Mさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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ブエノスアイレス(1997年製作の映画)

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「怪我が治らなければいいと思った。幸せだったから」切なく純粋で正直な、トニー•レオンの剥き出しの台詞が美しい。地球の裏側、混沌とした南米の街で、気怠い愛に彷徨う二人。鮮やかで独特な色彩と、沈んでしまい>>続きを読む

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

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鬱々とした閉塞感が漂う30代のニートと主婦。あらゆるジャンル映画の展開を仄めかしながら、一つ一つを解体していくように何も起こらず、ひたすらすぐ側で延長される退屈な人生を漂流する。内に秘めた燃えたぎる葛>>続きを読む

SKIN/スキン(2019年製作の映画)

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素顔や弱さを隠すように身体中に刻む無数の黒。迷いや思考に蓋をするように酒を浴びて、憎しみや暴力に身を任せる。一時的にしか効力を得ず、計り知れない後悔に襲われると分かっているのに。そんな嫌気が差すような>>続きを読む

春のソナタ(1989年製作の映画)

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認められない目鼻の騒めきと、庭の河津桜の色づき、ミモザの黄色、殊に夜間の行動時間の増加が、季節の移ろいを知らせている。何かの終わりと始まり。あらゆる動悸と戸惑い。この時期特有の不安定な心体と人間関係、>>続きを読む

シンプルメン(1992年製作の映画)

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兄弟の父親を探す逃避行。バイク、フランス語、恋愛、嘘、皆が何かに裏切られ、破れているような独特な空気感がたまらなく好き。少ない登場人物の個性が際立っていて、奔放で愛おしく少しダサい90年代のダンスシー>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

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変化によって齎される哀しみと、不変が故に残る哀しみ。いつ何処ですれ違ったのか解せないままに、長い時間を経て波長がズレてしまった二人。関係を繋ぎ止めているかの様に寄り添うルーシーの癒し。研ぎ澄まされたY>>続きを読む

ポルトガル、夏の終わり(2019年製作の映画)

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晩夏の夕焼と眼下に広がる海。奇跡の到来に淡い期待を持っているのか、安らいを得て覚悟ができているのか、死期の迫った人間のどちらにも振り切れない心情を、美しく豊かなシントラの景色と、風が少し肌寒く感じる終>>続きを読む

ゴッドファーザーPART III(1990年製作の映画)

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何よりも家族を第一に考え、冷酷にも、非情にも、ファミリーのため人生を賭してきたマイケルだが老境に差し掛かり、これまでに犯した罪の罪悪感に苛まれる。残酷なまでに美しい懺悔と強烈な悲劇のエンディングに、打>>続きを読む

ゴッドファーザーPART II(1974年製作の映画)

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家族の長、ファミリーの父親として文字通りの姿が垣間見えた先代ヴィトーと、組織の維持と繁栄に伴う危機に直面する当代マイケル。家族を守るための行動が、家族を崩壊させてしまうという耐え難い悲劇の中で、苦悩や>>続きを読む

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)

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眩ゆい日差しと乾いた空気、艶やかに熟したトマトが実る庭園にて描かれるヴィトーの最期は、彼が束の間、幼少期に故郷で過ごしたであろう美しい景色と風土を思わせる。臨終の時に淀みなく穏やかで、安らいのある姿は>>続きを読む

ピアニスト(2001年製作の映画)

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歪んだ愛情と憎悪、母への憎しみを持ってのみ、君を愛する。共依存に依って育まれた性倒錯者の病んだ精神と完全なる破滅。あまりに痛々しく、目を覆いたくなるような描写。それなのに、人間の心の機微に触れる演技と>>続きを読む

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

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強盗の終わりと俳優の終わり。ロバートレッドフォードの末期の眼に映る景色が美しく穏やかなものだと、まるで観る者に訴えかけているような、自然体で力の抜けた姿に心が安らぐ。老練な彼のスマートさ、何か独特な余>>続きを読む

アナザーラウンド(2020年製作の映画)

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「最初は君が酒を飲む。それから酒が酒を飲む。最後に酒が君を飲む。」挫折の権威として有名な作家の言葉が頭を過る。冴えないネルシャツ姿も、スーツで舞う姿も、マッツの美しさが際立つ。乾杯も嗜む程度に、献杯に>>続きを読む

パリに見出されたピアニスト(2018年製作の映画)

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Choose lifeとでも言い出しそうな疾走感のある軽やかなオープニングに少しだけ戸惑う。良くも悪くも王道で、滑らかに展開する映画だった。鍵盤に触れられる安堵と指が踊る幸福。いつか、冷たくくたびれて>>続きを読む

夢の涯てまでも ディレクターズカット 4K レストア版(1994年製作の映画)

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拭いきれない世紀末の不安や終末観に怯えることなく、核爆発による今にも起こりそうな破滅にもお構いなく。型破りなラブストーリーを繰り広げる前半の旅路部分が好きだった。5時間弱の世界旅行は、観る者を、夢の涯>>続きを読む

ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

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マスク越しに伝わってしまいそうなアルコールの残り香と、朝日の眩しさ、適度な疲労感と空腹は少々。昨晩の幻のような時間から覚めて現実に戻る。そんな機会が増える季節に、ふとジザメリとロキシーを聴きながら恋し>>続きを読む

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)

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切なくて、もどかしくて、でも少しだけ希望が見え隠れするようなタイトルと、サリーのカラフルな色彩に見惚れて。色濃く残る未亡人としての因習に縛られながらも、決して希望を捨てないラトナの健気でひたむきな姿。>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

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ありふれたキャッチの数々と、異例のロングランに、観る前から少し違和感を感じていたのは事実で、David Byrneの万人受けするようなライブが正直想像出来なかった。「扱うテーマの根深さゆえ、シンプルに>>続きを読む

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

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ソンドハイム、ミック、ヴァージル、この旬日の短い間に、カルチャーの人間が立て続けに亡くなってしまった。年の瀬が近い。澄んだ青空と17時の暗さ、空気に含まれた寂しさを肌で感じる。Rentが観たくなる季節>>続きを読む

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

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息を呑むほどに圧巻、あるいは、息が詰まるほどに郷愁。使い古された言葉で語彙力を失うほどに、ライヴ•エイドの再現に魅了された。座席でじっと静かに観ているのがもどかしくなった記憶を呼び起こして。2018年>>続きを読む

ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

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この映画を初めて観て、心を打たれた多くの人と同じかそれ以上に、最後の最後まで至福の時間を味わえた。ラストのキスシーンで郷愁に溺れるトトを横目に、「愛」が時代遅れの言葉になってしまった瞬間を思い出してい>>続きを読む

ボクたちはみんな大人になれなかった(2021年製作の映画)

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どうなってるか気になって、ふと記憶の中の、あの場所を訪ねる。ある人は変わらずにいて、ある人はもういない。そんな感傷に浸る夜の帰り道。コロナが少し落ち着いた今、同じようなひと時を噛み締めてる人が多くいる>>続きを読む

オータム・イン・ニューヨーク(2000年製作の映画)

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外は冷たい雨で、流行の副反応に体も心も思い通りにいかない。これからほぼ確実に起こる心体の異変に不安ともどかしさを感じながら、途方もない時間を少しでもやり過ごそうと、晩秋のニューヨーク、セントラルパーク>>続きを読む

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)

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初めて観たのはいつだったか思い出せなくても、終演後のフロアで、風に靡くように体を揺らす浮遊感のあるペニーのダンスシーンは今でも変わらず素敵。懐かしい気持ちでもう一度。あの頃、Tiny Dancerを狂>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

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殺風景で荒涼とした景色に白く点在するRV群。コミュニティに属しながらも、そこに留まりはしない。握手があり、いくつものハグ、そして銘々、季節労働の旅を続ける。まるで心の都会を取り囲んでいる広大な荒野の存>>続きを読む

さよなら、退屈なレオニー(2018年製作の映画)

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退屈であることの自由と窮屈さの中で、過ぎる夏と漠然とした未来の戸惑いにどこか浮ついた空気が漂う。母親の温かみも、将来の重みも、あらゆる事に苛ついた刺々しいあの頃の記憶もいつかきっと恋しくなる。レオニー>>続きを読む

天使の涙(1995年製作の映画)

4.6

幾つもの出逢いとすれ違いを経た先に、ネオンの熱気と雑踏をくぐり抜けて。明け方の白んだ空に冷めた風を受けながらも、一瞬の暖かさに夜明けを惜しんで。ミッシェル•リーは魅力が溢れてるし、パインと煙草はいつだ>>続きを読む

アランフエスの麗しき日々(2016年製作の映画)

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夏の日盛りを浴びたテラスと男女の会話。葉擦れの緑、そして青空に解き放たれたようなルー•リードの歌声。満ち足りた夏の終わりというものは存在しない。サングリアに溺れる羽虫を眺めるように、今年の「完璧な日」>>続きを読む

リアリティ・バイツ(1994年製作の映画)

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ナックの曲で踊り出す仲間達との時間は何より素敵で、社会に放り出され、現実の厳しさに浮き足立っている感覚も、忘れてしまうにはあまりに惜しい。23歳までの時間は思っていたよりも短くて、今年もまた一つ季節が>>続きを読む

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

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大人の話している事を、実は子供はよく聴いている。それがどんなに些細なことであろうと、子供は大人が思う以上に重く受け止めていることがある。そんな幼い頃に味わった確かな記憶を、異国の村の景色とジグザグ道に>>続きを読む

ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

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その瞬間に肉薄するにつれ、レプリカントには確かに「死」というホワイトノイズが聴こえている。4年という限られた寿命の中で、写真や記憶に生きた証を求め抗うロイの最期。「人はいつか死ななければならないことを>>続きを読む

恋する惑星(1994年製作の映画)

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この夏のフレッシュな熱気とスピーカーの振動を、夏の夢とフェイ•ウォンの涼しげな歌声にのせて。90年代のお伽話は色褪せることなく、今日も恋する惑星を飛行機が飛び交っている。

ワン・デイ 23年のラブストーリー(2011年製作の映画)

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予告もエンディングも使われている曲がとても好み。エマとデクスターの7月15日のように、人生の痛みも輝きも内包した一日を、これから生きていく中でたくさん過ごせたら。ロンドンで目を覚まして、携帯に知らない>>続きを読む

風が吹くまま(1999年製作の映画)

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溢れる生の営み、墓穴から舞う砂埃のように漂う死の匂い。「死を待つ」という特異で、形容し難い時間を過ごしながら、自分の仕事に疑念を抱き葛藤する。風に靡く黄金色の景色は、主人公の心を次第に豊かな色彩で満た>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

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桜桃の味とは、出来たてのオムレツだったかもしれないし、熟れた桑の実だったかもしれない。些細なことだって構わない。辺り一面を染める夕焼。砂埃舞う荒野に佇む色鮮やかな木々。終盤になるにつれ見える景色は広が>>続きを読む