この男が見た走馬灯を追体験する。
逆回転フィルムで人生のレールを逆走する。20年に及ぶすべてのエピソードに映り込む列車は、乗り合わせた運命というメタファーか。男が"帰りたい"と叫んだあの時まで、記憶>>続きを読む
またしても幸せになれない女を演じる、ミシェル・ウィリアムズ。
私生活でもヒース・レジャーと婚約しながらも、結局破棄となり、後に不慮の事故で彼は旅立ってしまう。本作でも、すべてに息の合うワルツのパート>>続きを読む
家族の中で、自分だけ顔が似ていないのはなぜか。
ドキュメンタリー版「秘密と嘘」かのように、秘められた家族の嘘。女優であり、映画監督でもあるサラ・ポートリーが、亡き母の「秘密と嘘」を求めて、父親、兄弟>>続きを読む
ある少女の失踪事件が島に誘う。
ミステリー映画のようなオープニングで、警官と同時に、観る側もサマーアイル島に誘われ、島民全員が容疑者であり共犯者でもある状況下で、生贄という儀式に向けてストーリーは進>>続きを読む
行き詰まるとマスタベする脚本家。
カウフマン自身の心と欲を表現した、双子の脚本家という秀逸なアダプテーションで、蘭コレクターが題材という退屈な原作は、映画としてにわかに花が咲き始める。
人気要素を>>続きを読む
4ヶ月何も食べずに生き延びる少女。
撮影スタジオを移動するカメラワークで、舞台裏を見せながら本編に流れ込む。そんなトリッキーな演出から始まる物語は、奇跡か虚偽か、信仰か科学か、その真実を暴こうと奮闘>>続きを読む
素人を血みどろの現場に巻き込む、親切過ぎるクムジャさん。
赤いアイシャドウは、親切なクムジャさんから、復讐する女クムジャにキャラ変するトリガーだ。主演のイ・ヨンエ、多彩な色味の赤、クラシック音楽の調>>続きを読む
出たり入ったりする赤子の命は、亡き息子の生きた証。
これは完璧に練り上げられたシナリオのある物語ではなく、断片的に投げ込まれたイニャリトゥ監督の記憶や幻想。それは私事のみならず、母国メキシコと20年>>続きを読む
本作でも私生活でも妻がいなくなるマーロン・ブランド。
フランシス・ベーコンの絵画で始まる、無宗教主義宣言とでも言わんばかりのオープニング。それは、例のシーンでの諸々の疑惑含めた反モラル性であり、そし>>続きを読む
満洲国に担ぎ上げられた悲運の皇帝。
耽美的な雰囲気を感じさせる、ラストエンペラーという言葉の響きと、ベルトルッチの光と影を巧みに操る映像美。ファシズムも共産主義も台頭した時代に飲み込まれた溥儀もまた>>続きを読む
例えば、ハワイの広大な土地を買い占めたザッカーバーグ。
これはサンフランシスコの黒人コミュニティだけの話ではなく、世界中の大都市で起きている。この格差社会では、超富裕層に資本力で居場所さえも奪われる>>続きを読む
ギリシャ悲劇を取り込んだ復讐劇。
15年間監禁された"オ・デス"は、前半で監禁した犯人を探し、後半で監禁された理由を探すが、その核心はあたかも"オイディプス王"のような様相を呈し、真実を探れば探るほ>>続きを読む
ノア・バームバックは低予算の方がいい。
せっかくのアダム・ドライバーとグレタ・ガーウィグ主演というワクワクするキャスティングなのに、予算が多すぎたせいか、ストーリーの軸が余計な枝葉に吸い取られて細く>>続きを読む
純粋さを試されるのは、観る側の心。
何度観ても驚かされるムン・ソリの表情や手の仕草、そして足先の硬直まで、本当に障害があるとしか思えないが、閉じ込められた彼女の願望が解き放たれる刹那、これは演技なん>>続きを読む
ジェシー・プレモンス版「脳内ニューヨーク」
初見で立てた仮説を、二度見の最初30分をかけて検証することになる、やはり難易度高めのカウフマン作品。脳内で繰り広げられる老ジェイクの妄想には、理想と現実、>>続きを読む
愛情から始まった復讐のバタフライエフェクト。
資本主義と復讐の構造はどこか似ていて、資本も憎しみも、結局は誰かから搾取し、誰かに搾取されることで成り立っている。
これは復讐の連鎖ではなく、復讐の階>>続きを読む
続けて2回観ても難解な、重厚で濃厚な哲学作品。
テーマは老いや死だけじゃなく人生そのものであり、その点ではブッツァーティの小説「タタール人の砂漠」に近いものを感じるが、本番を迎えることなく、永遠に繰>>続きを読む
ヴィスコンティ版"華麗なる一族"
がしかし、財閥の権力争いと凋落を、一企業の側面から描くだけでない。ヒトラーが政権を握っていく、ナチス・ドイツという大きな社会のうねりを捉えることで、よりダイナミック>>続きを読む
愛とエロスで騙し合う男と女。
フランス映画のように官能的で濃厚なシーンだけでなく、放送禁止用語も連発しちゃう変態系エロティカであり、3部構成で丁寧に伏線回収して魅せる、極上のサスペンスでもある。>>続きを読む
1967年に描くフェミニズム。
夫では満たされない人妻の性的欲求という、まるでFANZAにありそうなテーマだが、ドヌーヴ主演の映画となると、作品の重力は全く違うものになり、妄想による深層心理や、二重>>続きを読む
悪魔に魂を売った無邪気な少女たち。
実際にニュージーランドで起きた事件に影響を受けた本作。大人と子供の間でもがく14,5歳の少女の危うさを、子供らしい残酷さを孕みながら耽美的に描いていく。危険な悪戯>>続きを読む
死を賭けた"死神"とのチェス対決。
疫病が蔓延し、死神を見る者もいれば、聖母マリアを見る者もいる終末世界。愛を厄介な疫病に、死にゆく娘の目に神なき虚無を見る従者ヨンスは、ベルイマン自身の分身か。>>続きを読む
甘酸っぱい"野いちご"と過去の記憶。
夢と現実、過去と現在、そして孤独と後悔。人生を回顧するロードムービーは、老教授イーサクにベルイマン自身を投影しているのだろう。家族、老い、死といった、逃れられな>>続きを読む
ヴィスコンティ的"遠くの親戚より近くの他人"
バート・ランカスター演じる教授は、ヴィスコンティ自身の分身であり、登場するのは美しかった母親、離婚した妻、作れなかった家族。そこにファシズムや左翼思想と>>続きを読む
他人と同化する人間カメレオン。
主人公の名前「Zelig」を様々なフォントで、多重人格を表現したパッケージが印象的。ユダヤ系であるウッディ・アレン自身が、自己防衛するために取ったであろう生存戦略を、>>続きを読む
シャロン・テート似の女装ポランスキー。
それ以外にも、彼女出演の映画を監修したブルース・リーや、何度も映し出される3人組のポスターなどなど、彼女や事件を連想させるものが散りばめられ、疑心暗鬼に陥る。>>続きを読む
時間から解放された男の人生。
過去、現在、未来という時間軸が、同時に存在する宇宙人は「メッセージ」でも取り扱われた概念だが、その先駆的作品である本作は、より時間軸がランダムに映像化され、特に戦争とい>>続きを読む
浮気相手の妊娠が奥さんにバレて激ギレされる86分間。
ハイウェイを走る車内での薄暗い会話と、背景に流れる眩い光のコントラストに、1つでもミスを犯そうものなら、仕事も家庭もすべてが崩壊する危うい状況の>>続きを読む
成功前提でもスリリングな脱出劇。
積み重ねられていくプロセスのディテールは、慎重に慎重を期す主人公の心理状態の描写のようでもあり、そこに実行を迫る時限装置を組み込むことで、より緊張感を高めていく。>>続きを読む
スリが引き寄せた男と女。
スリで得るのは物質的な富だけでなく、興奮を伴った高揚感もあるはずで、そのスリリングな駆け引きや手慣れたテクニックは、どこか恋愛にも似た、構造的アナロジーを感じさせる。
男>>続きを読む
エクス・マキナとは別角度からの警告。
放射能汚染なのか、遺伝子操作なのか、現在の常識ではありえない生態系が形成される"全滅領域"。そこでは模倣という創造による、新世界が始まろうとしていた。
自己破>>続きを読む
なぜ米ソ首脳は戦争を放棄しないのか。
アナログ感満載のビジュアルをした、2台のスーパー・コンピューターは、手を組み最強AIとして動き出す。それは、世界平和には不要な存在である人類を排除し、コントロー>>続きを読む
巨大昆虫なら虐殺してもいい世界。
ナチス・ドイツのプロパガンダ映画を連想させる作風で、全体主義国家を風刺するSFコメディ。正義という大義名分の下に、地球連邦軍は巨大昆虫の惑星を侵略し、殺戮を繰り返し>>続きを読む
何度でも観たい5時間超えのベルイマン劇場。
ファニーとアレクサンデル、2人の兄妹から見たエクダール家の喜怒哀楽、栄枯盛衰、家族団欒、そしてたまに一家離散。それは人生の痛みを描くベルイマン監督の自叙伝>>続きを読む
デモ行進する労働者"第四階級"が物語る。
黒襟のファシズムと、赤旗の社会主義という対立構造。幼馴染み2人を中心に据えることで、成長の時系列をストーリーに取り込み、空中戦になりがちな政治思想の対立を、>>続きを読む
Googleでもアーカイブできない知の殿堂。
書庫から教育施設へ。本ではなく人が主役。そんな思想を持つニューヨーク公共図書館は、あらゆる人種や社会的弱者を切り捨てない。それを裏側で支え、予算確保と最>>続きを読む