ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 46ページ目

豚小屋(1969年製作の映画)

4.2

耽溺する。豚に弄ばれ屠られ、最期は髪の毛一本、釦一つ残さず骨の髄まで食い尽くされる。力強く秘匿するように忠告する。唇の間に垂直に人差し指を立てるのだ。豚=権力のメタファーだとかはこの際どうでもいい。こ>>続きを読む

ジョン・カーペンターの 要塞警察(1976年製作の映画)

4.0

有無を言わせぬ娘の殺害シーン。戦慄。ヒロインの目が据わっていて素敵。ロマンスの一歩手前。何も語らず何も起こらないのがクール。悪役はそれこそ災害としてしか描かれない。犯人には早々に処罰が下るし。現代西部>>続きを読む

マンディ 地獄のロード・ウォリアー(2018年製作の映画)

4.0

炎の舌先でベロベロと舐めまわされてるような粘着質な映像美。例えば、日中の明るい湖水ですらギラギラして彩度の高い感じ。冒頭から抜けのいい絵がなく、終始血の滴りとともに、森の湿度、埃っぽい靄のかかった薄闇>>続きを読む

鉄砲玉の美学(1973年製作の映画)

3.8

渡瀬恒彦の純粋さ、よく笑い、よく食べ、よくヤる。行き当たりばったりで『Good Time』のロバート・パティンソンの如し。元カノに自慢するために呆気なく殺されてしまう。鉄砲玉にすらならない惨めさ。バス>>続きを読む

赤線玉の井 ぬけられます(1974年製作の映画)

3.8

タイムリミットが迫る赤線地帯の悲喜交々。ヒロポンを踏み潰し、記録を更新し、奔放である女たち。淡々と描かれる終わりの時。

グリード(1924年製作の映画)

4.5

16mmで完全なる伴奏なしのサイレント上映という苦行。夫婦-友達間での骨肉の争い。厄ネタは宝クジを勧めた歯科助手。『愚かなる妻』で家政婦を演じた類人猿顔の彼女だ。モグリの歯科稼業がばれ、すぐさま淪落し>>続きを読む

愚なる妻(1921年製作の映画)

4.0

家政婦への仕打ち。弄んだ罰。火事に見舞われた時に我先にと脱出する卑劣さ。最後の暗い穴への寝間着のまま遺棄シーンは戦慄する。なんと無情なことか。

アルプス颪(1919年製作の映画)

3.8

愛への渇望。心の隙間につけ込んでたぶらかす。あまりの大仰さに思わず笑う。嫉妬心は善人すらも狂わせる。滑落の呆気なさと山麓の美しさ。

そろばんずく(1986年製作の映画)

4.0

完全に狂ってる。バブルの熱量を感じつつ。台詞もカリカチュアされ分断される。宇多丸さんが掟ポルシェの源流が小林薫演ずる「天神」にあると言ってたのはすごく納得。

真夜中のパーティー(1970年製作の映画)

4.5

ほろ苦くて最高。仲間がいて受け入れられているとしても、自分自身を認められない慟哭。全員魅力的。エモリーの斜視から溢れ出る涙が忘れられない。

瘋癲老人日記(1962年製作の映画)

4.0

足蹴とはまさに。若尾文子史上最高の悪女だ。だがファム・ファタールではない。あまりに悪に自覚的だからだ。小津映画の廉価版みたいな情景描写に繋がる濡れ場。性欲と生命力が比例するラスト。唾液を垂らし含ませる>>続きを読む

ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(2016年製作の映画)

4.2

Nina Simon の"Sinner Man"と出前一丁。サム・ニールの頑固な雰囲気が最高。

アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年製作の映画)

3.5

現実逃避をし続けている男が元恋人会う瞬間だけ、素に戻る。それ以外は何に挫折したかもわからず、目的も完全に失っている男として描かれるため逃げていること以外何もわからない。表面上進行している話がノワールな>>続きを読む

ロスト・シティZ 失われた黄金都市(2016年製作の映画)

4.2

冒険譚を期待すると肩透かしだが、嫋やかな空気と映像的豊かさよ。固縮していたものが融解していくような心地よさ。同時に狂気が撹拌されている。電車とこぼれ落ちた液体のoverlap。洋館の中の密林と、コンパ>>続きを読む

黙ってピアノを弾いてくれ(2018年製作の映画)

4.2

何の前情報もなく観ました。中南米生まれの人かと思ったらカナダ出身のユダヤ人だった。大起業家の御曹司として生まれ、ドイツに渡り、アバンギャルドな音楽性(所謂クラウトロック寄りのパンク)にラップを取り入れ>>続きを読む

恐怖の報酬(1953年製作の映画)

4.2

恐怖の伝播が人を狂わせる。前半と後半で登場人物達の印象が覆される。金と恐怖を天秤にかけて人生を棒に振る。マリオの執念は狂気、兄貴分のジョーに対する罵倒と仕打ちに震えつつ、ルイージとビンバのユーモアに溢>>続きを読む

ザ・プレデター(2018年製作の映画)

4.2

プレデターとの攻防もさる事ながら、アウトロー部隊のふざけ過ぎなノリと確かな信頼関係に胸熱だった。ブラック・ジョークに乗れるか乗れないかで、だいぶ評価が分かれると思う。五人の仲間達のじゃれあいが何よりも>>続きを読む

オルフェ(1950年製作の映画)

4.0

生と死の狭間を淡々と行き交う人々。死と生の世界は大して差異がない。部屋のギザギザした床の模様は後にツンピークスの赤い部屋(ブラック・ロッジ)に連なる。逆再生を生かした演出に震える。愛のために掟を破って>>続きを読む

殺人者にスポットライト(1961年製作の映画)

4.0

不思議な叙情感のある映像。スポットライトに間近で当たるだけで死んだりする世界。城をテーマパーク化して大衆の面前で反復される忌まわしい伝説。倦怠とエゴに塗れた登場人物たちの振る舞いはどこか滑稽。窓辺から>>続きを読む

笑う男(1928年製作の映画)

4.0

ジョーカーのモデルともなった映画らしいが実際はあまり関係なくて、貴族と民衆の階級格差による王道のメロドラマであった。
Comprachicosと呼ばれる子供の人身売買描写が恐ろしい。子供に行われる非道
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手遅れの過去(2015年製作の映画)

3.6

なんていうか最期のパートは説明的すぎると思うんだ。それまでは緊張感があって素晴らしかったのに。

それから(1985年製作の映画)

4.2

明治の空気は体現することが難しいが、笠智衆などその時代の空気を知る俳優がいることで安心感がある。高等遊民の実存的な語りはスノブさが鼻に付くが、玉石混交、現代人の始まりとしての日本の原風景かもしれない。>>続きを読む

祈り(1967年製作の映画)

4.0

強烈な陰影で一つ一つの構図が神々しい。くどいまでに繰り返される詩に思わず笑ってしまった。このくどさによる笑いは意図された者なのか。回教徒達の寄る辺なさに震える。もう助からないとだいぶ前からわかっている>>続きを読む

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)

3.8

収まるところに収まっちまう感はある!権威の中でどうあがいても。大島富士子が自由。基本的には富裕層の道楽。満員電車の中競争社会で主張を押し問答する様は狂気。

メーヌ・オセアン(1985年製作の映画)

4.0

セッションの多幸感。オープニングのメーヌ・オセアン号に乗車までのワンカット。

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.5

日本映画でこの映像が撮れるんだという感動。漂うムードが素晴らしい。特に腕をつねられてから窓越しに待つ長回しの高揚感。
佑さんが素晴らしい。空洞なんだけど最後の最後に溢れ出す感情。夏の函館。その空気。原
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希望の樹(1976年製作の映画)

4.2

冒頭は村の良心とされる長老と村のアウトサイダー達が歪ながら交流する様が微笑ましい。誇大妄想的な共産主義者の狂人、豊満で艶やかな女、白塗りの西欧かぶれのいき遅れた年増の乞食女、希望の樹を探しに冬山に出か>>続きを読む

ウインド・リバー(2017年製作の映画)

4.2

精神的に強くなければ人はすぐに良心を捨て去ってしまう。閉ざされた先住民居住区で静かに腐っていく人々。生きていく厳しさとどう戦うか。最果ての地で出会う価値観の切れ味。掘削所での静寂した土地での抜き差しな>>続きを読む

ファントマ(1913年製作の映画)

3.8

緊迫感がカケラもないが幽霊屋敷の黒装束は不気味、からの大爆破。往時を偲ぶ映画体験。

どぶ(1954年製作の映画)

4.0

乙羽信子の涎。好きな人に求められたけれど、拒絶せねばならぬ感情。最後は狼たちの午後。怒涛のウェスタン長屋悲劇。泣きました。

春琴抄 お琴と佐助(1935年製作の映画)

4.0

小村雪岱の舞台美術。確かに俯瞰した屋敷の構図は美しい。針の怪しい煌めきに自傷と愉悦の二律背反。

ガザの美容室(2015年製作の映画)

4.0

うだる暑さの中、閉塞された美容室にいる13人の女。イスラエルとの戦闘は(国内最大の問題だが)後退し、ファタハに所属するマフィア集団と現政権のハマースとの内ゲバに巻き込まれる。戦闘の理由として語られるラ>>続きを読む

映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.5

みんな繊細過ぎて、傷ついては謝ったり天邪鬼な行動ですれ違いの連続なんだがなんとか交流を持つことで責任追及ではなく寛容さに持っていくのが素晴らしかった。なんか凄く回りくどいし、心を閉ざしてる人への顔に×>>続きを読む

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

4.0

松岡茉優のモノローグ。映画は言葉を発してこそ伝わる。小説は一人語りでも物語は進行していくが、映画は止まってしまう。だからこその実在のイマジナリーフレンドの境界が観客に伝わった瞬間、切ない気持ちになる。>>続きを読む

フルスタリョフ、車を!(1998年製作の映画)

3.6

医師団陰謀事件に巻き込まれた医師の拷問シーンがトラウマ。暗闇でおじさんが犯されるシーンは凄惨……鉄の棒。ベリヤを経由してまさかの大物との邂逅。全編おちゃらけているクランスキーの存在感。トム・ハーディを>>続きを読む

レ・ヴァンピール -吸血ギャング団-(1915年製作の映画)

3.5

1-3話目まで。柳下美恵さんの生演奏。メイド姿のMusidoraの美しさが際立っていた。1910年代のパリを屋根伝いに逃亡する絵は素晴らしかった。