街角のアレンさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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フローズン・リバー(2008年製作の映画)

3.8

アメリカとカナダの国境を流れるセントローレンス河。
不法移民を入れることで生計を立てるムホーク族と白人女性、ふたりの冬。
開放的な風景と対照に漂う閉塞感、垣間見える希望がライカートやアンドリューヘイを
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ファニーゲーム(1997年製作の映画)

3.7

ハネケの作品の中でも一番の不快作でした。なんでこんなものを。
現実と虚構について台詞で触れながら、数回のメタ演出で遊ぶように飛び越えては戻っていく、これもまたファニーゲームなのか。
ヴィムヴェンダース
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愛、アムール(2012年製作の映画)

3.9

ハネケらしい愛の表現。
アンヌがうめき声を上げるようになってから自分が無意識に音量を絞っていたことにハッとしたが、現実とは恐らくこんなもので、愛情が苦痛に屈するのなんて想定する以上に容易なのだろう。
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家族の庭(2010年製作の映画)

4.0

余生をゆったり過ごす夫婦のほっこりする話に見せ掛けて、家族の持つ残酷さを浮き彫りにする作品だった。
豊かで幸せな生活は、ある種の排他性なくして成立し得ない。自然なこととはいえ敢えて見つめると胸が騒つく
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秘密と嘘(1996年製作の映画)

4.1

上質な群像劇でした。
マイクリーの曇った世界観はやはり良い。
人間の中にある理屈で語りきれない部分、葛藤を描くのが上手い。
最後の台詞のように、ヒステリックで過干渉で依存体質なシンシアこそが結局誰より
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ブエノスアイレス(1997年製作の映画)

3.8

香港の対蹠地ブエノスアイレス。
イグアスの滝を目指し、やり直しの旅をするゲイカップル。
ぶつかり合う愛や嫉妬は、街の持つ粗い緑黄のエネルギーに消えていく。
包み込むというよりも放っておかれる、雑多な街
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たまたま(2011年製作の映画)

4.0

凄く良かった。
広大な風景、アイルランドの人々、流されゆく蒼井優、少し陽気なシガーロス。
何もかもが澄んでいて浄化された。
寓話的で美しい世界観を、どこかひっくり返してしまうんじゃないかと思わせる蒼井
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早春(1970年製作の映画)

4.3

歳上美女と純朴少年の邂逅。
ポップな色合い、ジェーンアッシャーの顔つきから漂う70年代の雰囲気が良い。
ラストは恐ろしき童貞の美学。
上質な青春映画に違いないけれど、可笑しくて結構笑った。

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.0

好きな本や映画、聴いていたラジオ番組、異性への接し方、街の楽しみ方、観ていて顔が引きつるほどに麦と絹が自分過ぎて、一気に持っていかれた。特に麦の土壇場で粘り直す感じ、格好わるいけど共感しかない。
こん
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スリ(掏摸)(1959年製作の映画)

3.8

ブレッソンの描く罪と罰。
手先のショット、スリの連携シーンは妙な気持ち良さがあった。
最初の新聞紙を用いる手法は無理あり過ぎて可笑しかったけれど、恐らくプロは果たすのだろう。
相変わらず無駄がなくて清
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I Am Easy To Find(原題)(2019年製作の映画)

4.0

ひとりの女性の一生を、ひとりの俳優が演じる。26分間。
ふとした感情、こぼれ落ちてしまう一瞬の感覚、誰か特定の個人のメモ書きのようで、それでいて普遍的な言葉や体験の連なり。
いつでも等身大で誠実なマイ
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迷子(2003年製作の映画)

3.5

ツァイ作品の常連俳優、リーカンション監督作品。長回しやカメラの固定位置など、影響を受け過ぎではと思ったら、製作がツァイ氏でした。
祖母が孫を探すだけのシンプルな内容なのに、しっかりと映画。
しかしツァ
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吸血鬼(1932年製作の映画)

3.8

トーキーとサイレントの間に位置する独特な作品。とても美しかった。
恐怖を掻き立てるための音楽は不穏で滑らかで、自然と観入ってしまう。
噛みつきもしない犬歯さえない、品の良いヴァンパイア。怖さと同じくら
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.3

傑作でした。どこにも逃げきれず、何にもなれない2人のひと夏の似非逃避行。
とても開放的なのに拭えない閉塞感が、映像の褪せた色合いと相まって絶妙に良かった。
最後のは一度降ろしたけど、あれは撃ったのだろ
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.0

ライカートが描く女性が主役の西部劇。
孤独でどこか牧歌的な作風はそのままに、今作はどこかミステリアス。地味に終始恐ろしかった。
しっかりと決闘もあり、ガンマンが向かい合うあの緊迫や静寂を彼女が描くとこ
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CURE キュア(1997年製作の映画)

4.2

撮り方がハネケのよう。
広々とした旧い建物の不気味さ。
映像の教材として使われてるの、素人目から見ても凄く納得。
二日間は夜中のトイレに行けなかった。
最後のウェイターのスイッチは役所さんのあれか。

お嬢さん(2016年製作の映画)

4.5

心地よく騙され落ちた穴には、官能に次ぐ官能の波。大傑作でした。
スッキの第一声「かわいい?」
真っ先に容姿を尋ねるその台詞に感じた違和、思い返せばこれこそが手品の種、全てでした。思い出すのはスティング
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イノセント・ガーデン(2013年製作の映画)

3.8

ずっと不機嫌なミアワシコウスカが美しい。
登場する人物が全員どこか狂っていて、誰が先に爆発するのか目が離せない。
最後に親子の愛が勝ったと思いきや、そういえば同じメトロノーム体操をしていたなと。
不気
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少年の君(2019年製作の映画)

4.0

Filmarks試写にて。
秀才とはぐれ者、出会うことのない二人の、とても苦くて美しい恋愛映画。
仕方なくした二度のキスは痛く、尊く、忘れることが出来ない。
そして少年たちにも、彼らを追う大人たちにも
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デッドマン(1995年製作の映画)

3.8

生死に翻弄されるジョニーデップと案内役のアメリカ先住民によるロードムービー。
途中でこれは死から逃げているのか、死へと向かっているのか分からなくなった。
幸福な勘違い、コミュニケーションの齟齬がスモー
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ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

4.5

ゴーストドッグ。
侍に憧れる日本オタクの心優しき殺し屋。
設定でもう心掴まれ、観入ってしまった。
ジャームッシュ独特の抜け感と和の調合。
見た目黒人ラッパーが纏う侍の潔さが、どうしたって微笑ましい。
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コスモス(2015年製作の映画)

3.8

よく意味は解らないが、ズラウスキーの撮り方は好みで飽きない。
ゴンブローヴィッチという作家の原作ものらしい。ミッドサマーの過激さを、アンダーザシルバーレイクのおふざけで中和させたよう。
詩的で不条理な
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AMY エイミー(2015年製作の映画)

3.8

念願叶ってトニーベネットと歌っているときの表情が印象的。
周りの人間に恵まれなかったというだけで、情に抗えない弱い女性だったとは言いたくない。
未だに超えられるシンガー出てこないから、やはり本物だった
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

4.0

誤魔化し自暴自棄になっても、薄まるだけで決して気化しない記憶の苦熱。
薄荷のスッとした感覚が記憶に作用してくれるのなら、荷が下りるでも軽くなるでもなく、文字通り薄まるという表現がしっくりくるなと思う、
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ピクニック(1936年製作の映画)

3.8

切なさを含めて生の喜びを全面に出す。
ともすると退屈で、なんて平和な映画なんだと思う。でもこれが大戦を挟んで完成させたと知って一気に感慨深い。
"月曜日のように悲しい日曜日がめぐり、数年が経った"
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ホームワーク(1989年製作の映画)

3.5

宿題を忘れた子供たちへのインタビュー。
大人からの理不尽を当然のように消化する子供たちには、それに長けた独特の表情が共通してあった。
側にいないと泣き出してしまうマジッドを冷静に分析しているモライ、ふ
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沈黙(1962年製作の映画)

4.8

ことばの通じない架空の共産圏のホテル。
姉妹の不和を炙り出す装置として絶妙!
終わり方も理想的で綺麗。
自分の母とは正反対なのになぜか彼に没入し、懐かしく幸福な気持ちになった。
ぎりぎりまで息を止めた
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猫、かえる Cat’s Home(2019年製作の映画)

3.0

じっくり見ていると笑ってしまう顔の人っていて、モトーラちゃんそれなんだよな。かわいい。
評価低いけど朝シリアルのバナナ切りながら観るのにちょうどよかった。
猫どうでもよくて、異性に依存はダメ絶対映画。

夜の第三部分(1972年製作の映画)

4.0

ノワールと史実と幻想と。
ヨハネの黙示録を添え、最後はロックに締める。
退廃的な映像は当然に美しく、シラミからチフスのワクチンをつくる、この少しあり得そうな空言が何より素晴らしい。
過去の悲惨な恐怖の
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トラスト・ミー(1990年製作の映画)

4.8

言われてみれば受験、就職、結婚、育児、どんなタームでも人は信頼してと願ってやまず、見方によって美醜どちらにも転ぶ。
今では当たり前となった社会問題も、この時点でかなりピックアップされていた。無論、提起
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ネッド・ライフル(2014年製作の映画)

4.0

リーアムエイケン文句無しにかっこいい。
オーブリープラザを合わせると謎のグルーヴが生まれる。色合いもだけど、こういう憎い組み合わせ見つけるの本当に上手いな。
ハルハ的無神論、最高でした。
ヘンリーフー
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フェイ・グリム(2006年製作の映画)

3.6

ヘンリーフールの閉塞感から、一気に抜けの良い展開へ!
ここまでして台無しにならないのが凄い。
色々遊んでも結局ハルハートリーの心地良い温度になる。
ずっと空腹のエリナレーヴェンソンが最高に可愛かった。
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ヘンリー・フール(1997年製作の映画)

4.0

インターネットが警戒されていた時代。
謎の浮浪者にアドバイスされ、堅物の詩人がバズる。バドワイザー開けまくり。
やはり映像が心地良すぎる。
ハルハートリー作品は生活の安定。
ヘンリーフールトリロジー#
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オアシス(2002年製作の映画)

4.8

改めて人は、孤独との向き合い方が似ている人に惹かれるのだと思った。
憧れの恋人たちも、どうして出逢ったと驚くほど性格が異なる夫婦も、大概そこだけはがっちり合っている。
これは人を驚かしてしまうほどの、
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スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)

3.8

修道士が統合失調症になったら厄介なんだ。"神が我々を常に見ている"
少し前に作ったジョークで、ウディアレンぽくてわりと気に入ってるんですが、そんなのが沢山散りばめられてる映画でした。お得意の現実×幻想
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抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956年製作の映画)

4.2

徹底して倹約の美学。
無駄な演技がないのではなく、そもそも演技という無駄がない。
視覚と聴覚も邪魔し合わない。とてもストイックさを感じる。
小難しいんだろうと積読していたシネマトグラフ覚書を引っ張り出
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