アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 23ページ目

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

4.0

一回目の鑑賞でよく分からず、
解説を読んだ後に二回目を鑑賞して
様々な気付きがあった。

男が罪を犯して徐々に破滅していくシンプルな話の中に色んな面白さが詰まってる。

写してるだけで画になるパリの街
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ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)

4.0

悪い男×幼い娘のバディものは面白くなるに決まってると個人的に思ってる。

二人の関係は、本当の親子のようにも、年の差のある友人にも、ときにはボニーとクライドにも見えてくる。犯罪行為で繋がるこの不思議な
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メメント(2000年製作の映画)

4.2

伏線回収のカタルシスをこれでもかと体感できる作品だった。
もう一度観たいと思わせる仕掛けが満載。

時系列を逆行していくという構成上、一つ回収するとまた次の伏線が産まれる展開であり、難解であるのに観て
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ファーザー(2020年製作の映画)

4.7

とても良い意味で予告詐欺。

観客が目にしている人や場所、時間を混乱させる演出を、SF的なタイムループやドラッグによるサイケデリックな表現でもなく、認知症という病を通して観せるのが画期的だと思った。
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何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)

4.0

承認欲求にマウンティングとアルコールが加わるとロクなことにならないと分かる作品。

昔の栄光を忘れられない女優というと「サンセット大通り」を彷彿とさせるけど、こちらはアル中の要素が入っていてタチが悪い
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生きものの記録(1955年製作の映画)

4.2

行き過ぎた不安と心配に飲み込まれてしまった老人と、巻き込まれる周囲の人々を描く。
水爆の恐ろしさを直接的な描写ではなく、「水爆が恐すぎて正気でなくなる人」を見せることで伝えるという秀逸な作品だと思う。
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お茶漬の味(1952年製作の映画)

4.2

質素な生活を好む旦那さんと、贅沢で我が道を往く奥さんの生活を通して、現代の人でも共感できそうな「結婚観」が生々しく描かれている。

夫婦がお互いにちょっとした嘘をついていて、絶妙な距離感をお互いに分か
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ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000年製作の映画)

4.5

鑑賞後に世界が少しだけ嫌になる映画。

辛辣で不条理な世の中で、息子への愛情の為だけに生きるセルマが健気で強い。そんな弱い立場でも必死に生きている人が悲劇に襲われるのは、誰が観たって非常に切れ味があっ
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チャイナタウン(1974年製作の映画)

3.8

王道なサスペンスだけど、秀逸すぎるジャジーな音楽で一気にハードボイルドで引き込まれる雰囲気のある作品になってる。

推理モノのハラハラする展開の先に、男女の歪んだ愛情を孕んだ事実も隠れている。それも結
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ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

非常に詩的な台詞がずっと続くので、映画というより映像付きの純文学を読んでいるような感覚になり、普通の物語を見るよりも全然違う種類の筋肉を使う作品だった。

人の心の声が聞こえる描写は、誰しも声に出さな
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ミナリ(2020年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

どこにでも起きそうな家族あるあるがスローで叙事的に描かれてる。

アメリカンドリームを叶えて家族に良い顔を見せたい夫と、安定した生活を送って家庭を守りたい妻。仕事か家族かで揉めるのはどこの国でもあるみ
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サンセット大通り(1950年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

過去の栄光を捨てられずに、当時のテンションで自分を盲信し続けている人、いるよね‥。

個人的にはハリウッドの光と闇を描いた作品というよりも、忘れ去られて記憶の底から掘り起こさないと認知されないくらい落
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.5

ゴリゴリの社会派かと思っていたけど、1人の真っ直ぐ過ぎる男を巡る人情映画でもあった。
でも今の時代を「真っ直ぐ生きる」ことは難しすぎる。

生きづらさを抱えて社会で生きていくことは、我慢をして生きてい
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

5.0

狂気は普通から生まれる。

大体の媒体でトラヴィスというサイコパスが事件を起こす映画、のように紹介されている印象ですが、自分はそうは思わなかった。

トラヴィスはどこにでもいるし、
トラヴィスになる奴
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赤ひげ(1965年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

人道主義の最高到達地。

終盤、自殺志願者の「なぜ自分たちを助けるのか?」という問いに赤ひげは答えなかったが、この答えこそが作品が一番伝えたいテーマかと。

暴力を受けている娘を引き取る、拒絶されても
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(1985年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

思惑を叶えるために武力を行使すれば、その理由の善し悪しに関係なくいずれ破滅を招く。黒澤明監督のそんな遺言を聞いているような作品だった。

隠居する父の面倒を誰がみるのかという、現代でもありそうな兄弟の
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ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

3.8

薄口でヘルシーな映画(褒め言葉)。

何でもない日々の何でもない会話劇は、全員ボケで全員ツッコミのシュールなコントを観ているようだった。

登場人物たちは無駄な会話ばかりしているが、フロリダのシーンと
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お早よう(1959年製作の映画)

4.0

和やかな喜劇かと思いきや中々に深いぞこれは‥。

兄弟が無駄だと言い張る大人たちの挨拶。
ある種この視点は間違いではないけど、
「挨拶」=「言葉」を交わすことは、人間社会で生きていくことを意味する。そ
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どん底(1957年製作の映画)

4.2

ブラックユーモアだと思った。

この世の地獄の果てみたいな場所で勝手気ままに生きている人々の挙動や言動を見せつけられ、冒頭10分くらいで「あぁ、この人達はもうダメなんだな」と刷り込まれる。

みんな本
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ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)

4.5

メンフィスのとある一夜で起きた出来事を3つの視点で描いたお話。

それぞれのお話は他愛のない会話劇が中心だけど、関連のある要素が何気なく挿入されていて、その箇所に気付くと「あ、今の!」と脳内で結びつい
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ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

都市開発で変貌していく故郷への愛を捨てきれずに、かつて祖父が建てたとされる家を取り戻そうとする男のお話。

主人公は周囲で嫌なことが沢山起きるのに、サンフランシスコから離れようとしない。その姿から家族
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野良犬(1949年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

今日ある刑事モノの原型ともいえる作品。

刑事のピストルが盗まれる事件から、次々に新たな事件に連鎖していく。そして事件を通して、強盗でもしなくては生きていけない戦後の実状が描かれている。

「世の中は
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素晴らしき日曜日(1947年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

35円しかないカップルが日曜日にデートするだけの話。しかし、戦後日本の貧富の差や、貧困に嘆く庶民の辛い現実などが描かれていて、観ているのが苦しいシーンもあった。

終盤、第四の壁を超えてこちら側に懇願
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静かなる決闘(1949年製作の映画)

4.2

戦闘シーン無しで戦争の愚かさ伝える系の映画。

「あいつはただ自分より不幸な人間の側で希望を取り戻そうとしてるだけですよ」
道徳と欲望に揺れて、それでも医師としての役割を全うしようとする先生には希望が
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イレイザーヘッド(1976年製作の映画)

3.8

風邪引いたときに見るタイプの夢。

生理的嫌悪感で終始ぶん殴られ続けてるのに妙な陶酔感もあって何故か入り込んでしまってる自分もいる‥。それが一番怖い。

しばらくチキンは喰いたくない。

悪い奴ほどよく眠る(1960年製作の映画)

4.2

人間って醜悪だなぁ‥。
権力って一度持ってしまうと自分より裁量を持つ人に飼い慣らされないと持ち続けられない。
権力を失うことになる前の人間の演出がとても醜かった。

ずっと小難しい話なのかと思いきや意
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ナイトクローラー(2014年製作の映画)

3.8

クソ男が倫理観無視して逆転していくお話。
倫理観揺さぶられる。

冷静に観ると割とツッコミどころ満載なんだけど、ジェイク・ギレンホールの演技が気持ち悪すぎて(褒め言葉)画面かじりついて観てられる。

ストレイト・ストーリー(1999年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

爺さんが芝刈機で道路走ってるだけの映像がどうしてこんな素敵なのだろう‥。
恐らく今まで観たロードムービーの中で最も遅い時速。

デヴィットリンチってこんな叙情的な映画も撮ってたんだ‥。
草木のざわめき
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