love1109さんの映画レビュー・感想・評価 - 35ページ目

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インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.8

JLGがジャン・リュック・ゴダールを指すように、PTAとはポール・トーマス・アンダーソンのことだ。この現代のアメリカの最高峰に君臨する天才監督が、1970年代のLAを舞台に、サイコーにぶっ飛んだ映画を>>続きを読む

WISH I WAS HERE/僕らのいる場所(2014年製作の映画)

3.6

どんなに風変わりで、普通ではない夫婦や親子であったとしても、不安や恐れ、悲しみをともに共有することで、やがて、他のどこにもない、かけがえのない家族となっていく。誰かの死は、もちろん寂しく悲しいけれど、>>続きを読む

ビッグ・アイズ(2014年製作の映画)

3.2

存在を否定されることよりも、存在を消されることの方が苦痛であるに違いない。ましてや、自らが命を吹き込んだ、創造物について、偽り、欺かなければならないだなんて。奇才ティム・バートンが、創作の根源に向き合>>続きを読む

日本の悲劇(2013年製作の映画)

3.6

夢を描くものである一方で、映画は、誰もが目を背け、誰からも伝えられない現実を露わにするものでもある。震災の翌年。近所のレンタルショップで見当たらず、ネットレンタルで数か月待ってようやく観られた2012>>続きを読む

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)

3.7

憎悪よりタチが悪いのは嫉妬だ。前者は他者に向けられるが、後者は自らに向けられる。やがて、心の奥底にひたひたと、少しずつ、少しずつ、蓄積した劣等感は、些細なことをきっかけに、ある日突然、なんの前触れもな>>続きを読む

おみおくりの作法(2013年製作の映画)

3.9

「私たちの社会の質は、最も弱い者に対して社会が置く価値によって測られる」とパゾリーニ監督。ケン・ローチを例に挙げるまでもなく、弱き者、虐げられる者の視点で描く。良質なイギリス映画には、そんな良心が残っ>>続きを読む

パロアルト・ストーリー(2013年製作の映画)

3.5

刹那的な快楽や反社会的な衝動。カラダとココロのバランスのとれない、まだ何者でもない10代の若者たちの日常にある危うさと切なさを、スタイリッシュに描いた青春群像劇。衣裳も、映像も、音楽も、いちいちオシャ>>続きを読む

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年製作の映画)

3.6

ハリウッド映画によるハリウッドへの痛烈な批判がオスカーを獲った。これが「ホンモノ」のアカデミー賞の見識。過去の栄光と挫折、エゴに苦しむ主人公をはじめ、まるで現実を投影させたかのような巧みなキャスティン>>続きを読む

ゼロの未来(2013年製作の映画)

3.5

繋がれば繋がるほど孤立感は増していく。「未来世紀ブラジル」から28年。時間も意識もコンピューターに支配されつつある現代に対する警告と、未来への懸念を、天才テリー・ギリアムが、圧倒的な映像美と、ブラック>>続きを読む

ジヌよさらば かむろば村へ(2015年製作の映画)

3.9

本業の舞台を観たことはないけれど、監督・松尾スズキは心底いい映画を撮る。彼はいつもギリギリの状態でなんとか生きている人間を描く。そんな「普通ではない」生き方を肯定する強いメッセージに、観る者は、なんだ>>続きを読む

365日のシンプルライフ(2013年製作の映画)

3.4

シンプルライフとか、スローライフとか、無駄を削ぎ落とし、生活を変えることでしか、暮らしの本質が見えてこない時代を私たちは生きている。モノとは何か。という問いかけをすることで、自分にとってほんとうに大切>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

4.5

廃盤のためレンタルショップで出会える可能性はゼロ。もはや観ることはできないとあきらめていた幻の作品がまさかの再発! 父と娘。親子でありながら、同時に、ひとりの人間と人間でもある二人が、奇跡のように美し>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

4.0

鼓動は高まり、手に汗を握り、やがて、身体の芯が熱くなってくる。一本の映画によって、こんなにも感情が掻き立てられるなんて。これはジャズを題材にした格闘映画。狂気的なエゴを抱えながら、自らの全存在をかけ、>>続きを読む

6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

3.9

平凡な人生はない。どこにでもありそうな日々を積み重ねていくだけで、それはやがて、ドラマティックで、誰のものでもない、自分だけのかけがえのない「人生」となる。家族が、ともに笑い、泣いて、傷つき、ぶつかっ>>続きを読む

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)

3.4

ビートたけしが小林信彦の「日本の喜劇人」を読んで芸人を志したというのは有名な話だ。その「笑い」に、なんとなく、微かな怒りや哀しみを感じてしまうのは、そんなところに理由があるんじゃないかと思う。本当に痛>>続きを読む

JIMI:栄光への軌跡(2013年製作の映画)

3.4

ギターのジャックにシールドがささる音を聞くだけでゾクゾクする。ジミ・ヘンドリックスがまだジェームズ・ヘンドリックスと名乗っていた頃。スターダムにのぼり詰める直前、爆発寸前のひりひりした2年間がギュッと>>続きを読む

パレードへようこそ(2014年製作の映画)

3.8

人間にとって最も尊ぶべき行為は、理解できないもの(あるいは理解しがたいもの)を受け入れ、敬意をもって接するということだ。炭鉱夫とその家族とゲイとレズビアン。他者への思いやりと、一歩前に踏みだす勇気で、>>続きを読む

ギャラクシー街道(2015年製作の映画)

3.8

かつて「今夜、宇宙の片隅で」というTVドラマがあった。視聴率が獲れなかったからか、話題にのぼることもなく、すでに世の中から忘れられてしまっているけれど、丁寧に作り込まれた、とてもクオリティーの高いドラ>>続きを読む

トイレのピエタ(2015年製作の映画)

4.5

日課のように映画を観ていると、年に2、3本、ほんとうにびっくりするくらいに無垢で、美しい映画に出会えることがある。声にならない怒りに拳を突き上げ、悲しみに肩を震わせる。それでもなお、生きていてよかった>>続きを読む

ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男(2014年製作の映画)

3.6

JBは冒頭からいきなり「あんたの持ってるレコード。そのどれにも俺の片鱗がある。ラップでも歌でも何でもすべて俺の影響を受けている」と豪語する。しかし、例えジェームス・ブラウンを知らずとも、この映画を観終>>続きを読む

愛して飲んで歌って(2014年製作の映画)

3.7

フランスの国民的映画監督の遺作。「いつも処女作に取り組むように撮影に臨んでいた」と追悼したのは俳優のアンドレ・デュソリエ。彼のコメントを裏付けるかのように、レネ監督は、ベルリン国際映画祭にて、革新的な>>続きを読む

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

4.7

思い通りにならない人生を生きていく。是枝監督はまた、そんな多くの人たちに寄り添った映画を撮った。やさしさはときに弱く、弱さはときにやさしい。そのことを愛しむ視点が、私たちに、がんばれ、がんばれ、とエー>>続きを読む

はじまりのうた(2013年製作の映画)

3.9

音楽はすごい。あるメロディに、あるリズムに、あるハーモニーに、胸がジンジン、ズキズキした人ならわかる。そばに音楽があるだけで、いつだって、どこだって、最強になれる。音楽は「平凡な風景を意味あるものに変>>続きを読む

妻への家路(2014年製作の映画)

3.4

今から十数年前、上海在住の中国人に「毛沢東にどんな感情を抱いているのか」と問いかけ、ひどく困惑させてしまったことがある。人間には「複雑な感情」というものがあるということを真に学んだのはそのときだ。時代>>続きを読む

さいはてにて やさしい香りと待ちながら(2014年製作の映画)

3.3

強さとは受け入れる力のことだ。ほんとうに逃げ場を失ってしまったとき、それでも逃げるか、つぶれるか、あるいは、受け入れるか。この3つしか方法はない。これは、もう逃げ場のない「さいはて」にて、現実を受け入>>続きを読む

白河夜船(2015年製作の映画)

3.3

こういう映画を言葉にするのは難しい。発刊から26年を経た、知る人ぞ知る、傑作短編小説の映画化。文学としてすでに完成した世界の映像化について、原作者のよしもとばななは「奇跡的」で「感無量!」と評した。「>>続きを読む

リピーテッド(2014年製作の映画)

3.5

ひとりの女優としてみたときに、ニコール・キッドマンのフィルモグラフィーは、とても興味深いものだ。彼女の作品選びには毎回「チャレンジ」があり、そこを乗り越えることで、常にファンを驚かせ、新たな評価を勝ち>>続きを読む

サンドラの週末(2014年製作の映画)

3.8

たった独りで勇気を振り絞り闘う人間ほど胸を打つものはない。人生において、何をもって「勝ち」とし、何をもって「負け」とするのか、そのことをこの映画はシンプルに問いかける。生きていくのは大変でつらい。それ>>続きを読む

Mommy/マミー(2014年製作の映画)

4.8

すごい。言葉にならない。かつて、フランソワ・トリュフォーは「もっともすばらしい映画は、扉が開かれるような印象を与える映画である」という言葉を遺したけれど、グザヴィエ・ドランこそが、新しい時代を切り拓く>>続きを読む

こっぱみじん(2013年製作の映画)

3.0

主人公の楓はゲイの拓也に、ゲイの拓也は幼なじみの隆太に、隆太はその婚約者の有希に、有希は誰も知らない浮気相手の男に。登場人物が全員片思いという、その繊細な感情の揺れ動きを描いた、ド・ストレートな恋愛映>>続きを読む

ラブ&ピース(2015年製作の映画)

3.6

50代にしてこんなにも純粋な気持ちで映画を撮ることができるものだろうか。「愛のむきだし」以来の純度、園子温監督のピュアさが、ダイレクトにフィルムに投影されている。ラスト。RCサクセションの「スローバラ>>続きを読む

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.0

子供の視点で描かれた映画に傑作が多いのは、それらが「物事をありのままに見る」目によって語られるからだ。力強くまっすぐな主人公アナのまなざしに映る世界は、混沌として、ときに残酷で、偽りに満ちているけれど>>続きを読む

私の少女(2014年製作の映画)

3.2

無垢なるものは恐ろしい。けれど、無垢なるものによって私たちは救われる。傷つき、絶望の淵に追い詰められてもなお、「死なねえぞ!」ともう一度立ち上がることができるのは、誰かを愛し、誰かを守るときだけだ。人>>続きを読む

駆込み女と駆出し男(2015年製作の映画)

4.4

江戸時代からめんめんと受け継がれてきた戯曲の系譜を「正しい日本語」によって継承しようとした井上ひさしが、晩年、11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」を原作に、これまた、日本の美しさと奥深さを>>続きを読む

アリスのままで(2014年製作の映画)

3.3

神さまはときに、信じられないような試練を与えるけれど、支えになる家族が側にいても、人間はたった独りで、その試練を乗り越えねばならない。ほんとうの強さとは、孤独を受け入れ、自らの尊厳を守り、命が尽きるま>>続きを読む

真夜中のゆりかご(2014年製作の映画)

3.1

道徳的に正しいかどうかということはとても難しく、私たちが生きている世界はもっと複雑で、理解しがたいものだ。「私たちの概念の中核をなすものに対して疑問を呈するような映画をつくりたかった」とスサンネ・ビア>>続きを読む