アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 19ページ目

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

4.2

圧迫感が他のサスペンスとは段違い。
楽しい場面はほとんど無くて、あらゆる要因で生理的嫌悪感を与えられる。
ミスリードも鮮やかで、前情報無しで鑑賞したのだけれど、何度か完全に「してやられた」。

死体・
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猫は逃げた(2021年製作の映画)

4.0

夫婦の行く末を見つめたり繋ぎ止めたりする妖精のようなカンタ。
カンタの存在が男女関係のメタファーにもなってるんだね。

繋がりそうになったり離れそうになったり夫婦のターニングポイントにはカンタの存在が
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

3.9

カジュアルなラブコメだけど要所でグサグサ刺してきてハッとさせられる。

「普通」に挑戦をしていく中で、逆に世の中の「普通」が内包してる間違いや倫理観に牙を剥かれて、それでも「普通」の持つ良い面と悪い面
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南瓜とマヨネーズ(2017年製作の映画)

3.7

原作未読。
ダメな奴らばかりで共感を呼ばせない突き放したような話だけど、痛々しさと同時に細やかな優しさも感じてしまうんだよな。

絶対やめたほうがいいのにクズ男ばかりに惹かれてしまう女性を見たときの「
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.0

暴走する軍事国家の混沌として正気を失った世界の中で疑惑や嫉妬が非情に作用していて、反戦作品としてだけでなくサスペンスとしても楽しめた。

同時に、どの要素も無駄なものが無くて、結末も表面上ではなくそこ
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真実(2019年製作の映画)

3.7

是枝監督が描く「微妙な関係の家族」は、舞台が日本からフランスに変わっても卓越した雰囲気があって根底にあるものに変わりはないなと思う。

ただし、監督特有の社会性のあるメッセージとか家族関係のエグみとか
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

4.0

パンデミックで記憶喪失者が続出してる世界なのに、どことなくユルくてユーモアに溢れて、悲壮感はない。

というかこのちょいイカツめの中年男性が子供用自転車で転んだり、飛び込みプールでビビりまくったり、り
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シャッター アイランド(2009年製作の映画)

3.8

謎が溶ける前はミステリー。
溶けた後は真実を知った主人公がどうなるかのスリラー。

変態映画を観た後とかに丁度いい、適度な脳味噌の稼働率で楽しめた。

見返すと序盤からかなりの伏線が散りばめられてたん
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クラッシュ(1996年製作の映画)

3.7

ジュリア・デュクルノー監督が死ぬほど影響受けた監督ということで気になってた変態映画。

確実に稀有な性癖の文字通りぶつけ合いで観てる方が感情移入が出来る隙間は皆無なのだけれど、珍しい趣味の同志が集まる
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消えない罪(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

贖罪に他人の悪意がひたすらぶつけられて、いつ悲劇が爆発するか分からない緊張感のあるサスペンスとして楽しめた。
クライマックスへの無理矢理感を許せるかどうかで好みが分かれるかと。

個人的に、「罪を犯し
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17歳のカルテ(1999年製作の映画)

4.0

「カッコーの巣の上で」よろしく、世間的な「普通」から逸脱した人達への世の中の辛辣さとの戦いではあるけど、こちらは患者達が自分自身とも向き合っていく要素が強かった。

個人的には、主人公が自分のマイノリ
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スカーフェイス(1983年製作の映画)

4.0

のし上がったチンピラが調子こいて自滅していく170分、だけなのに面白い。

序盤のモーテルでの一件で「これは凄まじい血生臭い描写が来るぞ‥」と身構えていたら、意外とシュールな場面が多かった。

タラン
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マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(2017年製作の映画)

4.0

この監督が描く家族はどこかぶっ飛んでいて関係も複雑なのに、会話も行動も何となくゆるくて馬鹿馬鹿しい雰囲気を纏っているから、重すぎず軽すぎずに観れるから好きだ。

この手の親族たちが一堂に会してワチャワ
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.6

ジェイコブ・トレンブレイ君がやばすぎる。
理不尽な状況への悲痛を叫ばせたら抜群だね。

ミステリー映画というよりも人生哲学の側面が強かった。
老人との厨房での会話が深い。

ジョンとルパートはどことな
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ドリームプラン(2021年製作の映画)

3.8

普通に良かったです。
娘たちのサクセスストーリーだと思ってたら、パパの人間的な成長の側面が強いのね。

虐げられてきた負のエネルギーの矛先がテニスに向いてたからジョーカーにならずに済んだと思うと良い話
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しあわせの隠れ場所(2009年製作の映画)

3.7

完全無垢なお話ではあるけれど、貧困層の子供を受け入れるために富裕層がしなくてはいけない覚悟みたいなものがちゃんと描かれてたのが良かったかな。

持つ者が持たざる者を助けて、それが100%善意からの行い
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.8

ド直球の愛憎劇にTHE・大作のミュージカルを乗せて力技でボコボコに感動させられる類の作品。

けれど、社会の「分断」がより近しいものになった現代だからこそ刺さるものでもある。

オリジナル版に触れてい
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別離(2011年製作の映画)

4.5

邦題が秀逸。

離婚、介護、流産、裁判、って要素が散乱してるように見えて、実は全てが意味のある事柄で物語が進むと繋がりが見えてくる展開は思わず唸る。
しかも登場人物の誰かが嘘ついてるせいで、罪の照準が
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ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)

4.2

どんなにシリアスな展開だったり痛々しい映像であっても、馬鹿みたいに無茶苦茶やって偏差値0にしてくれるからタランティーノは大好きだ。

黒人奴隷をモチーフしているから様々なメッセージを孕んでいるんだろう
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生きちゃった(2020年製作の映画)

4.0

どうすれば良かったのかを考えてしまうな。

数えきれないくらい悲劇が上塗りされて、それでもそこに対しての救いは無くて、でも救いが無いことに向き合うことがゴールになってる作品なのかなと。

なので大逆転
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愛なのに(2021年製作の映画)

4.0

こういう「愛なんだよ悪いかよ」みたいな貞操観念のグラグラさにある種開き直るようなテーマって、全体的にメンヘラ味強めになりがちだと思うのだけど、会話劇がシュールなコントを見せられてるようなゆるさで、良い>>続きを読む

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)

3.8

誰でも泣ける王道のプロットだとしても正攻法で感動させられてしまうのは、演者さんたちの熱演と、どことなくノスタルジックな演出が加わっているからだと思う。

伏線の配置とミスリードも上手だし、
パンツここ
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あの頃。(2021年製作の映画)

3.7

「あの頃は良かったな‥」ってどうしようもない過去を思い出してノスタルジーに浸るというよりも、
「あの頃は楽しかった」けど(から)でも「今が一番楽しい」ってちゃんと過去を肯定しているような作品で、でも多
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ヒットマンズ・ボディガード(2017年製作の映画)

3.8

思想強めなやつとか作家性キツめな作品を連続で観たあとに最適な精神に非常に優しいジャンクフード的な作品。

アクションが笑っちゃうくらい一寸の狂いもなく計算されてて気持ちいい。
Netflix配給がもっ
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.0

この映像に予算がついて作品として上映されて各所で賛否の議論がなされて正当な評価がされているっていう事実に、映画って芸術として恵まれたコンテンツだなって素直に歓心してしまった。

アリアスター監督が「こ
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アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

4.7

ここ最近で一番楽しい音楽体験でした。
再上映ありがとう!

デヴィッド・バーンの音楽だけでなくて人間性が好きだ。
インテリ然としてて音楽もロジカルな作りなのに、最高なパフォーマンスした後に普通にチャリ
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ウィッチ(2015年製作の映画)

3.8

昨年に劇場で観た「ライトハウス」がとても好みだったのでビビりながら後追い。

この監督、人間VS恐怖の対象よりも恐怖でやられた人間同士をぶつけさせるの好きだなと思った。音も相変わらず最高に不快。
ゴシ
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キャリー(1976年製作の映画)

3.7

全部がキャリーの覚醒までの前フリ。
胸糞なのにカタルシスを感じる。

この胸糞の正体は、地味で目立たないような子が学校にも家にも居場所がなくなった結果、何か重大な事件を起こして「あいつはいつかやると思
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ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)

3.8

悪魔崇拝とモラハラは相性が良すぎる‥。
映像とか演出が怖いというよりも、個人的には内容とテーマに締め付けられる。

昨今、虐げられた女性の解放や反抗が多く描かれてきたと思うけど、こうやって妊娠・出産を
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この茫漠たる荒野で(2020年製作の映画)

3.7

手練れたトムハンクスが子を連れて荒野を往くだけでそれはもう画の説得力が段違いだよね。
相変わらず良い人感が尋常ではないのだけど、いつも以上に円熟した、強さと優しさが同居してる佇まいが渋い。

言葉が通
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サラブレッド(2017年製作の映画)

3.8

自分が抱えてる倫理観を試される系の個人的に好きなタイプのやつ。

流行りの「抑圧された女性の反抗モノ」ではあるのだけど、反抗する側に感受性が乏しくて暴力性が極端に強い人を配置されているから、ポリコネの
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シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

3.9

さすが画も音も美麗だけど何より話の内容が綺麗。おとぎ話とか伝承を聴いてるかのよう。

デルトロ監督は日本の特撮が大好きっていうのが凄く腑に落ちる作品だった。
「虐げられてる異形」と「分かり合える優しい
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アス(2019年製作の映画)

4.0

ゲットアウトが人種差別への皮肉だとしたら、こちらは格差社会への皮肉か。

上流の人たちが「みんなで手を繋いで一つになろうぜ」って政策を掲げても、結局それは自己満足で下流の人たちの存在と問題の本質には気
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mellow(2020年製作の映画)

3.7

田中圭がモテまくる訳だけど、告られたときのリアクションが毎回絶妙なので下世話な雰囲気を感じないのが良いです。
特に人妻に告られるシーンであそこまでいやらしさ皆無に出来るの逆に凄いよ。

気持ちを伝えて
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.3

これは久々に何度も観たくなる作品だった。
流行って欲しいなあ。

出会い、交際、絶頂期、破局、破局後の日々っていう男女のイニシエーションを回想していく(しかも逆から)訳だけど、不倫とかDVとか変態性だ
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孤狼の血(2018年製作の映画)

4.0

面白い。ズルい。
こういう継承モノは弟子が覚醒したときのブチギレ度が強いほど熱いと思ってる。
松坂桃李さんは静かに爆発する方が切れ味が鋭いね。

テロップやらナレーションやらカメラワークは勿論だけど、
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