IKUZAGIE

イニシェリン島の精霊のIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8
かなり面白かったっす。些細な仲違いが、後戻りのできない遺恨にまで発展するという、ちょっと怖いコメディ・ヒューマンドラマでした。映像とロケーションもとても素晴らしかった。全く馴染みのないアイルランドの景色は、映画「LAMB /ラム」を想起させてしまい、なんとなくおとぎ話か寓話でも見ているような感覚でしたが、ストーリーも映像も役者さんの演技もとても楽しめました。監督は傑作「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。
善人か悪人か分からない登場人物達は、どこか滑稽で憎めなく、この人かわいそうと思ったら、なんかこの人やばいかもと思わせたり、こいつやべえと思ったら、実はいい人なのかもと思わせたりする感じは「スリー・ビルボード」と同様とても面白い。また、「どちらが正しい」とか「人間こうあるべきだ」とか、説教くさいことをあまり言わないところも、とても好感が持てます。
ストーリーは、片田舎でおこった旧知の友人との喧嘩ですが、人口の少ない田舎にありがちな「田舎あるある」も絡んで、それも面白かった。スカッとする内容では無いので、鑑賞後は若干モヤッとしますが、一気に読んだ小説に満足した時のような充実感はありました。
ちょっと話はズレますが、私が少々若かりし頃、それなりに人生に成功した年上の方から「地位もお金も手に入れたら次に何が欲しくなるか知ってますか?」と聞かれたことがありまして、その答えは「名声」との事でした。どうやら人によっては、人生の後半に差し掛かると、名を後世に残したくなるそうです。
映画のように、自分の人生に対する焦りから対人関係に支障をきたすのもどうかと思いますが、世の中にある大きな争いごと、例えば戦争なんかも、そもそもの原因は誰かの焦りからくる気まぐれな心変わりだったとしたら、それはコメディを超えてホラーですね。怖い怖い。
しかし、「精霊」とは誰(どれ)のことなんでしょう?映画にはなんかキリスト教的な解釈とかあるんですかね?信仰心の薄い神道・仏教信者に誰かおせーて。
IKUZAGIE

IKUZAGIE