このレビューはネタバレを含みます
特筆すべきはやっぱり、マクマーフィとチーフの関係性であると思う。
二人のやりとりは他とは違う何か特別なもののようで、他のシーンよりやや異質な空気を放っている。
多くを制限された環境において、心を通わせ合える人間はごくごく限られている。
対比のような二人だけれど、ガムのフルーツの味を共有できる数限られた相手であり、そしてあの友情溢れるラストに繋がってくる。
あの時みんなで脱走していたならばパッピーエンドだったのに、と思えてならない結末ではあったが、皮肉なことに、マクマーフィを殺したことでチーフの中の友情は、より深まったように思う。
今作は多くの個性的な人物が登場するけれど、意外にも個々の細かい描写は描かれていない。それでも不思議と伝わる一人ひとりの人間が生きているんだなという重み。
逆境を逆手に取って楽天的に生きる。
シリアスとコミカルのバランスが絶妙であって、おじさんばかりなのに、青春モノを観ているような、そんな思い切りの良い清々しさを感じる作品だった。