斜陽に染まる、時間概念の著しく乱された虚ろな空間が続く前半と、暗いブルーと僅かな自然光を見事に組み合わせた後半の若々しい照明へ変貌してゆく映像の詩的な設計が凄まじい。薔薇の出現の処理のあっけなさに狐に>>続きを読む
チャップリンが唯一殺人を思いとどまるシークエンスの、テーブルの上や入口付近の棚上を巧みに移ろうぶどう酒の入ったグラスの空間的な操作が、サスペンスと笑いを同時に視覚的に演出し、映画の普遍的なヒューマニズ>>続きを読む
『パンズ・ラビリンス』、『クリムゾン・ピーク』に引き続き、また頬に致命的な穴を穿たれる人物が登場する。
研究所の床に飛び散った血を洗い流すためにバケツの水を撒いた途端、壁際の機材の背後から指が二本転が>>続きを読む
役者の顔の匿名性と、歴史的に更新され続けるアメリカの「英雄」像という特殊かつ複雑なイメージの関係について自覚的な問いを立てる企みは、『父親たちの星条旗』の時代から半世紀を経た時空間を設定し、ここで新た>>続きを読む
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法廷劇が終わったものの、全く別の軸で進んだ恋人とのメロドラマの悲劇的な着地(殺人の罪を自ら被り青年の前途をたたえる)がそれほど困難もなく乗り越えられていることなど含め、勝利の余韻を満喫する解放感が薄切>>続きを読む
ペンキのような透明度の低い血糊の飛び散った女のうなじ。警らの強姦を彷彿とさせる暴力的な腕力の発揮の延々の繰り返し。袖口のクロースアップと切り替し直前の血糊の垂れ方。小さな滝の落水点手前で肘をつきキャメ>>続きを読む
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幼い妹が隠し金の在り処を吐かせるために兄妹の部屋から連れ出されるとき、椅子の上に座る物言わぬ人形をとらえたショットが瞬間的にインサートされ、死を連想させる不穏な予感が一気に画面を暗く侵食する。
ベッド>>続きを読む
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主人公の青年があわや殺されるかというすんでのところで照明が落ち、揺れる電源ボタン(エレベーターの可動スイッチ)に吸い込まれるように近付いた犯人が、だまし討ちを受け、情けない叫び声を上げて空のエレベータ>>続きを読む
性質上、三点の定位置から等距離に据え置きの、絶対に微動だにしない立て看板という装置を前から見るか後ろから見るか、どんな速度で目にするか、進行方向と看板を見る順序が変わるだけで全く別の物語が浮上すること>>続きを読む
夜明け前の薄青い暗闇の山腹で絡み合う姉弟の裸と、ランタンに照らされた積雪の滑らかさが錯覚的に重なった瞬間、この作品から通俗的なドラマ性が剥ぎ取られ、画面上の事物全てが等価な存在に置き換わる。終始鳴り続>>続きを読む
即興的に会話を交わしているようにしか見えない人物の挙動が、フィックスのカメラで一つひとつカットを割って劇映画的な順当な示され方をすることもしばしば起こり、見ていて混乱をきたしかねない幻惑的な話法が繰り>>続きを読む
夜になると在りし日の姿を取り戻す廃墟のレストランの中で、一人ひとり行動の速度が違う人物たちが各々の役割に没頭している。女主人らしき人物がテーブルクロスをはためかせたときの布の非現実的な動きや時計職人の>>続きを読む
カウンター席に座り、向かい合わないまま饒舌に語る女と男の背面。真後ろからとらえられたショットの正面奥にはストライプ状に細切れの鏡があり、二人の表情はカメラの位置移動で途切れながらもモンタージュ的に変化>>続きを読む
サングラスをかけた警官が意気揚々と「もったいぶって使い方をお見せします」などと言った後、股間から一メートルはあろうかという棍棒を取り出した瞬間に暗転(その場の電気を消しただけの簡易的な)、隣に座る赤い>>続きを読む
ランブル前にポニーが敵対するチームの女と逢瀬を交わすシークエンスの自然光の美しさにハッとさせられる。ここに至るまで、リアリティを度外視した強風の発生による木々のざわめきや、スクリーンプロセスを併用した>>続きを読む
一枚の写真が仲間内の陰惨な歴史の語り手として最も機能するのは、唯一の生き残りである二人が酒を手に乾杯し、窓の下を見下ろす瞬間にある。写真に写る男たちを一人ずつとらえるカメラは、彼らの死に際をオーバーラ>>続きを読む
アトラクションとしての娯楽映画を作るという意義よりも、スーパースターの過剰さと豪勢なスペースオペラ、ノイズでしかない3Dなどあらゆる制約と戯れながら、いかにしてかけがえのないものを結晶化させられるか、>>続きを読む
小屋の陰で仲間が他愛なく撃ち殺される瞬間がロングショットで提示され、激昂することもなく、動き出す船に乗らず仇をとる決意を淡々と固めた二人がL字型の防波堤をゆっくりと歩き始める。動機はもはやきっかけでし>>続きを読む
國村隼が「用意した」、工作史上最も単純な(と言いたくなる)力学装置を、人質受渡しの「交換」のサスペンス性に重ね合わせ、あげくコマ送りの操作で時間までも捻らせてしまう。コメディを構築する映画的な諸要素が>>続きを読む
全てを終わらせた後の母の内ももが夕日に染みたとき、あまりに若々しく滑らかさをたたえており、もはや色々とそれどころではなくなった。
ベンツのサイドミラー壊しのくだりで、奥から走り寄る二人を待ち構えるカ>>続きを読む
陰毛を金髪に染めながら股ぐらを全開にして椅子に座るカリス・ファン・ハウテンの全身が、鏡越しにほぼ正面に近い構図からありありと映し出される。
インスリンとチョコレートをめぐる攻防戦のあと、悠然とベランダ>>続きを読む
産気づいた母親が担架で分娩室へ運ばれるときに現れるラメ入りの真っ赤なハイヒール、靴紐が片側だけいつも解けているジャックのスニーカー。
スニーカーの底の赤い光は、いつも必ず点滅し続けるわけではなく、電池>>続きを読む
時おり挿し挟まれる現地民の日常を記録したフッテージの扱い方。フィクションとして扱うには他の文脈を持ちすぎている、それ自体の存在が奇跡のような美しい映像の断片が、違和感を拭い去ることなく堂々とシーンの繋>>続きを読む
シークエンスごとの口語の持ち主となる人物たちは、役割を演じつつもショット内の規定位置に到着すると、演技を唐突に中断してカメラ目線となり、視線を外すことなくスピーチを開始する。
このお膳立てのもとに並べ>>続きを読む
のろろ祭の酒席のシークエンスの緊張感はただならぬものがあった。北村一輝が祭列を離れて逆方向へ歩き出すとき、カメラが全身をとらえるような引きのショットを据えているのも見たかった。中村有志がまともな役をつ>>続きを読む
ポール・ブリックマンはこれと『メン・ドント・リーブ』しか撮っておらず、数本の脚本に専念しただけ。
レベッカ・デモーネイが現れ、照明の全てが狂う。ベッド・シーンが始まるときに庭へつながる窓が開け放たれて>>続きを読む
空虚かつビビットなカラーリングが施されたリゾート地において、男女のすれ違いの場は階段の上下運動を介して複雑に構築され、スクリーンの隅に現れる真っ青な海面が視点の座標軸上の消失点をラジカルにぼやかす。階>>続きを読む
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スクリーンいっぱいに俳優の手で撮影された携帯電話の画素数の低い「ホームビデオ」が登場するだけで、目頭が熱くなった。それが圧倒的な物質量を伴って未来の恋人に届けられるという仕掛けがある種のサスペンス性を>>続きを読む
あまりにも狂った劇伴と、透明度の高いモノクロの映像の純粋なモンタージュが呪術的に噛み合った凄まじい一作。いつか劇場で見たい。
これほど極端なエログロの近代史劇ロマネスク・フィルムが他にあるか、というほど容赦なき一本。ここまでやられると“実現したかどうか”、それだけが作家性の問題なのかもという気さえしてくる。
炸裂して跡形もな>>続きを読む
ウィル・ポールターがにやけるときの口許の決まり、口角の上げ方に注目。あれほど嫌悪感を抱かせる口の動きはそう見られない。
ジョン・ボイエガ演ずる警備員の座りが悪く、目撃者としての立ち位置を守るわけでもな>>続きを読む
精神的に別の世界へ突入するとき、ユアン・マクレガー演じるレントンは必ず個室トイレの中で決断を迫られる。ジムの柱に設置された鏡を使った印象的なオープニングや(ビートに合わせてサブリミナル的にイメージ・シ>>続きを読む
敵をねじ伏せる、ヘッドショットのために頭部をねじり出す、一〜二発至近距離から撃ち込み再起不能にする、リロードをてばやく済ませる、次の敵との距離を測る、武器を変える、スニークする。キアヌ・リーブスの見事>>続きを読む
サトゥルナの前後に揺れる生首を見て、『病院坂の首縊りの家』を思い出した。切り口の鮮血と、顔面の血の気のなさが似ている気がする。
最も不条理さを覚えるのは、男たちの諦めの早さと(ふるまいから逐一読み取る>>続きを読む
仲間の逃亡のために、自爆を覚悟で大トカゲの前に立ちはだかった兵士が泣き顔を見せた次の瞬間、大トカゲが知性を働かせて兵士を捕食せず、尻尾の振り切りで対岸へ吹き飛ばして孤独に爆死させる。無残に死ぬ登場人物>>続きを読む
死神と囁かれる少女の顔面をとらえるときにのみ、エモーショナルなクロースアップなどのカメラ・アイが導入される。
各ホテルの客室にある壁紙の滑らかな表面と光沢が美しい。
主要5人以外の人間はほとんど画面か>>続きを読む