速い。圧倒的いい画を惜しみなく使って、すごいスピードで少女を語る。ほとんどセリフはないのだけれど、だから消化できない時間を過ごすことができる。
濃密で、残酷です。あの娘の顔は忘れられない顔。
越境し続けたブニュエルに相応しい遺作。国境を軽々と越えながら、ただ自らの欲求に忠実に従うフェルナンド・レイの姿は、ブニュエルに重なる。
二人一役の映画はこれが初めて。他にあるのだろうか。私は私と言い>>続きを読む
難民のドキュメンタリーと聞いて、いろいろ悲劇的なものを期待している観客(僕を含む)にとっては、唖然とする映画だろう。
派手に描けばいくらでもできる、でもこの映画では、一滴の血の涙と静かな海の上に置かれ>>続きを読む
離散した家族の席にフラッシュバックするつかの間の過去。あそこで少し眠たかったのが一気に目が覚めた。
醜さをあえて露呈しながら彼女を生かす、この映画の大胆さは嫌いじゃない。
猫や孔雀もいい。ペイントボ>>続きを読む
映画は何のためにあるのだろう。そんな途方もない問いに、1つの答えをこの映画は差し出してくれた。今もその衝撃に震えている。
この映画にはそこにある現在だけじゃなくて、遥か昔の過去があり、まだ見えない未>>続きを読む
はじめてのジャック・リヴェット。
双六ゲームの遊び心と、B級犯罪映画のあっけさなと、パリの街並みの美しさが、妙に心地いい。
彼らが積み重ねようとしている時間と、背景で壊されていく時間のスピードの違い>>続きを読む
この映画も庶民の戦争の映画。戦時中が幸せで、戦後はむしろ不幸になる
悲しき非国民の映画。『共喰い』同じく、神社で愛のシーンを撮るのにこだわる荒井さんはおもしろい。
ものを食べること、他人の体を求める>>続きを読む
密室から出て退散し、また出て退散しの繰り返し。どんどん死んでいく仲間たちの描写は、わりとあっけなくて飄々としている。
ズタズタになった腕もテープ巻けばいいだろう、みたいに思えてくるから怖い。
むだな>>続きを読む
自分が誰かなんて、誰にも分からないのであり、私たちは皆アイドル=偶像でしかない。その偶像とどこで折り合いをつけるかなのだけど、それがおかしくなったときのお話がこれ。
アイドル、ネット、エログロ、メタ、>>続きを読む
壊れゆく家族のうた。神代監督の映画の人々は皆シャイで悲しいほどに愚直である。やってることはエグいのに、人のよさが染み出てくる。
ぬいぐるみの使い方がとてもいい。あのぬいぐるみが揃って娘の手にあるのは>>続きを読む
序盤のかわいい親子のシーンがあるから、最後まで泣ける。
それにしてもテンポがいい。あと照明の的確さ。ラスト辺りの表情を捉えるハイアングルのカメラがいい。
とにかく人が死にまくる。そして不意に時が遡って死者がよみがえったりする。映画だから描けるこの生死の可笑しさ。ゆるやかに振り下ろされるバットの音は遠い世界の話じゃない。死の確実性、凡庸さを劇画チックに画>>続きを読む
夜の、とタイトルにつく映画と言えばニコラス・レイの『夜の人々』なんだけど、それと同じくらいこの『夜の片鱗』が好き。夜にしか生きられなかった人々のどうしようもない愛の物語は、理屈じゃ語れない。
その理屈>>続きを読む
奇妙な夢から始まる序盤から、古いドイツ映画みたいな滑稽な表現と、変に癖になるセリフと、やけに印象に残る役者の顔が、強く強く線を引く。
不倫は悪いみたいな、分かりきったような明言を破り捨てる、みれんの>>続きを読む
手の映画です。戦争で失った母親の手、その母親を殴る父親の手、そしてその父親の血が流れ、また女を殴ろうとする息子の手。
中上健二っぽいドロドロの血の話に、昭和のおわりという時代が重なったとき、それらの手>>続きを読む
冒頭、コンビニでさまよう寺島しのぶの虚ろな目と声に持ってかれる。すごくいい。
トラック運転手と食べ吐きの女の二人の旅。狭いトラックの車内の会話が暖かい。
「この人、食べたい」って思えても、いざ食べると>>続きを読む
眼に見えない、耳に聞こえないものを、どれだけ信じられるか。苦しい苦しい状況で、ひたすら考え続けた彼らの苦悩と、たどり着いた境地のほんの一片を観客は感じる。
身体が痛めつけられるほどに、精神は削られ研ぎ>>続きを読む
ネオレアリスモなのは間違いないが、予想よりもずっと、画面の構成や動きの導線が洗練されていてびっくり。やはり確かな美学がないと、現実を映画にすることは不可能だ。
カップルを風景と同化させるロングからの>>続きを読む
恋人たちには永遠に1つのカットに一緒にいてほしい。でもそれができない。だからカメラは追いかける。でも追いつかない。それが切ない。
顔の映画。ニコッと笑うだけで革命が起きたように歴史が変わる。そんなガ>>続きを読む
だいぶ前にバルセロナで観たのだった。
異様に音が良くて、フランス語のセリフが心地よかったのと、映像がキレキレだったのを覚えている。
あと、あっけらかんとした展開。なぜか許せるんだよなあ。すごく正直だか>>続きを読む
ガレルの映画は不意に始まり不意に終わるので、みた直後は何とも言えない感じになって映画館を出るのだけれど、なぜか次第に心に居座ってくる。まじめなんだか不まじめなんだか分からないキャラクターたちの放浪の時>>続きを読む
今僕は生きているのだろうか、今僕の前にいる人は生きているのだろうか、それともみんな死んでいるのだろうか。
切り返しのカットで、途中で相手が消えちゃうのって凄く怖いって、この映画を観て気づいた。
照明>>続きを読む
人間って怖いなぁ、それをあんなに引いて眺められる溝口はもっと怖いなぁ、と思った。
安易な表情のアップなんぞでは到底太刀打ちできない強さが、この映画にはある。
もうカメラが少し動くだけで涙がでる。隣のおばあさんと一緒にホロホロ。
ラストは特に異次元。ここまで引き出すか。
過激なんだけど、大げさじゃない。正直おりんという女の子の内面はあまり分からないのだけど、その異常な動きと、どこ見てるか分からない鋭い眼から何か切実なるものをくらう。
同じ言葉を繰り返すことから生まれ>>続きを読む
顔の映画かなあ。ナンニ・モレッティの映画って、人の顔がとても魅力的なのだけど、どこか暗くて不思議な面影があるから。
物語はありきたりといえばありきたりだけど、なんで余韻がこんなにあるんだろう。きっと細>>続きを読む
柔らかな光の映像と、スピーディーな編集と、トロトロした音楽が、たまらなく心地いい。
五時間超、スクリーンに吸い込まれた。それで分かったのは、「分からない」ということ。カサヴェテスの映画みたいに論理なんて飛び越えて、言葉はナイフとなり、視線は矢となり、感情はスライムみたいに形を変え続け>>続きを読む
溝口は、赤線地帯という世界を肯定するわけでも否定するわけでもない。メッセージなんてない。そこに生きざるをえない女たちを、彼はカメラでひたすら追っている。
全てが凄まじいので、ぐうの音もでない。本気の画>>続きを読む
映像演出のお手本のような映画。モノクロの陰影の美しい照明、均整のとれた構図、リズムのよいモンタージュ。
その整った画面に収まらない黒い怒りが物語を貫く。いい意味でも悪い意味でも、悪い人間になれない彼>>続きを読む
アピチャッポンの身体や医療への強いこだわりは何なのだろう。前半の無機質な病室やクリーム弁当の異様な白さから、ドライブを通じてミンとムンは解放されていく。そこから一気に陽気と明るさを取り入れて、映画は彼>>続きを読む
爆音でセリフをかき消し、全く脈絡のない夢の映像を突然挟んだり、自由この上ない極上の映画。面白すぎる。
ブルジョワ批判とか、そんな枠にはまらない、大きな人間讃歌。
観てたら自分の欲望を見つめざるをえない>>続きを読む
不思議な映画。題材はあるあるだけと、それぞれのエピソードが突飛で力強く忘れられない。泣けるんだけど、無理矢理そこに連れていかれるんじゃない感じが好き。
脚本、演出すごいなあ。
チャプリン円熟の傑作。全てのセリフが素晴らしい。キートンとの共演には涙がほろり。
チャップリンが歌う瞬間の緊張と感動がトーキー初期の俳優たちの苦悩と相まって、余計に感慨深い。
シンプルな物語が、物で溢れる世界の中で一際輝いていた。