにストーリーの内輪的しょぼさ、(敢えてなんだけど)せっかくのアイスランドの風景が魅力的じゃない、元々チャンバラが苦手…強いてあげるなら、そんな感じかな。

結局、父親の傍若無人さと母の企みがストーリーの起点で、それだけなら別にいいんだけど無関係な他人が殺されまくるから、そもそも内輪で解決しろや感が終始つきまとう。

一応は、戦うこととか復讐の愚かしさが大枠のテーマとしてはあるにせよ、そんなこと今さら描かれても…だし、もっと納得いく描き方があったのでは、とも思う(実際の戦争の始まりはもっと複雑だろうと)。

あと個人的にはアニャテイラージョイが好きで、ここまでの活躍を見てきてるので、何をやってもゴージャスに感じてしまって役柄に不釣り合い。これはハイブランドのモデルをやることの弊害なんだろうな。なにをやっても美しさがつきまとってしまう。

あとCGシーンはギリギリ、しょぼく感じてしまった。みんなどうなんだろう。

上記のようなことが気になって入り込めず、生死をかけたチャンバラなのに、なんで相手が切られるのを待ってるのよとか、奴隷なのになんでそんなに自由に動けてるのよとか、瑣末なことが気になってしまった。自分が異世界ものとか時代物をいまいち楽しめないのは、この辺なんだよな。向いてないんだと思います。いつか楽しみたいのだけど。

ロケ場所が比較的近い『イニシェリン島』の風景は魅力的で、今作はそうでもない理由を考えてたのだけど、
意図して風景を魅力的に見せようとしていた『イニシェリン』に対して本作は、
・設定として辛い土地だから土地を魅力的に描くべきではない
・カメラが人物に寄るから背景が見えにくい
・あの景色は岩があってこそ緑も生きる土地だけどいわがあんまり映らない
みたいなところかなと思いました。

めちゃくちゃお金かかってそうで、それを形に仕上げたのは凄いし、戦闘シーンは大迫力、ビョークの役柄とかも面白いし、アイスランド好きだからヴァイキングを映画にしてくれてありがとう。という、気持ちはあります!

あとムキムキの男たちを見たい人には嬉しい作品なんだと思います。

ここで終わるかな、と思ったらところから展開する部分が、今描く価値なのかな。いかんせん、そこまでが長すぎるけど。

父を殺した叔父に復讐を果たそうとするも、そこに秘められた真実を知り、血塗られた歴史に終止符を打とうとするものそこに飲み込まれる男の話。
スズキ

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