ワンカットたりとも妥協を許さない一枚絵の連続によって情報量の洪水の中に観客を置き去りにし、丹精込めて作り上げた画を惜しげもなく一瞬で切り替え消化させる時間も与えない。レイアウトに重点を置いた奥行きの>>続きを読む
開幕早々観客が放り込まれるホラー映画の空間の魅力。トンネルの向こう側から差し込むあり得ないほど強い光が出口を真っ白に塗り潰し、生贄の象徴のように羊が現れる。煙が吹き出し、火が配置されたボイラー室のゴ>>続きを読む
序盤のレストランのシーン、デルフィーヌ・セイリグ、ビュル・オジエ、ステファーヌ・オードランの三人が並んで座る絵面の高級感に嘆息していると、啜り泣く声が聞こえてくる。音に導かれたブルジョワジーたちは、>>続きを読む
IMDbの低スコアを見て面白くないんだろうなと思いつつも、それでもイーストウッドだし、どれが遺作になるかも分からないしということで公開初日に見てきた。まあ案の定面白くはないが、イーストウッドの新作を>>続きを読む
タニタのような大企業の総務課長がリストラされて即座にハローワークの列に並ぶというのは、映画的な落下のスピードではあろうが、リアリティの欠如が気にならない訳ではない。基本的に黒沢清作品にリアリティなど>>続きを読む
ファーストシーン、ロングテイクの会話劇の中で、会話が別の男の存在という核心に及ぶ瞬間に切り返しを差し込み静かな衝撃を生み出す演出は「ミカエル」全編を通しての戦略の軽量バージョンであるし、長閑な屋外での>>続きを読む
適宜差し込まれる、美しい草原を進む馬車のショットが清涼剤となる他は、狭苦しい室内の超ロングテイクでひたすら会話劇が繰り返され、パン、ズーム、トラッキングは洗練されているものの、人物の動きをフォローする>>続きを読む
「心のともしび」と同じく、ラッセル・メティの色鮮やかで清潔、端正な撮影は楽しめるのだが、自分はメロドラマにはあまり関心が無いのだなということを改めて実感してしまった。ダグラス・サークであっても「心のと>>続きを読む
主人公のバストショットがティルトダウンし、グラスの中にシャンパンが注がれると、イメージの類似により海へとオーバーラップされ、画面は消えない記憶の光景へと導かれる。お洒落な導入だ。
青い夜に包まれた屋内>>続きを読む
オープニング、ドアから入ってきた軍服姿の男とヒロインが切り返され、僅かに言葉を交わすといきなり銃声が鳴り響く。カマシはばっちり。この描写が、すぐに角度を変えて繰り返され、シュミットの迷宮に迷い込むよう>>続きを読む
序盤、人物紹介と固有名詞だらけのガチャガチャした説明が延々続く中で、しばしば雰囲気スローモーションが挿入され、とにかくデカイ画にハンス・ジマーの壮大な劇伴を重ねて盛り上げようとされればされるほど冷めて>>続きを読む
冒頭のカーチェイスシーンは、スピルバーグが「映画史上最も完璧なカーチェイス」だと評したという噂があるようだが、確かに宮崎駿らしい自由で躍動感のある運動イメージが楽しい。垂直の崖を登っていく自動車など、>>続きを読む
タイムスリップを繰り返して過去の場面に現在のルパンが介入するという構成なので、有名なキャラクター以外にキャラクターを知らない非ルパンファンとしては、ファンが抱くであろう感慨は感じられなかった。まあそれ>>続きを読む
ガンバレルから物語世界を俯瞰で覗くファーストショットが洒落ている。窓の外に突如現れる能面のようなホラー演出に、シリーズでまだやっていないことをやろうという意欲が見える。氷が割れ、水の中に落ちていくマド>>続きを読む
アバンタイトルのファーストショット、メキシコシティで死者の日を祝う大量のエキストラを用いた力の入った超ロングテイクに、007はこういう飛び道具を放り込んでくれるのが嬉しいよなとテンションが上がる。エレ>>続きを読む
ファーストショット、一瞬だけ鳴り響くジェームズ・ボンドのテーマに合わせて逆光の中でシルエットと化したボンドが現れる。その後の室内のアンバーの色調もそうだが、007映画であってもやっぱり撮影監督ロジャー>>続きを読む
アバンタイトルのカーチェイスシーンが異常に細かいカット割りとブレブレのカメラで構成されており、何をしているかよく分からない代物に仕上がっていたため嫌な予感からのスタート。以降のシーンはそこまででは無か>>続きを読む
007シリーズ自体初鑑賞だったので、他作品と比べてどうなのかは不明だが、二時間半の尺を遅滞せず、かつ、詰め込み過ぎにもせず一気に見せる良質な娯楽映画だった。
アクションシーンに関しては、結局序盤の爆弾>>続きを読む
開始早々、狭い橋の上に車が並ぶとあまりに呆気なく柵が壊れ、車は水中に吸い込まれていく。人命を飲み込んだ水面は平然として表情を変えず、流木に沿ってクレジットが斜めに表示される。この低予算短尺B級ホラー特>>続きを読む
オープニングの波がコマ落としになっていた時は、不気味な雰囲気を作り出すために波+コマ落ちってのは時折ある組み合わせなので普通に見ていたのだが、それ以後も延々コマ落ちだったので驚いた。最初はそういう映画>>続きを読む
オープニング、逆再生のような妙な音声と銃声がミックスされる中、銃を携えた男が画面左側に歩いてフレームアウトしていく。銃声がうめき声に変わると、一人の男が代わりにフレームインしてくるが、彼は中々倒れずに>>続きを読む
オープニングの廊下を歩いてくる家政婦をローアングルで捉え、手前に靴を配置した面白い構図のショットは、同時に靴を蹴っ飛ばしていく彼女の本性を示唆する。
家から追い出された孫はカメラの方に歩み寄り、第四の>>続きを読む
どうやらサウンド版だったようで、嘲笑の声など、ところどころに音声が入っていた。
開始早々、主人公の全てである妻及び研究成果を丸ごと失わせる。シェストレム、「霊魂の不滅」もそうだったけどかなり苛烈な人だ>>続きを読む
化粧と華美な服装で身を飾り立てる女を悪し様に描き、それを「スージーの真心」と対比させる構造を見ていると、やはりグリフィスって保守的な人だなと思わされる。「嵐の孤児」も革命を取り扱っていながら共産主義や>>続きを読む
都会と田舎の対比が強調される本作だが、「サンライズ」も“The Woman From the City”の誘惑に田舎の男がたぶらかされるというプロットだったし、ムルナウはこの構図が好きなんだろうな。>>続きを読む
冒頭、主人公二人の向かいから歩いてきた黒いマントの男は、一文無しには金をやらないが、僅かに金を持っている者には金を恵むなどと奇妙な物言いをし、目的地に到着したら娼婦に子供を産ませるよう告げる。カットが>>続きを読む
病院の外に葬儀用の馬車が忽然と現れ、御者がじっと座っている不気味なビジュアルが素敵。御者の台詞「空席は一人分です」をバスの運転手が繰り返し、気後れして乗車しないことにしたバスが崖から落下していく。幼い>>続きを読む
撮影監督がベルイマン組のスヴェン・ニクヴィストなので自然豊かな情景の撮影はお手の物。行者の衣服の色に合わせたかのような、植物、地面の枯れた色彩を含めて黄色、茶色系に纏められた画面は、ベルイマン&ニクヴ>>続きを読む
メキシコ革命を背景にした幼少期のシーンで、ブルジョアの母が争乱で芝居が中止になったことに怒り、縛り首にしろと言ってのける。このブルジョアの醜悪な描き方に共産主義者としてのブニュエルが出ているように思う>>続きを読む
青い夜に浮かぶ赤いライトから始まる、目に突き刺さる赤の使用、主要人物の他には誰も存在しないかのような広々とした空間にポツンと配置された人物のロングショットとアクション繋ぎによる寄りのショットのモンター>>続きを読む
監督ボーゼージ、主演ジャネット・ゲイナー&チャールズ・ファレルのトリオ作品を見るのは「第七天国」「幸運の星」に次いで三本目。
冒頭、ソーセージを盗まれたと騒ぐ男とドラムが破れたと怒る男の言い争いから、>>続きを読む
オープニング、人気のない夜道を男が歩いていると、突如銀行の窓が爆風で割れる。金を手にした男が出てくると、「また強盗ですかい?」と男が気楽に呼びかける。この手際の良さが、刹那的なギャング映画という題材に>>続きを読む
「ふしだらな女」に次いでヒッチコックのサイレント映画を見たが、正直今のところはサイレント期のヒッチコックあんまり面白くないなという印象。まあ「下宿人」はそのうち見よう。出来るだけ中間字幕を減らす心意気>>続きを読む
オープニング、少女が魂を思わせるボールを転がすと死のイメージが湧き上がってくる。これはラング「M」やマリオ・バーヴァ「呪いの館」にも通じる伝統である。赤いレインコートを身に纏った少女が真上を向いて沈ん>>続きを読む
「ミッドサマー」の元ネタの一つだと言われているカルト映画。宿屋の娘の描写など、性行為がコミュニティの中でオープンになっている感覚や、男根崇拝のポールの周りをぐるぐる回る儀式、迷い込んだよそ者が生贄とな>>続きを読む
久々に再見。本作の主人公はヨットやブランコに乗るだけで吐き気を催し、道に現れる男や休暇の旅行先の全てを拒絶し、とにかく注文が多く、世界と調和することができない。肉や魚など動物を体内に入れることについて>>続きを読む