中庭さんの映画レビュー・感想・評価 - 38ページ目

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遺体 明日への十日間(2012年製作の映画)

1.6

彼岸を行き交う案内人としての西田敏行の怪演。
「ご遺体」の物質性と時間のイメージに着目し、日本映画が震災「直後」を描くことの困難さに正面から挑んだ力作。

ハードコア(2015年製作の映画)

3.4

柱に身を隠し、敵の位置を視認、グレネードを静かに投げる、再び身を隠す、爆破(画面に死体が吹き飛んでくる!)、標的破壊=クリアー、次へ……
終始楽しく鑑賞。何も許さないラストも。

イカれたロミオに泣き虫ジュリエット(1986年製作の映画)

2.0

部屋を飛び出すロミの背を見送ったカメラが、壁に貼られる二人の写真を映し出すまでのリズムが印象的。

JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ](2012年製作の映画)

3.6

東日本大震災から一年後の3月11日を過ごす中で、人々が何にカメラを向けたのか。
一日の経過に合わせて個々の映像が繋ぎ合わされることである種の連帯を打ち出す効果もあるのだろうが(まるで主人公のような自転
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蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)

4.5

軽トラの荷台に復員兵と子供たちが乗り込んでいるショットで、車が道を曲がった直後、後景に海が広がり、順光が当たるようになって一人ひとりの顔が光り輝く。この光の移ろいはとにかく素晴らしかった。
作品を貫く
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ザ・フォッグ(1980年製作の映画)

1.7

物語上重要な、忌わしい名が刻まれた腐乱の板切れが波打ち際に流れ着く、という始まりに、小学生の頃に見た『学校の怪談4』の記憶が重なった。

【再鑑賞】
濡れた地面にタイヤをとられた車が走り出せないサスペ
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TOWN WORKERS(2014年製作の映画)

1.4

人間の会話におけるありふれたぎこちなさを、リミテッドアニメ特有の残像効果で補完するような試みがあるように感じられた。「あ、はい」「う、うん、いや」のような間は、やや遅れてついてくる動きが作る奇妙なリズ>>続きを読む

ミクロの決死圏(1966年製作の映画)

2.2

クレーンゲームの要領で潜水艇を掴み上げる作業と、無音の演出効果が滑稽で面白い。忘れたようにシネマスコープ特有の演出が時折現れるが、それを最も活かしきっていたのは研究所に入る前の銃撃戦と、生還後のスタッ>>続きを読む

弱虫珍選組(1935年製作の映画)

3.2

戦中ディズニーのあのねりねりとした動きで、芸者や武士がパレードのように踊り歩く。体がバラバラになり戻る際にパーツが入れ替わってしまったり、たんこぶが画面いっぱいに腫れ上がって破裂したり、初期メリエスの>>続きを読む

もらとりあむタマ子(2013年製作の映画)

3.3

食事を摂る前田敦子をおさめるカメラの距離感は、最初から最後まで一切変わることがなかった。写真館に飾られた前田敦子の「アイドルとして足りないグラビア」の再現性の高さ。
店の開店準備を、冒頭との父と同じ構
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ゴルフ夜明け前(1987年製作の映画)

3.0

爆撃を受け荒れ果ててしまったコース上で、幻影のゴルフに興じる近藤勇と沖田総司。「見よ!あの爆弾はOBぜよ」。高橋惠子の何度も繰り返されるお色気演技も最高。

書くことの重さ 作家 佐藤泰志(2013年製作の映画)

1.4

芥川賞選考委員の選考会の模様を、再現VTRでここまでやるかという程にドラマに仕立てて映像化しているシーンが面白い。佐藤泰志の内面に迫る、というスタンスをとった時点でドキュメントは敗北してしまうが、その>>続きを読む

キッドナップ・ブルース(1982年製作の映画)

2.8

鬼太郎のような幽玄さでもって、都市や地方の孤独の間を彷徨するタモリ一義の佇まい。カメラやモンタージュが詩的に揺れすぎなければ、もっとずっと見ていたいと思えたかもしれない。

傷物語Ⅲ 冷血篇(2017年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

異質なものとした合成処理されたあの生首が、キスショットにキスするように食べられるカットで「現実的」な質感に戻っていた時のあまりの気持ち悪さに、思わず目を背けてしまいそうになる。凄惨な鮮血の美学のサーガ>>続きを読む

サブウェイ123 激突(2009年製作の映画)

3.6

立てこもった電車は一時間以上動かない。状況は止まっているようで性急に動めいている。この解放されない閉じたままの緊張感と、空間を上手く把握したカメラワークの鋭さが、単純明快な活劇の良さをこれでもかと引き>>続きを読む

イニシエーション・ラブ(2015年製作の映画)

1.0

海の家で、敦っちゃん、僕らにも電話番号を何秒か見せてくれよ!と地団駄を踏みそうになる。ラスト、全ての謎解きが、かなり明快に執行されてしまう。

オキナワン ドリーム ショー(1975年製作の映画)

5.0

120分程のバージョンを鑑賞。監督最新作の『変魚路』と続けて観れたのが尚良かった。
開始早々、画面手前の赤い服を着た少年の無邪気な歩行に視線を奪われると、右側通行の車がダイナミックに登場する。間髪入れ
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肉弾鬼中隊(1934年製作の映画)

3.6

逆光の中、砂山の向こうへ歩く兵隊の足下を舞う砂煙り。起伏の激しい砂丘の肌に落ちる兵士一人ひとりの影の揺らぎ。錯乱した兵士が画面の前景で突如狙撃され崩れ落ち、視えない敵の銃弾がその周囲の地面にみるみる穴>>続きを読む

キャット・ピープル(1942年製作の映画)

3.0

精神科医の初診で、隅々まで暗黒に満ちたショットの中央に浮かび上がる、照明によって輪郭を丸く削り取られたシモン・シモーヌの顔のパーツ。ペットショップにて、とある理由により雨天の店外から中の様子を窺う彼女>>続きを読む

赤い河(1948年製作の映画)

3.6

夜間の牛たちの暴走を鎮静化させようと奮闘する仲間の一人が、その奔流に巻き込まれ死亡してしまう瞬間の、あの一瞬の表情をとらえた絶望的なショットの無慈悲な短さが忘れられない。
機関車と大量の牛が一本の線路
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変魚路(2016年製作の映画)

4.3

登場人物の極端な「伸縮」に代表される、画面上を縦横無尽に飛行するキャラクターたちの映画的な運動の奔放さ。デジタルで撮影された海原に、焼け焦げたフィルムの質感と、圧縮された主要人物たちという三つ以上の映>>続きを読む

原発切抜帖(1982年製作の映画)

4.0

新聞という扇動装置の修辞技法を巧みに奪い、取捨選択したことをあからさまに呈示することで、愉快で新しいアジテーションのモンタージュの方法が生み出される。とりわけ、ナレーションの声の持つ明朗さとの相性が抜>>続きを読む

暗殺者の家(1934年製作の映画)

3.4

冒頭、画面下方にスクリーンを横切るかたちで立ち並ぶ黒い観衆のど真ん中に、縦に走る真白のコースを小さな黒点と化したスキーヤーが直滑空で直角に落ちてくる一瞬のロング・ショット。軌道上に娘が入ってしまった瞬>>続きを読む

地獄の警備員(1992年製作の映画)

3.8

階段を昇り降りする上下の運動が幾つかの場所で行われ、どちらの方向においても決定的な異界へと誘われてしまう。警備員室の二階、非常階段からの地下階、ラストシーンで主人公がすたすたとのぼり去るあの階段。ヒロ>>続きを読む

土竜の唄 潜入捜査官 REIJI(2014年製作の映画)

1.2

『アウトレイジ』のパロディが突然ど直球でぶち込まれる(歯医者のシーン)。
射精に至らない為に、貫禄のある男の同僚の姿を交互に想像するという漫画的なモンタージュは笑えないものだが、笑えた。

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

脳天をぶち抜かれるチャニング・テイタムの表情の変わらなさが恐ろしい。次のショットでは飛び散った脳の破片だけが画面に登場するようになるのだが、この網膜への刹那的な残像を駆使したのかとさえ思えてしまう残酷>>続きを読む

鬼談百景(2015年製作の映画)

1.8

大畑創の2作品に込められた、「Jホラー」への深い憧憬と疑念のまなざし。室内で、走りこんできた勢いのままに飛びかかってくる女も良いが、線路の走る頭上から直立で降ってくる女をとらえたカメラの位置も素晴らし>>続きを読む

抱きしめたい 真実の物語(2014年製作の映画)

1.5

背景に埋没させられるアイドル俳優の顔、という奇特な視覚の経験を得られる。ホームビデオの映像で延々と流される北川景子の演技を見つめ続けるカメラの視線は、彼女の女優としての面皮を剥がし、向こう側をとらえて>>続きを読む

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年製作の映画)

2.8

物語上重要な軋轢の根本にあるテーマが「とある平民の死」という、アクション映画の身勝手な成立条件そのものを揺るがしかねない、緊張感のある焦点化。
スパイダーマンの糸が、青年の開発したものとして設定されて
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ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)

3.0

夢に見る、犯人の凶弾に倒れるクリント・イーストウッドの哀れな表情に驚く。強烈な死と敗北のイメージを、向かい合う二人(見下ろしー見上げる)のショットのクロス・カッティングで構成。
場面と乖離した音楽の挿
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ライチ☆光クラブ(2016年製作の映画)

1.6

工場から帰路に着く大量の大人たちの行進、校内での光クラブの面々の様子等、外界のイメージの強度がやや低く、狭い箱庭の中という閉塞感はあまり感じられなかった(意図されてはいない?)。内ゲバという時代錯誤か>>続きを読む

世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)

1.1

佐藤健が「選ばされた」諸事物が消える瞬間の映像のエフェクトがあまりに禍々しく作られており、『サイレントヒル』の町が錆びていくあの見事なホラー演出を思い起こすほど。映画全般の、画面中が白く光りトんでいく>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

4.3

ずさんな真空パックを施される遺体の質感が素晴らしい。縮まる四肢、隠れた顔。『リアル』で突如視界の端に現れる無残な死体のあの形而上学的な「実在性」も見事なものだったと記憶している。
野上が死者の家を家宅
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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004年製作の映画)

2.0

シリーズの冠を間借りし、アルフォンソ・キュアロンの作家性がにじみ出る。後景に多くの主要役者が写り込む、狭いながらもダイナミックなシークエンス・ショットや、何度も窓ガラス・鏡ごしに現れるダニエル・ラドク>>続きを読む

ブラック・ムーン(1975年製作の映画)

2.0

いわゆる「アリス」的彼岸と軍事的此岸の相反する表象の相性の良さに気づく。鷲の首が落とされる寸前の、羽ばたきと剣の交差する性急なモンタージュ。

インデペンデンス・デイ:リサージェンス(2016年製作の映画)

1.4

前作のモチーフの執拗なまでの反復と、『2012』より繰り返される極限まで薄められた人間の大量死とそれを俯瞰するロング・ショット(映画にビルから降る死体は写りこまない)。換骨奪胎され暴力的なまでに固定化>>続きを読む