松原慶太さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

街のあかり(2006年製作の映画)

3.9

この映画、ストーリーだけ取り出すと、カウリスマキの中でもいちばん救いがないような話だけど、観たあとにじんわりと伝わってくるものがある。

カウリスマキは社会の底辺みたいな人たちを描きながら、邦画のよう
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Fair Play/フェアプレー(2023年製作の映画)

3.2

NYの金融業界で働く、いっけん理想的なパワーカップルのふたりが、社内での立場の違いからギクシャクし始める話。

会社のキリキリとした緊張感が観ていてつらくなる。言ってみれば、ビジネス・サイコサスペンス
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キートンのセブン・チャンス/キートンの栃麺棒(1925年製作の映画)

3.5

本日中に結婚すれば莫大な遺産を相続できることを知らされた主人公(バスター・キートン)が、街の女の子にかたっぱしからプロポーズするがことごとくフラれる。

正直、前半は退屈。

ただ、後半、数百人の花嫁
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鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

3.6

昭和14(1939)年製作の和風オペレッタ時代劇(オペレッタというのは喜劇ベースのオペラのことを言うらしい)。

なんだそりゃと思うかもしれないが、見始めるとすぐ意味がわかる。そうか...これがかの有
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大河への道(2022年製作の映画)

2.7

千葉県香取市の町おこしの一環として、地元の郷士「伊能忠敬」の大河ドラマを誘致しようとする話。発想がおもしろい。

香取市役所のダメ課長(中井貴一)、空気読めない若手(松山ケンイチ)、切れ物の上司(北川
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ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.1

仕事に失敗した殺し屋(マイケル・ファスビンダー)が自分を追う組織に復讐する話。

徹底してアクションやガンファイトを廃し、リアルにたんたんとファスビンダーの地味〜な手際を見せていく。これ絶対ハリウッド
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

いやはや、山﨑監督の過去作にはいろいろ思う点も多々あるものの、本作単体を評価するならば、これは傑作と言い切っていいのではないだろうか? とにかく王道エンタメを真正面からやり切っているのがすごい。>>続きを読む

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

4.0

ドキュメンタリーってなんだろう。正義ってなんなんだろう。重たいテーマだが、スリリングな展開で、最後まで面白く観れる。

いちばんスリリングだったのは、仲間うちからさえ「青臭い」とか「面倒くさい」と言わ
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バタアシ金魚(1990年製作の映画)

2.9

望月峯太郎は、同世代の漫画家のなかでも、異常なほど絵が上手く、センスもずば抜けていた。しかし、この原作にかんしては、それがすべてで、ストーリーらしいストーリーはほとんどない。

本作はその原作を換骨奪
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ノランムン:韓国シネフィル・ダイアリー(2023年製作の映画)

3.2

'90年代初頭、学生時代にポン・ジュノたちが所属していた、映画サークル「ノランムン」(黄色いドアの意)。そのご映画産業に従事することになった者もいるが、大部分は他の分野へと進んだ。

彼らが語る、ノラ
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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.1

「牯嶺街」「ヤンヤン」同様の群像劇だが、舞台は90年台の台北。

呆れかえるくらいにリアルな恋愛模様と緻密過ぎる脚本。

ただ群像の捌き方は上記2作には及ばない。エドワード・ヤンで初めて眠くなる箇所が
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ラッシュアワー3(2007年製作の映画)

3.5

シリーズ最終作として、真面目にセオリー通りに作っている。舞台はパリにスケールアップ。トライアド(香港マフィア)のラスボスにマックス・フォン・シドー。ジャッキーの幼馴染のライバルとして真田広之。

バデ
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ラッシュアワー2(2001年製作の映画)

3.2

前作の直後から話は始まる。休暇をとって香港に来ていたリー(ジャッキー・チェン)とカーター(クリス・タッカー)だったが、アメリカ領事館爆破事件が起き、その騒動に巻き込まれることになる。

敵役に懐かしの
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ラッシュアワー(1998年製作の映画)

3.8

ひさびさに観たが、バディものとしても、ジャッキー・チェンものとしても、すごくよく出来ている。ハリウッドのメソッドが詰め込まれた、教科書のような作品。

厄介者として捜査から外された、水と油のような二人
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

さいきん邦画のクソ駄作ばかり観ていた(駄作は駄作なりに学ぶところがあると思い)ので、ひさびさに紛れもない傑作に触れた。

古今、映画監督が「映画」そのものを撮った映画はたくさんある。フェリーニ「8 1
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沈黙のパレード(2022年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

全体の骨格はクリスティの何とか急行。しかしアレは閉鎖空間を設定しないと成り立たないので、なんか手ぎわの悪いバタバタ劇を見ている感じになっている。

また、オリジナルな要素として無理などんでん返しをくっ
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ルパン三世(2014年製作の映画)

2.5

ん...思ったほど非道くない...。

とくに小栗旬は、所作とか立ち姿とか、ときどきルパン三世に見える瞬間があった。かなり仕草とか研究したんじゃないのかなー。

いちばん気掛かりだった次元とか五右衛門
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

2.6

コミュ障の予備校教師(成田凌)に、恋愛指南する生徒(清原伽耶)が主人公のラブコメ。

不思議なタイトルで、導入部もいっぷう変わっているのでつい見始めてしまう。

ところが見ていると「相手の恋愛相談に乗
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バーン・アフター・リーディング(2008年製作の映画)

3.0

うーん、コーエン兄弟の中では凡作かなぁ。国家のインテリジェンス機関をおちょくったコメディ。

序盤から中盤にかけ、思いもよらぬ方向に話が転がっていく「らしさ」はちょっと感じたけど。

役者陣たちは嬉々
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さがす(2022年製作の映画)

3.5

片山慎三監督はポン・ジュノのもとで助監督をして修行したらしい。前半は、大阪のドヤ街のなかで展開する韓国ノワールという導入で、なかなか巧みに見せる。

シリアスな佐藤二郎、子役の伊藤蒼、清水尋也のサイコ
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べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

3.6

ドラマパートがなかなか見ているのが気恥ずかしく、何度も挫折しそうになったが、最後まで観てよかった。

アクションにかんしても、それを成り立たせるストーリーにかんしても、新しいアイデアとインスピレーショ
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レンブラントは誰の手に(2019年製作の映画)

3.7

レンブラントを巡るドキュメンタリーなのだが、通常のアートドキュメンタリーとはわけが違う。

原題「マイ・レンブラント」が示すとおり、お家に普通に何枚もレンブラントを所有しているような人々の、雲の上の話
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ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

4.0

ウェス・アンダーソンがNetflixで同時に4本の新作を出した。本作は、ブラックユーモアに満ち奇妙な味わいの作家ロアルド・ダールを原作とした中編。わずか39分だが長編映画のような満足感がある。

スト
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神が描くは曲線で(2022年製作の映画)

3.4

人里離れた精神病棟でおこった奇怪な事件。そこにやってくる私立探偵のアリス・グールド。彼女は事件を捜査するため、パラノイア患者を装い、入院することになっていた...。

この手のミステリーにありがちなパ
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容疑者X(2023年製作の映画)

3.1

東野圭吾「容疑者Xの献身」のインド映画版。なんとこの原作はいままで4回も映画化されています。邦画版、韓国版、中国版、そして今回のインド版。

正直この原作自体が、そんなにリメイク重ねるほどの傑作かなぁ
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神は見返りを求める(2022年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

性格最悪のYouTuberたちの泥沼バトル。

冴えないおじさん(ムロツヨシ)がフトしたきっかけで、底辺YouTuberゆりちゃん(岸井ゆきの)を手伝うようになる。

ゆりちゃんは角度によっては可愛い
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.7

「マルチバースを飛び回り、世界と家族を救え!」←これ日本版の宣伝につけられたキャッチコピーだけど、よくもまあ、この混沌とした物語をひとことでまとめたもんだ。作りは荒いが、画期的な映画だとは思う。

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フレッチ/死体のいる迷路(2022年製作の映画)

3.6

フレッチは、フリーの記者である主人公が、さまざまな事件に巻き込まれるユーモア・ミステリー。グレゴリー・マクドナルドの原作はシリーズで8冊ある。

過去にも、サタデー・ナイト・ライブ出身のコメディ俳優、
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ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

2.9

いわゆる「平成ガメラ」というのを初めて観た。

脚本の伊藤和典氏は、押井守「劇場版パトレイバー」シリーズや「攻殻機動隊」のヒトで、導入部のサスペンスとか、自衛隊が介入するさいのリアリティ描写などが上手
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唐人街探偵 東京 MISSION(2020年製作の映画)

3.3

唐人街探偵(チャイナタウンの探偵)シリーズの第3弾。1作目はバンコクが舞台。2作目はニューヨーク。そして本作は東京が舞台。

ガチャガチャとした演出で子ども向けの映画なのだが、お金かけまくって(制作費
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こころ(1955年製作の映画)

2.6

映画として佳品だとは思うが、原作の映像化ということでは疑問がのこる。

まず言い訳しておくと、僕は市川崑が大好きで、「黒い十人の女」「東京オリンピック」「犬神家の一族」、サントリーオールドのCMなどな
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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(2018年製作の映画)

3.2

漫画(アニメ)の実写化としてお手本のような作品。実写化にさいして、何をするべきで、何をするべきではないのか、そのヒントがいっぱい詰まっているように思う。

その反面、原作ゆえの限界か、よくできてB級も
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Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

3.6

NY郊外ロングアイランドの豪邸に住む若妻ハンター。完璧イケメンの夫と何不自由ない暮らしを送っているように見えて、その内面は空虚だった。

そして、その空虚さを埋めるために、ネジや、釘や、クリップなどの
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あしたの少女(2022年製作の映画)

3.9

映画は二部構成で、まず前半は、ダンス好きのフツーの女子高生ソヒが、学校から実習先としてとあるコールセンターを紹介され、じょじょにそのブラックな実態に気がつき始める...という話。

前半はほぼ事実に基
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TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

3.6

ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの伝記。作品単体としては地味なんだけど、ものすごくクリエイティブ魂が触発される映画だった。

父親が彫刻家、母親は画家という一家に育ったトーベ。画家や記者や哲学者、舞台
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どこまでもいこう(1999年製作の映画)

4.2

郊外の団地で育った少年期がよく描かれている。子どものこともよく分かっているし、団地のこともよく分かっている。

是枝裕和とはまた違う個性。

これさいしょに観たとき邦画にもスゲー才能があらわれたと思っ
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