中庭さんの映画レビュー・感想・評価 - 35ページ目

中庭

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黄色いリボン(1949年製作の映画)

4.5

何十もの馬の蹄が立てる真っ白な砂煙が何度もスクリーンを覆い、その合間から飛び出す何本もの硝煙の行く末に目を奪われる。こういった状況だと、目に見えやすいはずの武器、弓矢の方がかえって視覚的な運動性を失う>>続きを読む

許されざる者(1992年製作の映画)

4.5

仲間を撃たれたカウボーイが、狙撃者に死に際の水を飲ませるよう指示され、本当に撃たないだろうなと散々確認をとりながら瀕死の仲間の元へ向かう。
いかにも人殺しの経験などなさそうなキッドが意を決して開いた一
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ダイヤルMを廻せ!(1954年製作の映画)

3.4

冒頭35分ほどの犯罪計画の綿密なシミュレーション。
動線の確認や光の範囲を、現場の空間全体を俯瞰する高めのアングルから、まるで舞台演出のように観客へ説明していく。
インターミッションまでのほとんどのシ
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幌馬車(1950年製作の映画)

3.3

岩と砂を切り崩して回る幌馬車の車輪を限りなく低いアングルでとらえたショットの力強さや、興奮して馬車の周りを駆け回る犬の奔放な動き、踊る人々の足元で暴れる木版など、ただそこにあった純然たる運動の生々しさ>>続きを読む

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年製作の映画)

1.9

このレビューはネタバレを含みます

ありえた可能性の未来の中に、東京に到着してからはしゃぐ二人の姿が映るのが最も印象的だった。
親の干渉下にあった幼い二人が逃避行を企てる物語のほとんどが、その破綻を契機に主題を前傾化させるよう作られるの
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たのしい知識(1969年製作の映画)

3.0

女が画面外で語り、それに耳を傾ける右向きの男の彫像のような姿をとらてたフィックスショットのまどろむような交歓をつんざく、第三者の男の野次にもとれるオフボイスと街の風景ショットのインサートがスタジオ内の>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

3.3

振り返らない助手席の女の後頭部と、十回以上切り替わる車窓の魅惑に満ちたジャンプショット。
窓枠の配置が素朴なマルチスクリーンを生み出すフィックスショット。
何本もフレームの外もしくは窓の外に投げ捨てら
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ユーズド・カー(1980年製作の映画)

3.6

ゼメキス印の痛快な「お下品」が炸裂。こぼれ出るオッパイの形とハリ、どの作品見ても同じだ(『フライト』の冒頭を思い出して)。あっぱれ。踊る尻の上に契約書を敷いてサインをさせるくだりなんてよく思い付くなと>>続きを読む

ポーラー・エクスプレス(2004年製作の映画)

2.6

屋根の上に住む亡霊の男が、トンネルの上部に叩きつけられて霧散し、手に持っていたカップが地面に落ちてからからと静かに転がるショットは、トラウマ級のショック描写だった。
視野が限定的なものとなるはずの夜の
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フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.4

ベトナム戦争のシーン。
雨が突然上がり、一瞬の静寂とともに今にも空が晴れ渡る、という安息の演出を切り裂いて銃声が鳴り響き、画面の最も前景を歩いていた黒人兵士を弾丸が貫くという急転直下のくだりが素晴らし
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ロジャー・ラビット(1988年製作の映画)

4.3

トゥーンキャラクターが画面上から消えても遜色のないしっかりとした画作りが骨子にあり、見応えがある。その分、目は全く全体に行き届かないほど忙しい。
ハイブリッドな映像世界を丹念に描写し続けた最後は、人間
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緋牡丹博徒 花札勝負(1969年製作の映画)

3.5

橋桁の下に、機関車の吐き出す白煙が舞い降りて、画面の奥行きと画面外への意識を増幅させる。
藤純子と高倉健が互いを気遣い合う美しい会話の後景にそれが現れ、参った!と嘆息するほどに好きなシーン。
イマジナ
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Disney's クリスマス・キャロル(2009年製作の映画)

2.8

自分の名前らしきものが刻まれた墓石の根もとに引きずり込まれるなんて、3Dアニメでここまでのホラー演出もそうそう見ない。
死や没落を連想する生理的なイメージのオンパレードと、改心した後のスクルージ役のジ
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フライト(2012年製作の映画)

3.5

酒瓶の詰め込まれた冷蔵庫のある部屋へ至る扉の鍵が開いていたのはなぜか。部屋に入ったとき、開いていた窓の外に吹く風を感じたデンゼル・ワシントンは何かを悟ったのか。
全ては神の思召し、と言いたくなるような
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永遠に美しく…(1992年製作の映画)

3.9

映画は、本物の雷を劇的に撮ることが出来ない。ゼメキスの作品において、決定的な瞬間に稲妻が現れるとき、このことを再度思い知らされて、とても嬉しくなる。
不吉な影のシルエットや数々の映像トリック、階段を転
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散歩する侵略者(2017年製作の映画)

4.0

カメラのレンズに強い光を当てて発生するスミア現象が、宇宙人の到来を表現するために効果的な用いられ方をしている。あの白飛びが画面に入り込むだけで、私たちは宇宙人のイメージを連想してしまう(光源が画面内に>>続きを読む

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)

4.3

屠殺された水牛の傷の滑らかな断面。
海面への爆撃をすんでの所で回避するサーファー。
ヘリの扇風で怪しく飛散する七色の発煙。
指揮官のいない最前線の米兵が聴くロックミュージック。

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)

3.1

劇場外の『カイロの紫のバラ』の看板が外れ、理由を語らずに逃げ去ったジェフ・ダニエルズの飛行機の中での真意の読めない表情が印象的。
壁際で子供のように遊戯を続ける旦那たちの不動っぷりは明らかにジルが抜け
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新感染 ファイナル・エクスプレス(2016年製作の映画)

1.6

このレビューはネタバレを含みます

内さまの小林Dにソックリの旦那が、素手一択の戦法でゾンビ多勢を相手に無敵の大☆奮☆闘(感染後に姿を現さない数少ないうちの一人)
どの車両に感染者が詰まっていて、どこから乗れば安全か、などの空間把握が少
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イージー★ライダー(1969年製作の映画)

1.7

LSDでトリップ中の映像のコラージュで、四人がなぜか泣き喚いている(音声は取り除かれている)瞬間が織り交ざるのが良い。
シーンのつなぎ目を、前後シーンの交互の切り貼りにしたのは、悲惨だと思った。
革ジ
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バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年製作の映画)

3.4

一作目では若き母に迫られ、二作目では母が手術によって手に入れた巨乳の谷間を見せつけられる。あんまりだ。
ステージに上がるシーンを筆頭に、一作目の「舞台裏」を見せるといった反復的なプロット。数年越しにあ
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シンドラーのリスト(1993年製作の映画)

3.8

クラクフゲットー閉鎖に至る陰惨極まりない「仕上げ」シーンにおける、あまりにも見事に作られすぎた数々の暴力表象。
ベッドの裏に潜んでいた男に自動小銃が向けられると、カメラはひっくり返されたベッドの表側に
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銀座の恋の物語(1962年製作の映画)

2.4

二人の住むアパートと紡績会社の位置どり(屋上の高さや窓の向き)、ブティックのヒエラルキー的構造、ステージと客席の高低差、タイムカードを切る場所と出口の近さ(『工場の出口』そっくり)など、しばしば空間設>>続きを読む

13日の金曜日PART3(1982年製作の映画)

1.8

一時間ほどユルい3D効果の映像表現が続くが、殺戮の華々しいスタートを切るのが、モリが観客の目を目がけて飛んでくるって殺し方なのは興味深い。当時のリアクションが気になる。
シャワーで殺されない→向こう側
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1941(1979年製作の映画)

3.9

スピルバーグの映画で唯一、女の裸が下ネタの的な笑いのために使われる。戦闘機とセックスを重ね合わせた隠語遊びは、笑えなさと下品さが最高潮に達するアイディア。
日本の潜水艦が沈む際にハッチが開いたままで、
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タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密(2011年製作の映画)

3.0

・オープニングの2Dアニメーション、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の進化形。そのまま実写に移行してくれりゃいいのに、と思ってしまったが、もちろんなめらかに3Dの画面へ変貌。
・冒頭の鏡の乱反射
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刑事コロンボ 死者の身代金(1971年製作の映画)

2.5

別巻、「構想の死角」を鑑賞。
冒頭のオフィス内での異様な照明に気を取られる。被害者の生んだ架空の女性探偵の肖像画が事件を冷酷に見つめる(場面転換に用いられる)。コロンボが犯人を追い詰める別荘内で壁の上
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ペギー・スーの結婚(1986年製作の映画)

4.0

男たちを物語上容赦なく千切っては捨て、感情の赴くままに画面からも躊躇なく排除させる。画面構成と逐一密接な共犯関係を交わしつつ、終幕まで疾走するペギー・スー。これほど後ろを振り向かない、女性性が主体とな>>続きを読む

太陽の帝国(1987年製作の映画)

4.2

夕陽に飛び立つゼロ戦が切り返しもなく撃墜されるあっけなさに身が竦む。下人の強烈すぎる張り手や、ジョン・マルコヴィッチの禿頭の登場の仕方、空襲を見下ろし高揚し切るクリスチャン・ベールの悲壮さなど胸に刻ま>>続きを読む

エルム街の悪夢(1984年製作の映画)

2.6

逆光のシルエットのフレディの腕が伸びて見えるところ、フレディ自身が切り裂いた肌の下をうじ虫が埋め尽くしているところなど、ありえないを軽々と超えた出血量など、実体のない悪夢の理不尽さを追求した演出は鋭く>>続きを読む

ゴースト・イン・ザ・シェル(2017年製作の映画)

1.6

このレビューはネタバレを含みます

“BEAT” TAKESHI KITANOがいつものごとくぎこちなさげに暴れ始めたところで、ようやく画面上で生身の身体性が発揮され、映し出され、濡れた道路に反映するネオンの有機的な輝きなどに目が奪われ>>続きを読む

トワイライトゾーン/超次元の体験(1983年製作の映画)

4.2

「真夜中の遊戯」
老人が子供に戻るのを、ホームの外から聞こえる声が幼さを取り戻していくという表現を用いて演出があった。
はじめ、夕陽に染まる談話室で幼き日々の感性の瑞々しさについて語り合う姿など、胡散
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トップガン(1986年製作の映画)

2.3

空中戦における目まぐるしいショットの切り返しにおいても、機体や操縦士の位置把握が苦にならず、トニー・スコットの編集技術の巧みさが既に開眼していることが頷ける一本。
海に落ちたパラシュートの緑や、機体の
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マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)

4.4

横滑りする車を飛び移ってきた先に軟体生物のようなヨガの女たちがいたり、目玉が転がり落ちたり、アガサに着せる服をその場にいた女にこっそりあてがったり、やけに笑える場面が挿し挟まれる。
様々な形で視覚的記
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ある日どこかで(1980年製作の映画)

2.0

クリストファー・リーヴが後景で延々とついてくるショットが印象的。前景で会話するヒロインとお目付役のあとを、ピントをぼかされた輪郭の男が尾け続ける。
絶食を続けた主人公のひと目では死体かどうか分からない
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リンカーン(2012年製作の映画)

4.0

リンカーンの遺体とろうそくの火の揺らめきが重なり、その炎にどこか知らない場所で人類に対し普遍的な意義を持つ演説を繰り広げるリンカーンが重ね合わされるとき、言葉は物語の時空間を剥ぎ取られ、あらゆる時代の>>続きを読む