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カッコーの巣の上でのEyesworthのレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
5.0
【自由への眼差し】

ミロス・フォアマン監督がケン・キージーのベストセラー小説をジャック・ニコルソン主演で映画化した1975年の作品。

〈あらすじ〉
ジャック・ニコルソン演じるマクマーフィという男が刑務所での強制労働から逃れるためにわざと狂人の振りをして精神病院(=カッコーの巣)に送られてきた。彼はそこでのラチェッド看護婦長が主導する絶対権力で規則正しいロボットのような生活に嫌気がさし、薬を拒んだり、テレビでワールドシリーズを見ようと言い出したり、勝手に患者を連れ出して魚釣りに出かけたり精神病院の空気を乱すような傍若無人な行為を多々繰り返す。しかし、彼のおかげで周りの患者も人としての本来性を取り戻していく。そんなマクマーフィを中心とする輪はこの精神病院には収まらないほどに大きく拡張し、やがてクリスマスのある事件に発展していく…。

〈所感〉
精神病院をシリアスかつファニーに描いた本作で、ジャック・ニコルソンの同じく代表作『シャイニング』のような憎らしく気持ちの良い演技が素晴らしかった。いくら精神病院と言えど、好きなものは好きだと言っていいし、嫌いなものは嫌いでしょうがないし、ましてや行動は他人に強制されるべきではない。マクマーフィは最終的に出る杭としてロボトミー手術を施され、廃人と化したが、彼の行動は度を越してはいたものの至って人間的もので、少なくとも精神疾患に当たるようなものではないだろう。
この作品のもう1人の主人公は同じく比喩的にカッコーの托卵された卵であるチーフという大男なのかも。マクマーフィから託された想いを背負って外へと飛び出していく姿に感動を覚えた。
キューブリックファンとしては、マクマーフィを『時計じかけのオレンジ』のルドヴィコ療法を施され廃人にされたアレックスと重ねて見てしまう。暴力性や異常性欲も人間性の一部であり、それを否定することは人間性の否定に繋がる。他人に迷惑をかけず正しく慎ましく生きることは何よりも望ましいだろうが、欲求に素直に権力に屈せず死ぬまで反抗した彼らはやはり映画の中の永遠のヒーローだと思う。ロボトミー手術もルドヴィコ療法もクソ喰らえだ。
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