eigaさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)

4.6

民主主義国家の一市民の使命。
対話を促すこと。
権力に抗い、真実を求めること。

目に当たるライティング。
目力。
沈黙で見つめ返す。
有言の怒りに対する、無言の怒り(あるいは憐れみ)。

クーラーが
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蒲田行進曲(1982年製作の映画)

3.5

想像してたのと違った。

江戸っ子の書いた漫画のような展開。
セリフの速さ、劇性、キャラの熱量。
昔の日本のステレオタイプが詰まっていて、
それはひとつの秩序を生んでいる。

ツッコミどころしかないが
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.6

toxic masculinityの浄化。

母をアルコール中毒にし、
周りに害をもたらすものを排除するのは、
こういうやり方しかないのか。

お互いに似た要素を見つけたからこそ近寄れる。
仲間と思わ
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ある女流作家の罪と罰(2018年製作の映画)

3.9

認められないルサンチマンと、
小さな悪事のエスカレートする様子。

「罪と罰」ではあるが、そこには救いがある。

マンダレイ(2005年製作の映画)

4.4

人社会を「教化」しようとすることの失敗。
コミュニティは閉じられている方が平和なのか?
それでも開く理由は?
奴隷を「救う」という考えのおろかさ。

信じられないから恐怖する、とう連鎖。

ドッグヴィ
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

4.3

ユーモアと悪意ががどこまで入っているのか。
狙っていないまじめさに狂気を感じる。

革命と自由の話。

人として生きる根源。
コミュニティを守るための個人の命の重さ。

自己犠牲をできる人とできない人
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JUNK HEAD(2017年製作の映画)

4.1

クラフトの凄さと個人の執念がすべてを凌駕する。
ストーリーとして後半の尻すぼみ感はある。
でもそれも含めて人間らしくてよい。

やりたかったことをサンプリングして圧縮させる。
ザ・クリエイション。
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.0

別の人格を生きることができるのか。
空っぽにしてゼロからやり直す。
主体的に生きて傷つくなら、
誰かに命じられて生きる方がまし?

けれど、考え、感じることからは逃げられない。

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

4.1

一番の悪は、力そのものではなく拡散する思想。
ナラティブは悪にしか使われないのか。
戦時下に思う。

それは、散逸構造の悪。
正義はない。
何が守られなければならないか?
イノセントなもの。子供の未来
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コヤニスカッツィ(1982年製作の映画)

3.6

立ち登るキノコ雲。
それはやがて脳髄のような形に。

車道を走る車。
血流のようなそれが刻むリズム。

平衡を失った世界。

人類による破壊、そして再生。
映像だけで伝えようとする気概。

ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い(2015年製作の映画)

3.8

国の中で戦う。
一つの国はさまざまな外的要因で作られている。
それはウクライナに限らず。

灼熱の魂(2010年製作の映画)

4.2

日常は、非日常の連続上にある。
それは、脆く崩れやすい。

両親のすべてのことに意味があるとわかった瞬間に、人は優しくならなければならない。

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

4.4

生と死が隣り合わせ。
そもそも、人生はワンカットだ。

「無事に帰ってきて」という母の言葉。
これ以上勝るものはない。

生きるものへのリスペクト。

死は残酷に描くものではなく、
突然訪れるものとし
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有りがたうさん(1936年製作の映画)

4.0

戦前につくられたという驚き。
乗合バスという、純然たる和風ロードムービー。

男女の距離感の描き方は、
戦前前後で一番変わった部分かもしれない。

映画が文学に近かった時代。

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.9

世界観と美術。
まさに雑誌を読んでいるような。

しかし、メッセージとしての何かが残らない映画というのも不思議。

ほんのすこしの残酷さがいい隠し味になっている。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

4.0

「これは映画なのか」というレビューが気になり鑑賞。

タレントが変わるというのをマルチバースという概念で回収する、メタ構造なのか。

敵を倒さないという思想。
過去から現代の、Z世代的な変化を象徴する
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.9


「私たちって東京の養分だよね」

「私たちの老後ってあそこの脱毛から始まるの」

誰目線の原作なのか。

ラストシーン。
原作と映画の距離を埋めるような、二人の見合うカット。

按摩と女(1938年製作の映画)

4.1

見えない人に、見えているものは何か。
見えない人が見たと思っていて、
見えなかったものは何か。

女心。

トーキーにも似た動きのコミカル性。

座頭市、ローグワンに通じるもの。

余白のある画角。
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.9

聾の家族の中で健常者な娘は「恐怖」でもあった。分かり合えないんじゃないかという不安。

耳が聞こえない人にとっての歌とは。
歌の奥にある、心の叫び。

コミュニケーション論でもある。

害虫(2002年製作の映画)

3.8

箱に運ばれて流れていくタイプのロードムービー。

黒バックに詩的な長いモノローグタイトル。

いすゞのトラックが坂から上がってくる。

家が燃えて後退りする宮崎あおいのリフレイン。

マッチを消す蒼井
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

3.8

「ハウス」は男社会の縮図。
そこへの怒りと嫉妬が根幹なのか。
テルマ&ルイーズでも描かれていた女性の解放劇。(彷彿とさせるピナとパトリツィアのカフェでのシーン)

資本主義は美意識を麻痺させる。
イタ
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25時(2002年製作の映画)

4.4

鏡に向き合う。
込み上げる、アメリカのマイノリティへの怒り。
スコットランド系移民の本心なのか。
トランプ的なるもの。

男の友情。

「君には限りない夜がある」

偶然と想像(2021年製作の映画)

4.7

第一話。
タクシーの中の女二人の会話。
長回しで出てくる人間性。
(いつだって、人生はワンカットだ)

女性が綺麗に見える瞬間と醜悪に見える瞬間がある。

顔に寄る、からの妄想終わり、という手法。
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ドッグヴィル(2003年製作の映画)

4.7

大人の絵本。

同調圧力と村社会。
だんだん澱んでいく。
不安と怒りの吐口がない世界。
「浄化」の連鎖。

粘膜ギリギリのところのところで
つくられるシナリオ。

舞台装置としての物語世界。

絵本調
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野火(1959年製作の映画)

3.8

冒頭の、上官の叱責に対して呆然としている顔。
人間が人形になっている顔。

戦時中に、極限状態に、哲学はあるか。

人が人である、最低限のラインを踏み越えたことへの怒り。

いやらしさ、人間臭さ、へん
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細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)

4.2

映画は、顔を観るもの。
添え物としての着物、四季の情景。
それ以外に何もいらない。

みんな、肌がきれいだなぁ。

卓を囲んでの人間ドラマの機微。
群像劇なのに一人一人が生き生きしている。

出自やし
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キングスマン:ファースト・エージェント(2020年製作の映画)

3.7

歴史映画というずらし方。
第一作を見返したくなった。


キングスマン=紳士精神×テクノロジー

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

4.1

「なんだ、みんな色々持ってたんだ」

で終わる地球最後の日。

コロナとトランプ、なんでも起こりうる今だからこれはある意味ホラーである。

資本主義と科学の成れの果てを誰も笑えない。

浅草キッド(2021年製作の映画)

3.9

ジョーカー的な妄想かと思いきや。

ジョーカーが生まれないために必要なのは、
師匠の存在。

どん底にいるときも、
「見てるよ」と言ってくれる人がいたかどうか。

人の使命は、魂を継承することだとした
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ボストン市庁舎(2020年製作の映画)

4.1

「戦没者への最大の弔いは、世界を平和にすること」

「不平等は、法律違反」

「移民の皆さんがいなければ、私はここにいませんでした」


民主主義とは。
多様な感情を「妥協」でまとめること。

民主主
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.0

目が見えない。
妄想するしかない。

存在証明。
妄想を現実世界に問うことがアーティストの使命だとしたら。

妄想と現実の距離がなくなったときに人は最後を迎える、という寓話か。

ビョークという人間性
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夜明けの夫婦(2021年製作の映画)

4.4

母が子を抱えて公園で笑ってる。
それだけなのに、こんなに狂気になる。

ふつうの幸せ、という残酷さ。

「どうしてほしいかより、どうしたいか」

夫婦は、いつでも始め直せる。

皮膚を売った男(2020年製作の映画)

3.7

そういうアートがあったら、
というシミュレーション映画。

設定や展開のB級感はありつつ。

ロジャー&ミー(1989年製作の映画)

3.8

自由と資本主義の国。
富の集中と格差。

ひとつのゴールしかない国は不安定だ。

セリフ、音楽と映像のギャップ。