黒人のコミュニティを舞台にし、薬物依存やドラッグディーラー、母子関係の機能不全、暴力などを登場させるいわゆるギャングスタっぽい映画かと思いきや、そのようなステレオタイプなイメージを裏切った繊細で美しい映画だった。
LGBTQという今の世相を反映したテーマも織り込むことで、黒人社会を描く映画に皆が抱きやすい固定観念を払拭し、そのアンビバレントさを狙ったのだろうと思う。それが多くの賞を受賞して注目を集めた一因になっているのは確かだと思うが、実際にはそれだけでなく人間というのはその都度関わる人間達によっていかに影響され、変化していくかということを巧みに描いていることもこの映画の質を一段高いものにしていると思う。
自分も1度目に観た時は実はあまりしっくり来なかったのだが、数年経って観返してみてようやくもう一歩踏み込んで理解、あるいは自分なりにこの映画を理解できたと思えた気がする。
母との関係、クラスメイトや親友との関係、慕っていた年長者の友人との関係、それぞれの関係がなんらかの理由で機能不全に陥ったり、また後でその関係をお互いに修復を試みるシークエンスもいくつか登場する。
その修復の仕方がとても優しく儚いので、なんとなく救われた気分になる。
万人が楽しめる映画ではないと思うが、このような作品が世界的な賞をいくつも受賞した事は世界に少なからず意味をもたらしたと思う。
