麻生将史

デューン 砂の惑星PART2の麻生将史のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.9
3時間退屈した時間は全くなかった。
二重に欠けた太陽(月?)、定番の別惑星描写だが好き。
が、珍しいかもだけどPart.1の方が好きかもしれないな…

いや、全然好きなシーンもあるのだが、DUNEの世界に慣れてきた分、もっとセンス・オブ・ワンダーを浴びたかったというのが本音かな。

とはいえ良かったシーンは、ポールとチャニがあの特徴的な砂歩きによってシンクロして、それが“まるでダンス”みたいに見えるシーン。
“まるでダンス”て部分が大事で、普通のダンスで通じ合っていくのは見慣れているけど、SF世界の設定上図らずも(いや図ってんだけどね)そう見える、てのが良い。二人の心が通じ合っていく様子のこの見せ方が好きだった。
現実とは異なる世界の、特異な風習が、そこでしか描けないSF的ワンダーを生み出す。壮大なシーンは数あれど一番SFを感じたのはこのシーンだった。

それから冒頭の、ハルコンネンの兵が砂虫が来たのを察知して「急いで高いところへ登れ!」と言って、反重力装置(?)かなんかでフワーと岩に登るシーン。
遠大な宇宙叙事詩として好きな本作だけど、後半に行くに従って叙事詩感が強くなっていく。「ギリシャ叙事詩実写化したのかな」て気持ちになりそうなところでこういう「ああ!そうだ“宇宙”だった!」となる違和の描写が好きだ。

それからあとはフェイド=ラウサの白黒シーンかな。ラウサの目口真っ黒笑顔とか、油みたいな汚ねえ花火が印象的だった。

と、好きなところもあるのだが全体としては「なるほどね…」と思っちゃった。
というのも話が割とわかりやすいという事が僕の不満(てほどでもないけどまあ)だった。
展開されるレジスタンスや復讐劇や預言者誕生譚は、言ってしまえばマクガフィンであって、その叙事詩の中に演出される宇宙的違和こそが味になってほしかった。
中でも最も「あ、そう…」となったのは核弾頭の場面だ。原作でもそうなのかも知んないけど、ちょっと“現実”すぎる。
別に核のメタファーでもいいけど、ゴジラの熱線とか超大型巨人とか、そこに何かSF的味付けをしてくれ…と思ったかな。せっかくDUNEが舞台なのにもったいない…。

死者の水を来たるべき楽園のため井戸に返す場面とか、砂虫の幼虫が水に弱い事とか、その幼虫からスパイスの原液的なのが採れたりとか、そういった描写の方が好きだった。

あとテーマ的には『ボーはおそれている』にも近いというか、「母の元へ向かえば災いが起こる」「外側の何かにコントロールされている」的なのは共通点だなと思った。

宇宙叙事詩として本作に期待している自分としては、その分からなさこそを求めていて、翻ってパート1の方ではその訳わからなさが気に入ったんだな、と思い至った。
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