鰤鰭

BLUE GIANTの鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

久々にフィクションの力を肌で感じさせられた。こんな物語出来過ぎでありえないじゃん、みたいなことは百も承知で、それでもあらゆる手を尽くして全力で感情に訴えてくる王道中の王道青春ドラマ。サクセスストーリーを、そもそもがカッコいいジャズに乗せて。

リアルのライブとは違い、1から全て作れるアニメーションだからこそ、音楽と合わせて最大化できる映像演出が詰まってる。観客のリアクションも一つ一つ作って意図的にライブ中に挿入できるし、カメラの画角も遊びまくれる。かっこいいし演出的にも攻めてる表現が、大のサックスの勢いや活力、姿勢と重なる。(たまーに明らかにダサい演出も少しあるのはなんで?)

3人の人物配置も完璧。バンドに初心者の視点があるのが観客の感情移入先としてやはり良い。そして完全無欠の主人公。もう一人の才能として、雪折の挫折とひと足先に訪れる見せ場、からの、なるほど一度退場させておいて、まさかのアンコールで全盛りにする。
また大に関しては、一見するとエピソードが手厚過ぎる他の二人に食われてる感が少しあった気がしたけど、個人の内面的なところじゃなくて、口から出る言葉やその真っ直ぐさで、台風の目のような圧倒的な存在として物語全体を牽引してるんだな。ワンピースのルフィとかみたい。

観客も含めた登場する全キャラクター、人との繋がりが全てフリになって、後半の大きな感動の波に効いてくる。観客の涙はもう全部ずるい。ただ全員さすがに泣きすぎてたから、涙より多様な表情で見せて欲しかったかも。でも、たぶん泣かせようと思ってるところで観客全員泣けてるんじゃないかと思うくらい狙いにハマってるとは思う。

「宮本大の関係者が語る」ドキュメンタリー的な演出で、将来の成功が事前に分かりつつもその詳細は知らないので、小出しの情報開示が映画の推進力としても良い。観ていてストレスがないし、この先への期待感もある。

原作未見だけど、2時間の1本の映画として完璧な構成だと思う。ポスクレも含め。中間地点な区切りとしての終わり方と、続きを予感させる余白。ライブとエンドロール曲の地続き感も最高の余韻。
漫画への導入として、ひいてはジャズ自体への興味・関心を誘うコンテンツとしての貢献はエグいと思う。

ただ唯一、ロトスコープのCGだけは非常に残念。手書きのシーンと全然別の人に見えちゃう。特に、近作にスラダンがあっただけにそのクオリティの差が目立つ。

【鑑賞回数】1
【鑑賞履歴】
・2023/4/1 🎞T・ジョイ横浜【Dolby Atmos】
鰤鰭

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