椎蕈

ラーゲリより愛を込めての椎蕈のネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ユダヤ人強制収容を主題にした作品は何作か観たことあるけど、シベリア抑留を主題にした作品は初めて観た。
日本の戦争映画は特攻隊や海軍や原爆を主題にした作品が多い印象だったから見ていて新鮮で面白かった。
泣かせようとする演出があまりにもあざと過ぎる気はしたけど、実話だと思うとそんなの関係無しに泣けた。

ほとんど自由がない中で希望を持って生き続けた山本と、そんな山本によって考え方が変わっていく原、相沢、松田、新谷(しんちゃん)、収容されている周りのみんなの話。

希望がもうひとつの主題で、家族に会いたいという希望を全員が描いてたから分かりやすかった。
その中で妻子を亡くしてしまう相沢と、母親を亡くしてしまう松田と、家族を置いて先に逝ってしまう山本のそれぞれの絶望を描いていたのも良かった。

この映画で気になったのは、軍曹役の人の演技が「ん?」って感じたのと、歌うシーンが多くてちょっとクドかったのと、セリフが若干クサく感じたこと。
軍曹が兵士に命令を出す時に「急げー!」っていうところは大根すぎて正直笑いそうになった。
歌も2、3回くらいならまだ良かったけど、5回以上歌ってた気がする。
セリフに関しては役者さんの熱演も相まって、実話を元にしている自然な感じじゃなく、ドラマと感じてしまう部分がちょこちょこあった。
後藤の死後の会話や、ダモイ途中の列車での会話や、10年以上経っているのにまだ「一等兵」と呼び続ける相沢あたりは特にクサく感じた。

構成がかなり綺麗で人気の理由も頷ける。
しんちゃんが文字を教えて貰って、「覚えた文字は頭の中から消えない」と山本に言われた事が遺書の暗記に繋がったり、母親を亡くした松田が母への遺書を読んだり、妻子を亡くした相沢がモジミへの遺書を読んだり、結婚を切り出したのが結局どっちか分からなかったのも回収したり、冒頭が最後のシーンと繋がったりと、終盤にどんどん伏線を回収していくのが気持ち良かった。

何回も泣いちゃったし、松田の母親が亡くなっていたところや、山本に遺書を書いてもらうところや、クロが生きていて船まで走ってくるところや、松田が山本の母親に向けて遺書を読むところは特に泣いた。
松田の遺書は泣き過ぎて声を抑えるのに必死だった笑
松田が母親への遺書を読むだけでも涙が溢れて来たのに、松田の母親も回想で出るのは流石に号泣する。

同じ戦争映画では「ライフ・イズ・ビューティフル」や「この世界の片隅に」あたりが好きだから、戦時中での家族愛をテーマにした作品に弱いのかもしれない。
映画館だと周りの食べたり話したりの雑音が気になるから、好きな作品、かなり気になってる作品、誘われた時じゃない限りは配信やレンタルまで待つことが多いけど、公開中に観て良かったと思える作品だった。
冒頭で既に鼻水がズルズルになって泣いてる人がいたけど、確かに2回目だったら泣くのも納得が行く。
椎蕈

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