Shoji

イニシェリン島の精霊のShojiのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
5.0

コリン・ファレルが気の毒すぎ
黒ビールうまそう

スリー・ビルボードと同じく、割と寓話的、図式的な作りで、小難しい大層な映画にぱっと見は見えるかもしれない。だけど、そのストーリーが語っていることは以下みたいなある種身も蓋もないことだと思う。
まずは、人間は全員違う価値観、信条、行動原理とかを持っていて、そいつらが偶発的なタイミングで、言語っていう不完全なツールを使ってコミュニケーションをするので、100%分かり合えることは原理的にありえない。そして、その人間たちがわちゃわちゃ勝手にコミュニケーションすることで、嬉しくなる奴も悲しくなる奴も、サイコロを振るように確率的に、そして、自然現象のように無意味に、自動生成され続ける。
このメッセージ自体には作り手の、善悪をはじめとしていかなる価値判断も入る余地がなくて、それはただの端的な事実だと言っていいと思う。この価値判断の無いメッセージと、しっかりエンタメ性を入れてくるセンスが相まって、映画に説教臭さは全く感じられない。一方で、そのメッセージが人間にとってあまりにも根源的でどうしようもない事実なので、観てる側の人間には謎の悲喜こもごもが発生するやつ。

親ガチャっていう言葉があるけど、普通に考えて人生においてガチャ要素は親以外にもいっぱいあるわけで、というか、人生の全ての要素が本来はガチャなわけで。
そんなことを寓話として描くと、マーティン・マクドナーの映画になるのかもしれない。

こんな、身も蓋もない、ある意味でありふれていてドラマチックさもクソもない、単なる「本当のこと」をフィクションで強度を持って語ってくるので、マーティン・マクドナーはやばい。
Shoji

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