YOKOZUNA

イニシェリン島の精霊のYOKOZUNAのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

人それぞれが持つ思想や価値観は重層的で、さらにレイヤーの一部が他者と重なり合って、許容できる範囲の線引きをする。心境の変化でラインが変わり、友人と分かり合えなくなった経験は誰しもあるはず。人生を無為に浪費しないこと、優しくできるいい奴でいること、どちらも間違っていない。

老境を迎えるまでもなく、シボーンのように逃げることも、ドミニクのように消え去ることだって、この先の人生であるかもしれない。あのクソ警官にだけはなりたくないが。あいつをコルムが倫理でぶん殴ったとこと同じくらい、ご立派なこと言ってるコルムを知識で黙らせたシボーンが痛快だった。

前作スリー・ビルボードと同じく、理不尽な閉鎖空間の人間模様が白黒つけないまま、ただ本作では不穏に終幕する。些細なはじまりが命のとりあいにまで発展、イカれてるでしょ?と戦争のメタファーとしても機能している。

おじさん2人が喧嘩するだけで派手なこともそう起こらないが、鑑賞後も折に触れて考え込んでしまう。
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