MasaichiYaguchi

ほとぼりメルトサウンズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ほとぼりメルトサウンズ(2021年製作の映画)
3.6
東かほり監督による⻑編デビュー作は、アーティスト xiangyu(シャンユー)さんを主演に迎え、彼⼥が或る町で出会った⼈々との交流を軸にドラマが展開していて、出演者に鈴⽊慶⼀さん、平井亜⾨さん、宇乃うめのさん、坂⽥聡さんら多彩なキャストが集結している。
この作品は、xiangyu さんが綴ってきたエッセイから派⽣し出来た映像作品で、彼女は主演だけでなく⾳楽担当としても参加している。
ヒロインのコトは祖⺟の家だった空き家を訪れたが、何だか様⼦がおかしい。
家の庭には⾒知らぬダンボールハウスが建っていて、妙な⽼⼈が住み着いていた。
その老人タケは街の⾳を録っては⼟に埋める〝⾳の墓〟を作っていて、その奇妙な⾏動に興味を持ったコトはタケの⼿伝いを始める。
そこへ、家の⽴ち退きを要請しに訪問者である山田がやって来て、⼀冬のコトの不思議な⽣活が幕を開ける。
都会に住んでいると、沢山の音に囲まれていることを忘れてしまう。
その殆どがノイズだと思うが、この作品を観ていると、そのノイズの中にも人によっては掛け替えのない「音」が存在するような気がする。
何故タケが街の⾳を録っては⼟に埋める行動をしているのか、その謎を紐解く本作だが、その過程でコトを中心に、タケ、山田、更に山田の先輩である浩子も加わり、この不器用なりに生きる登場人物たちの交流が温かく描かれていく。
果たしてタケが目標とする「音」が集まった先に、どのような結末を迎えるのか?
限界集落という問題を提起をしながら、本作はコロナ禍における社会で、生きること、死ぬことについて我々に問い掛けているような気がする。