もこもも

やがて海へと届くのもこもものレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
3.9
突然姿を消した親友を想い続ける真奈が親友の死を受け入れ、前に進み出す様子を繊細に描いた作品

繊細でたくさんの余韻を感じた...
こういう作品は余韻があるからこそ
自分の考えが頭の中を激しく巡る
最近視聴した、友人の死に対して
真っ直ぐにぶつかる『くれなずめ』とは
対照的に本作は親友の死を噛み砕いて
心に溶かして受け入れていく、
そんな作品の印象を受ける

「周波数を合わせるのラジオみたいに」

大学入学でサークルの勧誘を断りきれない真奈は人形のような可愛さとミステリアスな雰囲気を持つすみれと出会う
やがて親友となる真奈とすみれの会話はお互いを大切に想い合っている感情を感じれて素敵
本当の自分、自分でも気づかなかった自分を出せるような人との出会いはやっぱり素敵でかけがえのないものやなぁって

「私たちって
 世界の片面しか見えてないと思うんだよね」

主人公はすみれのことをどんな考えをもっていたのかわからないって言ってたけど
すみれは弱い普通の女の子だということが終盤のすみれ視点の回想で描かれていて、だからこそバス停の「真奈は強いよ」の言葉が心に響いた
世界の片面しか見えていない、本当にその通りだと感じる経験は多く、やっぱり人の考えってのは簡単には理解できないもの
だからこそ大切な人にはその人を知れるように、自分を知ってもらうように努力しないとなって感じる

津波もこの作品の大きなテーマ
津波の経験をビデオカメラに向けて1人、また1人語っていくシーンにじんわり胸が熱くなって最後の高校一年生の女の子の所では人の想いの強さと美しさに感動が溢れた
女の子と朝日が登る海のシーンも荒々しい波の力強さと朝日の温かな美しさが胸に沁みた

映像作品については日々新しいものを観て新鮮さを感じているけど、自分の目で見ている日常の風景はマンネリ化していて新鮮さに欠けているなぁって
行ったことがない場所、見たことがない景色に触れないまま死んでいくことはあまりに勿体無く、美しい海が見たくなったから旅に出ようと決意した
作中ですみれが歌っていたPUFFYの『これが私の生きる道』も素敵な曲で作品に合っている

一人の人間が死んでも、その人の存在が嘘かのように社会は当たり前のように回っていく
このことは悲しいとは思わないし、理解している
ただ周りの人からしたらとても大きなことだということ、別れは寂しいものであっても悲しいものではないけど永遠の別れは寂しくて悲しいものだということを絶対に忘れてはいけない

最初と最後のアニメーションからも、実写の部分からも、そしてラストの真奈のビデオ撮影からも人の想いこそ命であり、その想いは紡がれていくものであることを感じた

「深く深く愛して、
 真っ先に自分を受け入れてくれる人」
もこもも

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