8Niagara8さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

8Niagara8

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ほとぼりメルトサウンズ(2021年製作の映画)

4.4

ノマド的な生き方が我々からすれば非日常的であり、現代で忘れ去られた人間の営為を浮き彫りする。いささかの憧れを抱くが、切り取られているのは綺麗な部分で、言及されていた通り実際のところは難しさもあるのだろ>>続きを読む

この日々が凪いだら(2021年製作の映画)

3.5

否応なしに過ぎていく日常。
その日々に翻弄され、身近な人に寄り添えず、自分が分からなくなる時もある。
理想や幸せと現実のギャップ
その切り取り方はリアリティのあるものだったし、共感できる。
止まって欲
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凪の憂鬱(2022年製作の映画)

4.6

かなり徹底した日常描写。盛り上がりはするけど日常の延長な感じが良い。
凪の愚直さがあってこそ、成立する感じだし、ここ以外の日常は自分たちと同じように辛いことも多いんだろうけど、幸せもあり得る希望的だな
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境界線(1966年製作の映画)

4.1

人間が持つ二面性とか二律背反的なものを戦争を下敷きに。
シャブロルの演出やっぱり好きだな。感覚的なところにめちゃくちゃ魅力を感じる。
それが象徴的なラストシーンの演出はクリティカルで風刺的で、鳥肌もの
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レディ・バード(2017年製作の映画)

3.8

グレタ・ガーウィグの離れ業。

レディ・バードと母を巡る物語とそこから見える女の人生。
セックスや中絶、子供を持つことに対してかなりクリティカルに描いていて、そこには必ずしも幸福が確立されていないこと
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いとこ同志(1959年製作の映画)

3.7

ひたすらの孤独感。
勉強が第一のはずが、女や遊びに惹かれるシャルル。そんな感じは若者らしくその特権でもある。ましてやプレイボーイないとこがいるから尚更。兄弟でもなくいとこというのが絶妙に感情を揺さぶる
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若者のすべて(1960年製作の映画)

4.5

父の死により都市にありながら、それをきっかけにして崩れていく家族。長兄は結婚して母や弟は二の次に。
そんな具合で兄弟それぞれに責任がのしかかる。光明が見えかけるだけに辛くもある。

シモーネは自らの弱
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ケープ・フィアー(1991年製作の映画)

3.7

下手なホラーよりよっぽど怖いし、ロバート・デ・ニーロの怪演は凄まじい。
カメラワークを筆頭に演出の巧みさは流石スコセッシと言ったところで、ラスト15分はエネルギーを奪われる。

力に物を言わせるだけで
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第三の男(1949年製作の映画)

4.4

友の死を追う正義感とそこからのショッキングな裏切り。それでもなお友を信じようとし、そこに恋慕の情も重なって、実に人間的なテーマを背負う。
愛情と友情。

分かりやすくも練られた脚本、流麗なカメラワーク
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気のいい女たち(1960年製作の映画)

4.2

本当に嫌気が差すほど下品な男たちとそれを許してしまう女たち。
許してしまうとまでではないのかもしれないが、にしても男性性の捉え方が的確。
極めて象徴的なのだが、プールのシーンは嫌すぎた。最初は笑えたオ
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ミカエル(1924年製作の映画)

4.5

ミカエルというより、ゾレの物語である。
彼とミカエルの愛憎半ばする関係はクィアネスを多分に漂わせ、1世紀の時間的隔絶を優に飛び越える説得力を持つ。
特にラストシーンの美しさは印象的かつ衝撃的でもある。
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黒い罠(1958年製作の映画)

4.5

オープニングシーンはもちろん、長回しによる映像の迫力が凄まじい。
人物描写のためのショットや演出が素晴らしい。
カメラワークや画の美しさは特筆に値する。
特にラストシーンはダイアログ、ショット、演出全
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二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)

4.2

夫婦ともに文字通り身を粉にして働き、息子の成長と幸せを願う。
その実直さとどこか天邪鬼とまではいかずとも強情さがいたいけにも映る。
等身大の市井の夫婦を演じる名優二人。本当に素晴らしい。
ラストの高峰
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フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

3.9

戦争映画にはそぐわないほどの構図の美しさはキューブリック流石だなと。
淡々と展開していき、感情的揺れは深掘りせずに進む。

前半の方が個人的には面白かった。展開される映像に釘付けになったし、ラストも鮮
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風の中の牝鷄(1948年製作の映画)

4.0

小津にしてはかなり直接的だし、暴力性も多分に帯びた世俗的なホラー作品であるかなと。
感情的なセリフは特異である。
にしても構図の取り方は段違い。全編が短い上、空のショットが特に多く、テンポ感がいい。
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エル・スール(1982年製作の映画)

4.7

映像的、情緒的どちらにおいても隙のない作り込み。
質感含め途轍もない美しさを纏っている。

南への朧げながらの謂わば屈折した憧憬はジュヴナイル的だとも感じたし、そこへの着地点の見出し方に鳥肌であった。
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.4

いやはや期待していた以上に良かった。
シンプルながら筋が考えられていて、キャラクターが魅力的。
時に生々しく、時にシュールで、そしてシニカルであり続ける。
世界観が突き抜けてかえって完成しており、それ
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シークレット・サンシャイン 4K レストア(2007年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

立ち上がりからシネはずっとどこか危うさを感じ、それが傍観者には怖くもある。
その伏線あるいは予感が悪くも消化され、さらにその彼女の危うさは全編を通して不変で、根底に鎮座し続ける。

イ・チャンドンはや
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奇跡(1954年製作の映画)

4.8

かなり宗教的ではありながら、同時に人間を捉える慧眼。
徹底的な長回し。

信仰心をありありと映し出す。
父の敬虔さは一貫しつつも、そこに長男や仕立て屋の宗教観が衝突し、ある種皮肉的なリアリズムも感じる
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健康でさえあれば(1966年製作の映画)

3.7

セリフは少なめで、なくても十二分なほも映像や人の動き、表情による表現に富んでいる。
映像的な見応えもある。
シュルレアリスムとまではいかないまでも、超現実的な要素が面白い。
特に3本目が個人的に最高だ
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女の座(1962年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

恐るべき完成度じゃないだろうか。
成瀬作品の味はしっかりしながら、とっ散らかりかねないのを完璧に近い形で纏め上げる離れ業だと。

これほどの役者を使い、いわば『流れる』に似た外観ではあるが、寧ろこちら
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サムライ(1967年製作の映画)

3.5

美しい映像と渋い男とパリの街並み。

映像的な魅力は十分で、特にオープニングと最初の殺し屋との邂逅のシーンはかっこよかった。
ただ作品としてはアラン・ドロンのカッコよさに依拠するところも大きく、演出の
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第三世代(1979年製作の映画)

4.1

有象無象、魑魅魍魎。
流れている音楽、雑音あらゆるものと美しい構図のアンマッチが素晴らしい。
このアンバランスがありながら、一応の体裁を整えてしまうわけであるからさすが。

奇天烈さはあるけれども、全
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JSA(2000年製作の映画)

3.5

わりと展開はベタではあるが、胸にくるものがあり、いかにもというような胡散臭さはない。
やるせなき結びでもって、彼らが犯したタブーの重大さを明確に残す。
実話ではないながら、一定の説得力を持ち得ることは
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友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

3.8

少年の子供的な純粋無垢なところとそれでいて何かをするにはまだ幼くもある無力さと。

大人たちは結構冷たく、寄り添う心がないだけに、おじいさんの優しさが沁みる。
夜になり暗くなった時の孤独感の描き方は見
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無防備都市(1945年製作の映画)

4.0

前半と後半の二段構えがより最後のシリアスさを際立たせる。
特に前半はユーモラスな顔を覗かせ、市井の希望的な面を描き、それでいながら戦争は生活に存在し、物語が展開されるにつれますます邪悪さを湛える。
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ペパーミント・キャンディー 4Kレストア(1999年製作の映画)

4.9

前にしか進まない線路の上を走らないといけない人生。
相変わらず脳裏に焼きつく強烈なショットの数々。

オープニングのシーンが強烈な印象を残し、そこからの逆回しでの人生の追憶を辿るのになんとも言えない味
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オアシス 4K レストア(2002年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

前半結構人間のきな臭さ、危うい雰囲気を感じつつ、後半の持っていき方で見事にやられた。とはいえオープニングでの説明力といったら凄すぎる。
鮮烈なシーン、ショットの連続で素晴らしかった。
警察署と木登り。
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8人の女たち(2002年製作の映画)

3.9

フランソワ・オゾンの女性性、人間の業の描き方の巧みさが相変わらず見事。
これだけの俳優が揃えばある程度の完成度は担保されたもので、彼女たちの丁々発止の会話劇は見応え十分。そこに満載された皮肉にもオゾン
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ナイルの娘(1987年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

音楽と景色のマッチに陶酔的な気持ちよさがある。
マクロで見た街はネオンなど憧憬を抱くように綺麗だが、クローズアップすると澱んでいて。
集団の中に居ながらもどこかつながりより孤独感を強く感じるわけで、そ
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.8

エンタメ性、演出両面において韓国映画の特徴を最大限に引き出した傑作である。

設定としてはそこまでの捻りはないものの、脚本に無駄がなく、最初から最後までトーンダウンすることなく、素晴らしいテンポ感を保
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ポエトリー アグネスの詩 4K レストア(2010年製作の映画)

4.0

男性女性、生と死、理想と現実、美と頽廃…
割とはっきりとした二項対立が見られるが、単純にそれだけに止まらず。
痛ましい事件は当事者たちやその親にとってはまるでどこ吹く風で、かなり醜悪に男性を描いている
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生きちゃった(2020年製作の映画)

3.7

ラストシーン含め物足りなさ、説明不足感は否めないものの観てよかった。
仲野太賀、若葉竜也が最高。
結局逃げ続けているだけなんだが、そんな駄目な男の微妙な表情や心情の機微を演じられるのは仲野太賀しかいな
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ぼくの小さな恋人たち 4Kデジタルリマスター版(1974年製作の映画)

4.4

祖母のもと友達と共にのびのび暮らしていたのに、母から性急に大人として働くことを強いられ、搾取され。しかし、子供扱いをされ続けいかにも窮屈な日々である。
ただその日々での交流や目にする光景は彼に現実を突
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

4.6

ニューヨークの決して表向きの顔ではなくより自然な人々や生活の姿。
定点、横移動のカメラワークいずれにしても、構図が決まっていて美しい。
そこまで憧憬を漂わせながら、ラストのモノクロになった映像は大都市
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ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

4.6

ジャン=ピエール・レオの魅力たっぷり。
219分は流石に長いと思ったが、不思議と観れた。特に抑揚もなく、ペースは一定だが、レオの顔面の引力がすごい。
とはいえ、アレクサンドルは腑抜けであり、言うことだ
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