xoさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

社会における小さな個人とその連帯、ゆるやかなつながりを淡々と描いた作品。
ずっと笑顔のまま鑑賞してた気がする。何度も映る「人にやさしく。自分にもやさしく」のポスターが象徴的で、それが映画にも通底してい
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.0

ロバの目に映る人間の営み、流浪の旅を映した88分。
ほとんど全編にわたって意味深長なシーンの連続。深遠な雰囲気に満ちている。物語は無いに等しいというか、少なくとも根幹にあるものは必要最小限でしかなく、
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春画先生(2023年製作の映画)

2.0

「春画先生」の名にふさわしい型通りのものにしろとは思わないけど、何もかも中途半端、歪な印象が強い。

物語の中心にあるのは北香那の内野聖陽への恋情なわけだけど、春画への興味、先生への敬意、恋愛感情とが
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コカイン・ベア(2023年製作の映画)

3.0

思いのほか真っ当なスラッシャー映画だった。主要登場人物だと思っていた人がわりと容赦なく殺される。一部にコメディのノリもあるものの、あんまりゲラゲラ笑えるもんじゃあないし、残酷さの方が先に立つ感じ。>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

3.3

コメディ調でありながら、主人公夫婦が世間ずれしていて頭が良くないがゆえ間違った選択を続けることの哀愁が印象的。時代の切迫度合いが違うため、当時は牧歌的に捉えられたと思われるところも、全くもって笑えなか>>続きを読む

Renaissance: A Film by Beyoncé(2023年製作の映画)

4.0

ひたすら強くて美しくて優しくて正しいビヨンセに圧倒させられる。
超絶エンターテインメントでありながらアートとしてもチャレンジング。音楽的、文化的な遺産への敬意も込めて。
それが金や物という以上に、もの
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ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

3.8

ジャームッシュ作品の中でいちばん好きかも。明らかにプロットというよりディテールを愛でるタイプの映画。どのシーンもいちいちユニークで楽しい。はんだごてで銃を作っているところを妙に艶めかしく撮るところなん>>続きを読む

ヒート(1995年製作の映画)

4.2

何度見ても面白いタイプの映画。
じりじりとした一挙手一投足の攻防、張り詰めた緊張感、リアリスティックな描写の数々にひたすら引き込まれる。こんだけ長いのに、無駄なカットがない(無駄なシーケンスはあるかも
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リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.0

すごく小さな世界の話、ユーモアも交えた楽観的なムード、自由なのに覆う閉塞感。ショーン・ベイカーの諸作や、後半は「WANDA」なんかも想起。

序盤は日常のなんでもないちょっとした瞬間を集めたような、散
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過去のない男(2002年製作の映画)

3.0

他作よりもシュールというか、妙なしっくりこなさが終始持続。物語展開にしてもファンタジーのような、寓話のような印象。実際の生活上の苦労とか、泥臭い感じは「浮き雲」より控えめ。

記憶をなくした主人公の真
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街のあかり(2006年製作の映画)

3.8

画面、演出含めたムードという意味で、"敗者三部作"の中で最も好み。無声映画のような佇まい。セリフではなく役者の表情や仕草、演出で見せる作りで、豊かな詩情が溢れている。画面を構成する色彩の美しさにも目を>>続きを読む

ハワイ・マレー沖海戦(1942年製作の映画)

2.8

「海軍省」企画による開戦一周年記念映画。生々しさ、禍々しさがすごい。戦時下のドキュメンタリー映像にしか見えなかったりする。

現代において、軍隊や軍人、軍国主義というものを考えるための最高の教材だと思
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.5

鑑賞中以上に終わってからの余韻や味わい深さが印象的な作品。甘さを一切残さず、冷徹な視点から、人間の残酷さや日本/日本人の犯した罪と現実とを真っ向から描写。それでいて最終的には、私も鬼太郎のようにならな>>続きを読む

緋色の街/スカーレット・ストリート(1945年製作の映画)

3.8

脚本がとても良い。序盤は寓話のような展開、後半にいくに従って、予想外な方向に物語がどんどん転がり続ける。主人公と、彼が思いを寄せる若い女性&彼氏の両側の視点から物語が展開。序盤、中盤、終盤と主導権が入>>続きを読む

飾窓の女(1944年製作の映画)

3.7

フィルム・ノワールの諸作の中でも特に万人に勧められる面白さがあると思う。
主人公は中年男性。私利私欲というよりは、不慮の事故に近い形で犯罪者になってしまい、殺人を隠蔽したいと思い行動してしまうところか
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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.0

ホラーとしての盛り上げというよりは、心理サスペンスの向きが強い。 降霊遊びの設定や描写にしろ、物語にしろあまり説明をしておらず、抽象的なレベルにとどめているのが功を奏している。依存症、自傷行為、中毒、>>続きを読む

サンクスギビング(2023年製作の映画)

3.5

楽しいスラッシャー映画。70点くらい期待してたら80点を返してくれたような感じ。
ゴア描写多数ながら、ねっとりというよりサクッと見せているためグロさはあまり感じない。
本作一番の魅力は、各人の殺され方
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異端の純愛(2023年製作の映画)

2.8

井口監督は純粋な人なんだろうなと思う。意識的に蓋をするか無意識的に切り捨てるかはともかく、大半の人が大人になるにつれて失っていく感覚を大事にしている。「変態」の言葉からも許容されない、異端の感覚。>>続きを読む

驚異の大日本帝国/汝の敵日本を知れ(1945年製作の映画)

4.0

めちゃくちゃ面白い。太平洋戦争を背景にしたアメリカ側の「日本人論」。プロパガンダ映画とはいえ、全体的に視点はかなり冷静だし、正鵠を射ていると感じるところが多い。ところどころ誇張や単純化されすぎなところ>>続きを読む

ミッドウェイ海戦(1942年製作の映画)

2.5

映画というより記録映像。物語はなく、断片的なシーンで構成された18分。
実際の爆撃シーン、病院、兵士の表情、追悼式の様子等がダイジェスト的に流れる。

兵士として駆り出されるのはあくまでも普通の若者で
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真珠湾攻撃(1943年製作の映画)

3.5

日本人に親和的な"アンクル・サム"と、懐疑的な視点をもつ”ミスターC”との会話、つまりアメリカ側による自問自答によって話は展開されていく。プロパガンダ映画と言っても、ことのほか視点は冷静で地に足がつい>>続きを読む

ゴーストワールド(2001年製作の映画)

3.5

"ふつう"にはなれなかった若者を主役に、コメディ調で青春の影の側面をひたすら描いた作品。苦々しい青春ドラマとして主人公と同じ目線で楽しめつつも、各描写には常に批評的な視点が貫かれていて、社会的な観点か>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

「こんなふうに生きていけたなら」のコピーはまさにそうで、朝、玄関を出て見上げた空が美しければ「今日も良い日だ」と人生を肯定できるような、清廉な心、精神的な豊かさを持つことを讃えた作品。どんな人工甘味料>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

3.7

全編に渡って得も言われぬ緊張感がある。
計算された画面作り、ドライなムード、台詞の面白さ。それが終始持続するため、大したことは何も起きていなくたって、物語に引き込まれてしまう。

題材であるカード・カ
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顔のない眼(1959年製作の映画)

2.8

顔面移植によって両親が娘を生き長らえさせようとする物語は、寓話のようで面白い。そのユニークさには引き込まれるものの、時間経過とともに納得できなさも募っていく。

首にナイフが刺さっていてもなお喋ってい
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男たちの挽歌(1986年製作の映画)

3.3

ガンアクションの真新しさに注目がいくものの、物語のもつ普遍的な出来の良さや強度にこそ惹かれる作品。テンポ良くどんどん展開していってもくれる。
設定がうまい。メインキャラクターは3人だけ、わかりやすさし
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ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

1.6

観念的、詩的な言葉がてんこ盛りであるが、結局のところ、根っこにある話自体は単純でわりと俗っぽい、卑近な欲望だったりして、底が浅いと感じてしまった。作品を通してのメッセージは単純明快なわけで、簡単なこと>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

2.3

「プロミシング・ヤング・ウーマン」に通ずる、人間に対する冷徹でメタな視点に引き込まれる。マッチョであることへの憧れ、同調圧力とそれへの過剰適応、背景にある孤独や承認欲求、ルサンチマン。純粋な恋慕と憎し>>続きを読む

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001年製作の映画)

3.5

メッセージ性とエンタメとしての楽しさを高いレベルで両立させたゴジラだと思う。セリフで説明してくれてわかりやすいし、たくさん怪獣が出てくるし、破壊シーン多数だし、ドラマの強度もそれなりにある。

日本の
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私がやりました(2023年製作の映画)

2.0

ウェルメイドな小品。10年前でも10年後でも通用しそうな喜劇。
若く美しい女性主人公二人が置かれた逆境を逆手に取り、たくましく行動し続ける。登場人物というとポスタービジュアルに映っている人くらいしか出
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ゴジラ(1954年製作の映画)

3.8

この時代にこのリアリティ、当時の文化的なインパクトが相当大きかったであろうことは想像に難くない。
破壊に次ぐ破壊、それは単なる恐怖や絶望というだけじゃない、得も言われぬ快楽をもたらすものでもある、とい
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春画と日本人(2018年製作の映画)

3.5

「春の画 SHUNGA」に触発され、DVDを購入し鑑賞。後追いで、同作が本作と内容的に重複しているところが多いことがわかり、「春の画」は本作のいわば”普及版”みたいな位置づけとして捉えられると感じた。>>続きを読む

シンデレラ(2015年製作の映画)

2.5

衣装や美術は絢爛豪華ながら、ひたすら明るく影のない画面作りによって、それがそこまで魅力的に見えていない印象。ところどころCGっぽさが前景化していて、キッチュな、ペラっとした作り物感が強い。

物語は古
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

つまらないことしかない日常、ラジオをつけると世界はもっとどうしようもない。そうしたなか、ささやかな一筋の光となるほのかな恋情。お金ないのに誰かのために買う花束やワイン。そのかけがえのなさ。当たり前のこ>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.2

まずもって映画としての出来がすごく良い。画的な派手さはなくともスリルをたたえさせる演出がうまい。映画的な瞬間がいくつもある。カーテン越しに覗き見ること、同じ場面やモチーフの反復による意味の反転、音によ>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

2.0

ギャスパー・ノエの諸作にある切迫した緊張感、張り詰めた空気が感じられなかった。
テーマからして表面的なショックバリューみたいなものは期待していなかったものの、かといって内的に身につまされるものも希薄だ
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