よどるふ

BLUE GIANTのよどるふのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
-
まず何よりも、全編を通して描かれる演奏シーンが素晴らしかった。本作は、“音楽”の映画であると同時に、ステージ上で展開される“演奏”の映画でもある。誰かに“聴いて”もらうための音楽だけではなく、“観て”もらうための音楽も描かれているのだ。

演奏シーンは、モーションキャプチャーを使用して演奏する人物の動きをリアルにする手法を採用している一方で、演奏をしている者と演奏を観ている者の心象風景が現出したかのようなファンタジックな映像として表現されてもいる。そのバランスをコントロールする手際が見事なのだ。

演奏家としての“人生”の変遷は、まさに自分が立つ“舞台(ステージ)”の変遷でもある。長い人生においてはひとときに過ぎない年月を「関係者によるインタビュー」形式を用いて凝縮してみせながら、生き急ぐ若者たちによる“燃焼”を描く。その燃え上がる炎は、とても熱く、とても青い。

映画館という“場”に『BLUE GIANT』という“演奏”を出力し、劇場内をライブハウスに変貌させてやろうとする作り手の意志を感じた。音楽は、それを“演奏する者”および、それを“観る(聴く)者”の相関関係において成り立つものだという宣言も。エンディング曲への入り方は今年ベスト。
よどるふ

よどるふ