アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 20ページ目

空白(2021年製作の映画)

3.8

冒頭のクライマックス級の悲劇で心拍数を底上げされて、そこに数え切れない程の辛気が上乗せされて最後まで緊張感が続く。
疲れる。。

事件を期にそれぞれが外に出してない弱みがどんどん露呈していく訳だけど、
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アトランティックス(2019年製作の映画)

3.8

これも事前情報を入れずに観て正解の映画だった。

貧困層と富裕層の報われない恋愛模様の話なのかなと思ってると、唐突に想像の斜め上の展開に向かっていったのでどう転ぶのか分からなかった。
でもある種アフリ
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PASSING -白い黒人-(2021年製作の映画)

3.6

久々に再会した友人の人種が変わってたら普通に困惑するだろうな。

とても文学的な描写で観るのに集中力を要する。
映像が白黒なので、より一層に人物の肌の色へ目をやってしまうのは皮肉か。

アイリーンがク
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ロスト・ドーター(2021年製作の映画)

4.2

これは前情報を入れずに鑑賞して正解だった。
説明が極端に排除されていて、思考停止で観ることを許さないタイプの映画だけど、お話が進んでいくとその着眼点の鋭さに気付いて目が離せなくなる。

昨今のポリコネ
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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

3.8

なんかキューブリックの「狂言」にまんまとしてやられた感じがする。

これは‥作品自体が倦怠期を迎えた夫婦の性欲の向かう先を示すメタファーなのか?
だとしたら監督の結婚観って歪んでいるようで意外と誠実だ
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岬の兄妹(2018年製作の映画)

4.7

今村昌平作品ばりに、誰しもが不謹慎だから口にしないことを無理やり目に焼き付けさせられるような映画だけど、個人的にはモラリティを説くお話の皮を被ったラブストーリーだと思ってる。

「お前は人間じゃない!
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泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)

3.7

全ての要素がラストシーンの為に存在しているような映画だなと思った。
エネルギーの爆発のさせ方が絶対に間違っているのに物凄い切れ味と秀逸さ。

自分が堕ちていくきっかけになったナマハゲ様になることを、「
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BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

3.8

報われる見込みがないことを「生き様」で続けることの純真さと同時に残酷さみたいなものを感じる。

スポーツが題材作品のお約束展開の中にずっと暗雲が漂っていて、綺麗事や青春臭さで誤魔化していない感じが深い
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タイトル、拒絶(2019年製作の映画)

3.6

物凄い生命力なのに死の香りがする。
あんな「痛み」を内包してる笑顔を見たこと無い‥。

男女の価値観やモラリティを訴えてくるというよりも、抱え込んでるものとの付き合い方を色んな視点で見せてくるような作
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

4.0

原作が好きだったのだけど映像になると演出も相まって、より突き放した孤独感があって歪だ。

松岡茉優さんをヨシカ役に起用したのは正解だと思った。
いかにも綿矢りさ作品に登場しそうな、世界を斜に構えて見聞
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街の上で(2019年製作の映画)

4.0

日本人にしか伝わらなさそうな映画だなぁと思った。
それは風景の生活感や会話の機微な間もあるけれど、始めと終わりで結局プラマイ0なところもより一層そう感じさせられる。

日常の中に非日常がたまに紛れ込ん
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ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007年製作の映画)

4.0

めちゃくちゃ楽しい。
何かすごい頭の良い人がすごい頭使ってバカやってる感じ。

拾いきれないくらい至るところに伏線を散布して後で一気に回収したり、爆速のテンポでジャンル横断したり、バイオレンス描写がギ
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.5

音楽は言葉通じなくても伝わるとはよく言うけど、今作は音楽を「音がなくても伝わる」ところまで到達させたと思う。

観てるときルビーにとって「歌うこと」はどんな意味を持つのかを考えてた。
序盤は少なくとも
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.2

「結婚が幸せの全てではない」って言葉を放った直後に感じるあのどうしようもない寂しさを、まさか古典作品からぶつけられるとは思わなかった。

原作のテーマに、性別で人生設計を決められてしまう世の中への風刺
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

3.8

名声を得てからが不穏。
さながらマクベス。

なぜ事件が起きてしまったか、のサスペンス要素は予測がつく上に割とあっさりしているのだけど、それよりも名声の争奪戦の部分が面白かった。

みんなグッチが持っ
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フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

4.2

序盤30分で一生分の悪口聴いた気がする。
暴言のワードセンス良すぎない?

「悲劇」と「喜劇」のギリギリのラインをずっと攻められてる感じがするというか‥。
兵たちの教官譲りの口悪い会話とか、あり得ない
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キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)

4.2

伝記作品でおおよその結末を知ってるのに、映像と演技の迫力で純粋に没入してしまった。
海上での攻防も壮絶過ぎる。

トムハンクスと海賊役の人たちは、最初の船に乗り込んでくるシーンで初顔合わせだったらしく
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タルーラ 彼女たちの事情(2016年製作の映画)

3.8

加害者も被害者も、事件が無かったら母性を知れなかったと思うと悲しい。
ただ、事件をきっかけにして副題にある「彼女たちの事情」が露呈していって、終盤にはみんな顔付きが晴れやかに変わっていくのが何よりの希
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イカとクジラ(2005年製作の映画)

4.0

シュールでかなり際どいホームドラマで好みだった。
みんな尖ってて良い。

全員何かしら問題のある領域を持っていて、それぞれの出来事が混じり合っていく群像劇みたいな展開。

兄は父親に影響されて芸術嗜好
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エル プラネタ(2021年製作の映画)

4.0

まずポスターをこのシーンに選定したセンスに拍手。
マイクミルズやノアバームバックの映画に近いようなシュールさもあった。

でもお洒落アート映画かと思いきや、貧困層の現実と虚構がテーマで展開はキツめ。
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(1963年製作の映画)

4.2

鳥が襲ってくる映像、だけでこんなにスリリングなエンタメになるのは流石としか言いようがない。
集合体恐怖症にはキツい映像だろうなぁ。
襲撃シーンのワチャワチャも「どうやって撮ってんの?」となる迫力がある
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めまい(1958年製作の映画)

3.8

初見。
思ってたよりもラブロマンスだったし精神性強めだった。

序盤から「ん?」となる瞬間はあるのだけれど、ミステリーとラブストーリーを横断しつつ、高所恐怖症との戦いも要素として入ってきて展開が読めな
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サイコ(1960年製作の映画)

4.5

「あのBGM」で精神的嫌悪感を催さない人はきっといないと思う。(いるとしたらそれこそサイコパス)

あきらかに娯楽を趣旨としたホラーであるんだけど、恐怖のバリエーションがこれでもかと豊富で、犯罪がバレ
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自転車泥棒(1948年製作の映画)

3.9

人の道徳観を欠損させるのに貧乏は十分すぎる要因だと分かる作品です。
しかも苦境であればある程、嫌な部分が露呈してくる悪循環。

ひたすら虐げられる系の映画な訳だけど、虐げてる側も皆同じく困窮しているの
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若草物語(1949年製作の映画)

3.6

グレタ・ガーウィグ版を観たくて予習。

アメリカ娘達がキャッキャしてる映画だと勝手に思ってたらなかなかに悲哀的な展開なのね。

富への強い渇望だとか古い結婚感への抵抗だとかは現代にも通じそう。

ソ〜
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愛がなんだ(2018年製作の映画)

4.3

この手の「生活感のある映画」の類では一番刺さったかもしれない。

きっと、当たり前に幸福ルートに進める人や、港区のクラブでパーティしてる人たちには、この「不健全な心地よさ」の正体は伝わらないでしょう。
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.5

夜道・トンネル・雪原を疾走する赤いサーブが映えまくる。

家福さんが奥さんの行動や考えていた事の真意を突き詰めていくというよりも、奥さんが存在したときの自分と、今の自分の両方を見つめ直して内面と向き合
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.0

引き寄せられたり突き放されたり観てて情緒が忙しい作品。

最低な主人公に引っ張られがちだけど、シンプルに会話が素敵だった。

濱口竜介監督がインタビューで「語り」の有効性を大事にしてると仰ってて、なる
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麦秋(1951年製作の映画)

4.3

未婚者をグサグサ刺してくるなぁ。
適齢期を過ぎた未婚者にとって、孤独や寂しさよりも周囲からの目線やプレッシャーが一番辛く感じたりするんですよね。

過度な節介や偏見で当人がいないところで盛り上がったり
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浮雲(1955年製作の映画)

3.8

だらしがない男とメンヘラ女、
絶対に別れたほうが良いのにお互いに忘れられなくて引きずってる男女。
こういうカップル現代にもゾロゾロいるはず。
戦後数年の話だよねこれ?

終わりになったと思いきや、互い
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めし(1951年製作の映画)

4.2

原節子さんの表情はもう純文学です。
「えぇ、まぁ‥」だけでこんなに叙情的。

幸福を感じるはずの存在が、日常の積み重ねに摩耗されて生活に当たり前にあるものとして形骸化されてしまうのって、きっといつの時
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お嬢さん(2016年製作の映画)

4.0

まず邦題が秀逸すぎません?

自分勝手な男たちの抑圧と戦う、っていうテーマとしては汎用なポリコネ映画になりがちなものを、女性側も決して善人とは呼べないような描き方をされてるもんだから一筋縄ではいかなか
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ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)

4.0

人が普段、いかに他人とコミュニケーションを取るときに、見た目とそこから想起されるイメージに依存しているかが分かる。
ネット全盛期であったりコロナ渦で対面が減ったりしても、その人と行った場所や感触なんか
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母なる証明(2009年製作の映画)

4.5

パラサイト以外のポン・ジュノ作品を初めて観賞。
この監督、こちらが目を背けたくなる事と起きて欲しくない事を起こす天才だと思った。
パラサイトで見られたような、容赦ない現実の突きつけとシュールなユーモア
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音楽(2019年製作の映画)

4.2

CV.坂本慎太郎って情報だけでめちゃくちゃ笑うのに、細か過ぎるプログレネタとか異様にエモい演奏シーンの作画とか、こういうシュールなボケを大人たちが本気丸出しで表現してるやつ大好きだ。

あのフェスシー
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