けーてぃー

イニシェリン島の精霊のけーてぃーのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
研ぎ澄まされた寓話
切れ味が鋭い不条理劇で、監督お得意のブラックユーモアとバイオレンスに溢れ、どこに着地するか予想もつかない脚本や会話劇も面白い
俳優陣が素晴らしい事も言うに及ばない コリンファレルやブレンダングリーソンを始めとして全員上手すぎる

序盤でパードリックが見つめる水平線の先に煙が立ち上り不穏な音が聞こえた時点で対立や戦争を描こうとしたのは良いとして・・・
これを男女で描くと痴話喧嘩になりかねないところを、無二の親友同士にやらせるから核心に迫れるし意地が悪い
”二つの死”があの結末になったのも不条理極まりない

動物など含めて色々なモチーフが入れ込まれていると思うが完全に自分の手に余る
指は手とともに物理的に他者/物とつながるためのもので、手を切るとは良く言ったものでまんま見せられるとは
また家は心のシェルターのモチーフに見えた パードリックからすれば自分の世界に閉じこもるコルムへのカウンターとしてあの行為があったのかなと

そして完全にこちらに委ねられるオープンで切れっ切れなラスト
賞レースで話題になるのも納得の良作