レインウォッチャー

恋愛の抜けたロマンスのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

恋愛の抜けたロマンス(2021年製作の映画)
3.5
恋愛に疲れた男女が気楽な関係を求めてマッチングアプリで出会う、そつなくキュートで程よくえっち、ピンクのわたあめソーダみたいな食感のラブコメ。

2人のキャラクターや出会いの背景などにイマっぽさはありつつ、基本設計図は王道中の王道といえる。

すなわち、
①起:運命はどこ?
②承:これって運命かも!
③転:運命なんてなかった…
④結:やっぱり運命!
である。
んだけれど、このどのパートにも今作ならではと言える見どころが用意されていて、リズムが途切れず良かった。

中でもわたしが推しておきたいのは②の承パートで、ワンナイトのつもりだった2人が会うのをやめられなくなっていくハッピータイム。
セックスが第一にある2人らしくラブホをくるくると渡り歩くように場面が進んで行くのだけれど、まったくイヤらしくも後ろめたくもなくて、どの部屋もテーマパークみたいに楽しい。良い意味でアホみたいに軽薄なビッグバンドスウィングがかかり、幸福感が加速していく。

また、それと並行するようにウリ(ソン・ソック)の書くラブコラムも絶好調になっていくのがポイント。
彼は2人の関係をこっそりコラムのネタにしているわけだけれど、コラムがヒットしたのはジャヨン(チョン・ジョンソ)の名言製造機とも呼ぶべき個性的なキャラクターと、それをピックアップするウリの文才が化学反応を起こした結果だといえる。当然、コラムを隠していたのは誉められることではないけれど、この時点で体以外の相性も良いじゃん!ってことが証明されているのですね。

そんなこんなで何やかんやがありまして、やがてウリはこんなことをジャヨンに言う。「俺たち、恋愛以外は全部やったろ」。
身の上話、食事、セックス、デートにちょっとした冒険、それにケンカ。確かに彼らはイベントをこなしていて、じゃあ恋愛って何なんだろう?なんて意外と真剣に考えてしまう。

まあわたしの貧しい履歴書では結論付けるなんてとてもできない話なのだけれど、気軽に会えるようになったり性のバリエーションもややこしくなってる今だからこそ、「ぼくたちの恋愛をしよう」って宣言してみるのが意外と大事だったりして…とか、2人のひょっこりした背中から思ったのであった。

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『バーニング』から始まり、『ザ・コール』『バレリーナ』『モナ・リザ・アンド・ザ・ブラッドムーン』の流れでホレた身からすれば、いつ男の首を両断するのか気が気ではないチョン・ジョンソ。

幸い今作ではそんなことにはならず、「かわいい」と「えろい」に全振った一面を見せてくれる。それはそれで良いのだけれど、やっぱりマッコリで頬を桃色に染めてるよりも返り血で髪ごと赤黒く染まってるほうが似合うって思うな。恋愛の抜けたロマンス、血糊の抜けたチョン・ジョンソ。