はぐれさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

はぐれ

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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

4.0

巨匠アピチャッポン・ウィーラセタクンが自身も患われた脳内爆発音症候群をヒントに南米コロンビアで撮影した新作。

彼の作品は西洋の医学や科学の見地とは全く正反対のベクトルで切り込んでくるからタイで撮ろう
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ある詩人(2021年製作の映画)

4.0

「始めに言葉ありき」。タルコフスキー監督作『サクリファイス』のあの有名な"生命の樹"の場面をコピーした貼り絵のアップから始まるの本作。ロシア文学の永遠のテーマである貧しき者の矜持についてわかりやすく語>>続きを読む

クレーン・ランタン(2021年製作の映画)

2.8

アゼルバイジャン版の麦焼酎二階堂のCM。退廃的で美しい油井の風景に登場人物を溶け込ませそこへポエトリーリーディングを被せる。もうまんま二階堂さんじゃないっすか!(笑)ロケ地が大分かアゼルバイジャンかの>>続きを読む

ザ・ドーター(2021年製作の映画)

3.6

子供を授かれなかった中年の夫婦が不良のティーンからお腹の子供を盗み取る話。まるで現代社会の縮図のような物語。10代20代から何もかも搾取し続けて自分たちだけブクブク太っていくという、まるでそれを具現化>>続きを読む

洞窟(2021年製作の映画)

3.9

牛飼いの老人と洞窟探査隊の話。まだテレビが白黒のブラウン管だった時代の出来事を俯瞰のショットを多用して撮影したドキュメンタリー風の再現映画。

638メートルという当時では世界第3位の深さであった未踏
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萌の朱雀(1997年製作の映画)

4.2

画面いっぱいに広がる新緑のごちそう。白飛びするほどの光線のシャワー。なんて吸引力のある画作りなんだろう。海外が求めている日本がそこにはあるし令和の今、日本人が求めている何かがそこにはある気がした。>>続きを読む

トラベラー(1974年製作の映画)

4.1

救いようのない悪ガキというか非行少年のロードムービー。後の名作である「友だちのうちはどこ?」がいかにファンタジーであるかを処女作で詳らかにしている点が何とも皮肉で面白い。悪知恵を働かして他人を騙して法>>続きを読む

象は静かに座っている(2018年製作の映画)

3.9

基本クズしか出てこない絶望的な展開が重なり合っていく4時間。夢も希望もなければ自嘲的な笑いを挟む余地すらない。ただただ閉塞感に押し潰されながら奈落の底へと突き落とされていく。辛いよ。見るのも辛いし、こ>>続きを読む

名もなき生涯(2019年製作の映画)

3.3

心揺さぶるストーリーに明確に伝わってくるテーマ。登場人物にも感情移入出来て鑑賞後の余韻もとっても心地いい。こんなのテレンス・マリックじゃない!笑
こんなわかりやすいのがテレンス・マリックなわけない!
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.3

砂の粒子を全身に浴びるような映像体験。異世界へ旅行をする様な没入感もあれば美術館で極上のインスタレーションに参加している様な体感もある。まさに唯一無二。確実にSF映画というジャンルをアップデートさせた>>続きを読む

π(1997年製作の映画)

3.8

🐜🖥🐜🐜💾💾🐜🐜🐜🔌✨

塚本晋也からの影響を全く隠そうともせず自らのあられもない精神性とフェチズムをさらけ出したダーレン・アロノフスキーのサイケデリックなデビュー作。黎明期のパソコンってなんて魅力的
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デッドマン(1995年製作の映画)

4.0

ジム・ジャームッシュ×ニール・ヤング×ジョニー・デップ。やっぱり好きだわ。詩と暴力とギターの音色。その黄金比が紛れもないジャームッシュの名店の味付け。死への心地の良い逃避行。その死生観が開拓者然として>>続きを読む

シュトロツェクの不思議な旅(1977年製作の映画)

4.3

移民大国アメリカの幻想とその正体。あまりに辛辣なヘルツォークの眼差し。見た目はアメリカンニューシネマなんだけど中身は紛れもないニュージャーマンシネマ。

出所したばかりの男と娼婦と電磁気ボケ老人の3人
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ぼくの伯父さんの休暇(1952年製作の映画)

4.3

名匠ジャック・タチのユロ第一作。大爆笑ではなくクスクスという笑いを誘う絶妙なさじ加減。もう全てが心地いい温度だし程よいのよ♨。賞レースでよくある隙間のない笑いに疲れているとこういうのにホッとする😇>>続きを読む

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!(1993年製作の映画)

3.8

エンタメ色の強くなった『ベルリン・天使の詩』の続編。東西のドイツが統一された直後の当時の空気感が画面からひしひしと伝わってくる。ピーター・フォークがタクシーの運転手から「そこは東だから知らない」と断ら>>続きを読む

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

3.5

以前ストーリー・オブ・フィルムという番組で見た『水俣 患者さんとその世界』というドキュメンタリー映画のある場面が強烈に印象に残っていたためどうしても海外から見た水俣を知りたくて鑑賞したかった作品。>>続きを読む

四月の魚(1986年製作の映画)

3.2

この秋ようやく初DVD化となる幻の作品を日本映画専門チャンネルにて鑑賞。大林宣彦監督が高橋幸宏を主演に迎えて撮った男性アイドル映画って感じでめちゃくちゃ珍味なひと皿。幸宏さんが主演なのでいつもの少女趣>>続きを読む

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)

2.5

シングルマザーの出張奮闘記(行き先:宇宙)

宇宙ものなのにNASAを舞台としていないところだったり、静謐な世界観だったり、坂本龍一の珠玉のスコアだったり魅力的なパーツは揃っているんだけど圧倒的に脚本
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ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(2020年製作の映画)

4.1

黒人スパイの裏切り者ユダとブラックパンサー党の議長フレッド・ハンプトンの物語。キング牧師やマルコムXの諸々の活動や非業の最後は知っていたがブラックパンサー党の歴史には疎かったので新鮮な気持ちで見れた。>>続きを読む

くじらびと(2021年製作の映画)

4.0

火山岩に囲まれ農作物も育たずクジラを獲ることでしか生きていけないインドネシアの島国の人々を追ったドキュメンタリー。年に10頭も獲れれば島民みんなが暮らしていけるという予告編の文句に釣られて観に行ったん>>続きを読む

アナザーラウンド(2020年製作の映画)

4.2

待ちに待ってた酒気帯び映画。いい歳をしたおじさま達のガキんちょの様な無邪気な戯れをひたすらに愛でる2時間。酔いどれながら教壇に立ち、ろれつも回っていないマッツがひたすらにめんこい🤦笑

てか、前作の同
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「エロ事師たち」より 人類学入門(1966年製作の映画)

4.1

今村昌平×野坂昭如×小沢昭一という怪物たちの狂宴。全裸監督がただのバブちゃんに見えてしまうほどの下衆な倫理観とほとばしる生命力にあふれた、エロを生業とする人間達のドラマ。もうひどい!昭和でもコンプラ的>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

3.8

スケボーが上手いことが何よりもステータスだった牧歌的な90年代への賛歌。

理不尽にボコってくる腕力しか取り柄がない兄貴、めっちゃ嫌やわー。

自分は不良だった癖に自分の子供にはそれを許さない母親、い
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ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)

4.0

ロイ・アンダーソン監督作。パーフェクトな構図と揺るがないフィックスのカメラとまるで死に化粧のような癖の強いメイク。この監督の作品を見ていると毎回、黄泉の国にいる死者が見ている夢を見させられているのでは>>続きを読む

ラグタイム(1981年製作の映画)

4.3

『カッコーの巣の上で』と『アマデウス』の間に制作されながらもあまりに早すぎた題材ゆえにアカデミーから完全黙殺された名匠ミロス・フォアマンの隠れた名作。未だにDVDにもBDにもなっていない幻の作品がアマ>>続きを読む

マンハッタン無宿(1968年製作の映画)

2.7

かっこ悪くて弱っちいイーストウッドが見れるある意味レアなやつ(笑)もう脚本がめちゃくちゃでツッコミどころしかない😂名監督ドン・シーゲルとの初タッグ作品がこんなことになっていたなんて知らなかった。

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水の中のつぼみ(2007年製作の映画)

3.3

『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作。

思春期の少女同士の友情と恋愛を描いた物語。シンクロナイズの発表会でひと目惚れした学園のマドンナに猛アタックする主人公の少女。イケメンとイチャイチャしてい
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マーティン・エデン(2019年製作の映画)

4.1

身分違いの恋、フィルムに焼き付けられたナポリの風景、文学への目覚めと渇望、ブルジョアジーへの憧れと失望。
原作はアメリカ文学なんだけど紛れもなく純イタリアンシネマで純文学。

主人公のマーティン・エデ
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ジャズ大名(1986年製作の映画)

4.0

もうハンパねぇーっす。やべーっす。冒頭からニューオリンズのジャズメンに「えげれす、えげれす」ってかっぺ丸出しのアテレコしちゃうイカしたセンスがもうぱねぇーっす!

漂流したブラックジャズメンたちに「黒
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ヘッドライト(1955年製作の映画)

3.9

監督アンリ・ヴェルヌイユ、主演ジャン・ギャバンの古典。しがない妻子持ちのトラック運転手が親子ほど歳の離れたウェイターを妊娠させる話。

辛い、あまりにも辛すぎる。恋愛の甘い時間なんてほんの一瞬しかない
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日本の熱い日々 謀殺・下山事件(1981年製作の映画)

3.8

『海と毒薬』の熊井啓監督作。そして脚本は黒澤組で知られる『野良犬』『兵隊やくざ』の菊島隆三という意外な組み合わせ。

終戦から4年後に起こった国鉄総裁の轢断死体が発見された下山事件を扱ったドキュメンタ
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ヴェルクマイスター・ハーモニー(2000年製作の映画)

4.4

タル・ベーラの監督第2作。ヴェルクマイスターが発明した音階の調律に異議を唱える老音楽家とその彼を世話する青年の話。

タル・ベーラの作品特有の未来的な異国感、はたまた異星感すら感じてしまう強烈な世界観
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厳重に監視された列車(1966年製作の映画)

3.8

童貞鉄道員×ナチスという異色作でチェコ版の『肉弾』といった作品。先入観からか心なしかサントラに佐藤勝節が入ってる感じがしてしまった(笑)

いざという時に意中の相手に尻込みをしてしまい手を出すことが出
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雨のなかの女(1969年製作の映画)

3.4

フランシス・フォード・コッポラ監督作。アステアを主演に迎えた『フィニアンの虹』とあの『ゴッドファーザー』の間に制作された作品。

作風はバリバリのヌーヴェルヴァーグでありアメリカンニューシネマ。当時流
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.2

ポスターやビジュアルから受けていたポップな印象をいい意味で完全に裏切られた。内面はとっても身近で痛いくらいにシリアス。
これは復讐や制裁の話ではなく犯罪を犯しておきながら法を逃れ人生のあがりを決め込ん
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ライトハウス(2019年製作の映画)

3.3

笑っちゃうくらいザA24な作品。しかもスタンダードサイズのモノクロ。冒頭からずっと鳴り響く霧笛の音がとにかく不快で観ている方の精神もやられていく仕組み(笑)片目のカモメに螺旋階段、人魚の彫刻と不安を煽>>続きを読む