アラシサン弐さんの映画レビュー・感想・評価 - 22ページ目

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.5

一言で表すなら「佐々木ィィィッ」という映画で、後ろに(笑)がつき、(泣)もつき、(汗)もつく。

「青春」って言葉は、冷静に見ると残念で汚くて馬鹿馬鹿しいことが、思い出補正やらで輝いて美しく見える瞬間
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洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

4.5

こんな爽快な哀愁ある?

まず、売春防止法が施行される直前の遊廓の入り口にある屋台が舞台、っていうプロットだけでもう期待が膨らむ。

男女の価値観の違いが描かれてるけど、あんまり悲観的なすれ違いに感じ
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家族ゲーム(1983年製作の映画)

3.8

オフビートだなぁ‥。
ずっとシュールなんだけれどその中で、どこの一般家庭もが抱えていそうな思惑の錯綜を皮肉っているんだろうな。
子供の意見を聞かずに進路を勝手に決めちゃうお父さん、その方針に抗えないお
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

3.5

のどかな風景で過ごす純粋な少女から、どうしても生と死の気配が漂ってきてしまう。

フランケンシュタイン、踏まれる毒キノコ、首を絞められる猫、それに引っ掻かれる少女。
個人的には、かなり生と死へのメタフ
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山椒大夫(1954年製作の映画)

4.2

残酷な世の中に対しての抵抗としてのヒューマニズム。
他者への慈悲を忘れずに生きて、成功者となって皆に辛酸を舐めさせる悪者をこらしめても、全てがハッピーに着地する訳ではない人生の残酷さ。

溝口健二監督
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切腹(1962年製作の映画)

4.7

凝り固まった価値観は美学ではなくて虚栄なんだな、と感じさせられる。
武士たるものとか武士らしくとか、思想と価値観に依存して、他者に上っ面を飾ってしまう人間の残酷さが痛烈。

現代にも、偏見に囚われて虚
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コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)

4.2

正直、観る前は「11話は多くない?」とか思ってたのに、終わってみればもっともっと観ていたい気持ちの自分がいる。

コーヒーブレイクだけで11シチュエーション。
休憩中の他愛もない会話が、その日で一番面
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ソナチネ(1993年製作の映画)

4.2

どんなに凄い役者を揃えて高額なセットを用意したとしても、この「死の匂い」を感じることは出来ないと思う。

落とし穴も花火の撃ち合いも拳銃遊びも、たけしがバラエティで馬鹿やってることの延長で変わらないの
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アンテベラム(2020年製作の映画)

3.8

アメリカにとっての「黒歴史」をモチーフとしたトリッキーなドッキリ、という感じ。

冒頭の「過去は死なない、過ぎ去りさえしない」という言葉がそのままテーマの根幹ではあるけど、個人的には黒歴史をめちゃくち
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インセプション(2010年製作の映画)

3.8

難解なのに娯楽映画。
設定がブッ飛んでて集中してても置いてけぼりにされるけれど、アクション含め問答無用で楽しい。
死んだらやばいっていうのもスリル。なんか仮面ライダー龍騎のミラーワールド思い出した。
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ファーゴ(1996年製作の映画)

3.9

何やっても上手く運ばれなくて悪い方向に進んでしまう男を見せられた後に、何もかも上手くいって充実してる女性の「人生は良いもの」っていう台詞は、もはやユーモア。

エクス・マキナ(2015年製作の映画)

4.0

思ってたより何倍も作家性強めだった。
なんか「A24節」みたいなの分かってきたな‥。

終盤にかけてほぼセリフ無しで進むシーンが本当に綺麗。露出描写わりと強めだけど、アンドロイドっていう設定も相まって
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

3.9

「この中に、犯人がいる」系のミステリーくらいの情報だけで鑑賞したけど、シンプルに面白くて見入った。
観客側に推理させる作りの作品で、時系列での揺さぶり方とか「メメント」に近いと思った。

優先するべき
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ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.5

人種差別に対するド級のアイロニーだと思った。批判とか抵抗ではなくて、皮肉。

一応ホラーなんだけど、幽霊もクリーチャーも登場させず「居心地の悪さ」でこの圧迫感と薄気味悪さを感じさせるのには舌を巻く。
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ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

3.8

冒頭、爺さんが言った「友人は自分が選べる家族だ」という言葉が旅を通してジンジン浸透してくる。

ダウン症というハンデを持ってるからではなくて、ザックの人柄に感化されて友情が芽生えていくのは熱い。海で泳
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雨に唄えば(1952年製作の映画)

3.8

小学生だかの音楽の授業で鑑賞した記憶があって、随分と昔のことなのに尋常ではないキレ味のダンスとリーナの超甲高い声を妙に覚えている。
そんな小さい坊主でも印象に残る映像と音楽。
コミカルの笑いどころも古
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マトリックス(1999年製作の映画)

3.8

ゴリゴリのSFと思ってたけど哲学と思想が案外強め。

映像も脚本も99年の作品だよね?って疑う。
人間が自ら創り出したものに淘汰されて絶滅するディストピア物の王道だけど、AIもVRも身近になった現代で
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ロッキー(1976年製作の映画)

3.8

良い意味で超シンプルなストーリーだからラストの試合に没入できる。
アメリカン・ニューシネマのブームにとどめを刺したみたいなこと書いてある記事を読んだけど納得。これぞ娯楽映画。

エイドリアンとの恋愛シ
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ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)

4.0

ブロックバスター映画鑑賞する週間。

男の子がモンハンにハマる理由は、幼少期ないし両親がこの映画を鑑賞した記憶がDNAに刻まれてるからだと思う。

大人が技術を凝らして金儲けしようとして大自然にこらし
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海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

4.2

父との血は争えない阿部寛、母の家に集まる近親者たち、蝶々のくだりなど、おこがましくも同じ是枝作品の「歩いても 歩いても」と兄弟のような作品だと勝手に思った。

「歩いても 歩いても」は、家族の生と死を
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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

4.2

おもしろ‥。
小気味良いテンポと台詞回しであと1時間くらいは観ていられる。

演者陣のバランスが優勝。
声も表情も台詞回しも最高なフランキー堺。
女郎たち美しすぎ。
ドタバタ劇だけどカオス過ぎないとこ
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赤い殺意(1964年製作の映画)

4.5

これまた倫理観が混乱する作品。

周囲のモラハラにビクビクしながら生きてる一人の女性が、夫にも姑にも負けないしたたかさを手にするまでの話。なんだけど、その要因が、自分を犯した強盗犯への愛憎というのが狂
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歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

4.7

冒頭でYOUと樹木希林が世間話しながら枝豆剥いてるカットで、これは絶対に好きな映画だと勝手に確信した。

演者全員がすごいのだけど画もすごい。
無駄に冗長に見えて、全カットに意味があると思う、既にもう
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近松物語(1954年製作の映画)

4.0

めっちゃ簡単にいうと、無茶苦茶な旦那に嫌気が差して駆け落ちした男女の、世間体を気にしてどうにか二人を連れ戻そうとする旦那からの逃避行。
今でこそよくありそうなプロットだけど、映像と音楽の綺麗さにやられ
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西鶴一代女(1952年製作の映画)

4.2

絶望的な虐げられ方だった。
主人公から終始受ける印象は、たくましくて強い女性ではなく、痛々しいくらいの健気さ。「時代に翻弄され度」が凄まじい。

この作品は不条理な世の中に対してのカウンター、例えば「
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豚と軍艦(1961年製作の映画)

3.5

エネルギーが、すごい。
笑ったらいいのか浸ったらいいのか悩まされる展開と映像。
哀愁も悲劇も皮肉も全て豚さんが飲み込んでいった。
重喜劇ってこういうことか。

豚と軍艦、っていうタイトルは当時の日本人
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海街diary(2015年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

正直、有名女優を集めた映画っしょ?くらいに思っていてなめてました、すいません。

是枝監督は言われるのうんざりしているみたいだけど、小津映画からの影響を感じざるを得ない。会話シーンの固定カット等の演出
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リスペクト(2021年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

最近「ローリングストーン誌が選ぶ歴代最高の500曲」が改定され、Respectが1位になっていた。
公民権運動の象徴であったり、R&B由来の注目のされ方であったり、様々な要素があるんだろうが、全てをひ
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ジョーカー(2019年製作の映画)

4.7

賛否や議論が諸々あるだろうけど、この作品の本質であって一番ヤバいと思うのは、観てる側がジョーカーという「悪党」を無意識に求めてしまうことだと思う。

観客は主人公がジョーカーに堕ちていく、という内容を
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月曜日のユカ(1964年製作の映画)

3.5

どことなくアメリカン・ニューシネマ感ある。
プロットだけで退廃的な女性の話かと思ったら、加賀まりこの演技と演出で割とポップだった。
多分、現代のパパ活女を同じように撮ってもこの雰囲気にならないんだろう
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晩春(1949年製作の映画)

4.5

小津作品の家族は、いつも観る側の「結婚観」を揺さぶってくる。

結婚すること=幸せになること、ではない。
結婚の幸せの本質は、幼少期から歴史を紡いできた自分の家族という枠組みを離れ、違う歴史を紡いでき
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ブルース・ブラザース(1980年製作の映画)

4.0

脳みそ稼働率0%映画。

ツッコミ不在のカオスでシュールなドタバタ劇なんだけど、何かの拍子で腹よじれるくらい笑う瞬間があった。「こち亀」とか見てる感覚に近かった。

R&B界隈のアベンジャーズみたいな
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にっぽん昆虫記(1963年製作の映画)

4.5

売春・パパ活・近親相姦など、バグりまくった倫理観の映像からは、日本が一番バタバタしてた時代を、周囲に虐げられながらも強く生きる女性の凄まじい生命力とエネルギーを感じる。

「性」が大きなキーワードであ
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雨月物語(1953年製作の映画)

4.5

ジャパニーズファンタジー。

現実と夢や幻が入り交じることで幻想的な演出を見せる作品は数多くあるが、その中でもこの作品は、戦乱の世で生きる人々の衣装やセット、それを包むような雅楽器の音色によって、西洋
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雨あがる(1999年製作の映画)

3.5

黒澤明監督は最後に何を残して、伝えたかったのか。

強い力を行使しても、そこに優しさが含まれているかいないかでその行為の意味は変わる。
何をしたかではなく、何のためにしたか。
平気で他者を傷つけること
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醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)

4.2

今の情報化社会に生きる人は必ず観るべき作品。

現代でも大衆は他人の不幸が晒されることへの欲求を持っていて、新聞がインターネットやSNSに代わっただけで、この無意識の悪意は肥大している。そしてその需要
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