ささきたかひろさんの映画レビュー・感想・評価

ささきたかひろ

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チャチャ(2024年製作の映画)

3.6

我々は「映像世界」を、基本的には自分の内側からしか認識できない。水晶体を通して外部の世界を捉えるという感覚だ。しかし、目を閉じていても「映像世界」を獲得することができる。その体験は「夢」と呼ばれるもの>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.6

脚本、設定、演技、演出。モヤモヤするところを挙げればキリがないのだが、鑑賞後には「ゴジラが来ちゃったらしょうがないよねぇ」と、多くの疑問が満足感に変わっていた。

映像の力に圧倒された形だ。アカデミー
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.6

上映終了後、席に傘を忘れた。
ランチに寄ったファストフード店では注文端末からプリントアウトされた伝票が白紙だった。(店員いわく「ありえない」らしい)極めつけは「映画を観た後に」と妻にお遣いを頼まれたが
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東京暮色(1957年製作の映画)

3.5

小津が苦手と言いつつ見た作品はなんだかんだ言っても唸る。とはいえこの作品は小津安二郎のフィルモグラフィの中では異色らしく、生理的に耐えられない(そこまで言うか)対話場面の切り返しショットも過去に鑑賞に>>続きを読む

女優は泣かない(2023年製作の映画)

3.5

私事ながら先月父が二年の闘病ののち亡くなっており、多かれ少なかれ本作の主人公と似た境遇にある自分を狙い撃ちしているかのようなストーリーのシンクロにまず驚いた。
  
伊藤万理華さんの演技を見に行ったつ
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怪しい彼女(2014年製作の映画)

3.8

ジャンルとしては何になるのだろうか?
時代、意識、記憶はそのままに同じ時代で肉体だけ若返るのだからタイムリープとも違う。入れ替わる相手が「自分自身」のとりかへばや物語にタイムリープをエッセンスとして加
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スワンソング(2021年製作の映画)

3.8

映画というのは基本的に「作劇」を通して他人の人生の瞬きを覗き見る体験なのだと思う。そしてしばしば私達はおこがましくも赤の他人が作った映画に「私の人生が写し取られたかのような妄想的瞬間」を見てしまう。「>>続きを読む

まなみ100%(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

チャラ男の10年の恋慕の物語

「チャラい」とは、浮ついた状態や軽薄な様子を示す「ちゃらちゃら」という擬態語を形容詞化した言葉だそうだ。

しかしこの言葉はどうも本質をついていない気がする。

前述の
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.5

東映に脚本をチェックする部門は無いのだろうか?

それとも東映が現場介入できないような契約だったのだろうか?明らかに脚本、設定に瑕疵があるではないか。。。

説明すべきところは大胆に省略。説明しなくて
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.0

「いかにしてパールというシリアルキラーが誕生したか?」

前作「Xエックス」の前日譚(とはいえ遡ること60年前のお話)という位置づけであるがゆえ、どうしても「正常だったパール」が何らかの原因で「異常」
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X エックス(2022年製作の映画)

3.7

冒頭の納屋の扉を使ってアスペクト比を疑似トリミングする見せ方で期待値がグググっと上がるのを感じた。「この監督は3次元から2次元へスケールを落とさざるを得ない「映像」の弱点と強みを知り尽くしてるな。」そ>>続きを読む

眠狂四郎 魔性剣(1965年製作の映画)

3.2

強い、強すぎる。そして運が良すぎる。
しかしこれが際どい所で「茶番」とならないのは「市川雷蔵」という絶対スターが主役を張っているからに他ならない。

「スター市川雷蔵」演ずる「眠狂四郎」の美しい殺陣が
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レディ・バード(2017年製作の映画)

3.6

レディ・バード。てんとう虫の英語名。
主にイギリスで使われる事が多いらしいが、この映画の舞台はアメリカのサクラメント。けれどもアメリカでは「レディ・バグ」と呼ぶのが一般的なようで、本作はこの時点でヒロ
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【推しの子】Mother and Children(2023年製作の映画)

3.8

本作のタイトルチューンであるYoasobiの「アイドル」の斬新さと鮮烈さに衝撃を受けた。とは言え相変わらずアニメ視聴に慎重な自分は楽曲とアニメ本体は切り離しておこうと思っていたが、ふと覗いた「ネタバレ>>続きを読む

スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

4.0

目下、最も注目している女優である伊藤万理華さんが「ベストムービー」として挙げてらっしゃるのを以前から知っていたが、そもそもアニメーションを殆ど見ないので優先順位が低かった本作なのですが...

素晴ら
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

すべてのケースに当てはまることではないが、過食嘔吐は自身のあらゆるコントロールを喪失してしまった状態の人々が、かろうじて制御を実感できる瞬間でもあるそうだ。必要以上に食べ自らを危機的状況に追い込んだ後>>続きを読む

青葉繁れる(1974年製作の映画)

3.7

4K化された黒澤明監督「生きる」の円盤に同梱されていたフライヤーにて昨年末にDVD化されていることを知り購入。鑑賞は30年ほど前のテレビ放送以来。

我が郷里仙台、そして母校を舞台とした井上ひさし原作
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ブリキの太鼓 ディレクターズカット版(1979年製作の映画)

4.3

主人公オスカルは自らの3歳の誕生日に成長を辞めることを決めた。それは端から見たら究極の承認欲求のこじらせであるし、精神分析学的にはピーターパンシンドロームやエディプスコンプレックスなどの適切な症例を与>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

「考えるな、感じろ」

考え出した途端に観客は容赦なく振り落とされ途方に暮れる。

瞬きもできないほどの目まぐるしいカットの洪水と心臓を鷲掴みにされるようなドラマティックなシーケンス。想定外のバイオレ
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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

3.8

古典落語の「居残り佐平次」「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などをベースとした喜劇。

古典落語が下敷きになっている作品であるとの予備知識なしに見はじめたが「これってもしかしてあの噺?」と匂わせるだ
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.0

「人間は変わらない≒他者を変える事はできない」残念ながらゴミはゴミのまま一生を終える。華やかな人生に見えてもそれは単なる「華やかなゴミ」回収される先が違うだけで私もゴミみたいな人間なので、アルやジョー>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

3.9

正直、脚本や設定にツッコミたい部分はあるけれども、私は人間は直線的な時間の中に存在している限り現実の視覚として「映画的」体験をする事は不可能だと思っているので(夢、幻想、空想なら可能だけどそれは脳が直>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.5

鑑賞後に考察サイトやSNSを巡って腱鞘炎になってしまうような映画は本来制作側がそうならずに済むように心を砕いて臨むべきことを意図的に怠けていると私は思う。観客に貴重な時間を浪費させてはいけない。

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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

3.6

男なら誰しも年上の女性に憧れを抱いたことがあるはずだ。

まして自身に著しい精神的な成長があり周りの仲間が急に子供っぽく見えてくる思春期の出会いであるならば、なおさら年上の女性は魅力的に映るものである
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さらば青春の光(1979年製作の映画)

3.5

ビートルズのリンゴ・スターがインタビュアーに「モッズなのロッカーなの?」と聞かれて「モッカー」と答える映像にひたすらはてなマークだった日々がこの作品を見てようやく解決。

スカしてキメて踊りまくる日々
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ミシシッピー・バーニング(1988年製作の映画)

3.4

「ミッドナイト・エクスプレス」を撮ってからのアラン・パーカーのフィルモグラフィーは非常に充実していて、例えば「バーディー」では鳥の視点で撮影するために広大なセットにワイヤーを張り巡らしリモート動作を駆>>続きを読む

十三人の刺客(1963年製作の映画)

3.7

東映時代劇は自分にとって子供の頃から無意識に刷り込まれた、いわゆる「時代劇」の原型でもあり、それだけにいざ東映時代劇を見るとなると「お約束」を寛容に受け入れる体制を作ってから臨まざるを得ない。

そん
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浮草(1959年製作の映画)

3.5

小津は苦手なんです。

小津なんて偉そうに呼び捨てるほど見てはいませんが、いや正しくは完走していませんが。。。私の映画鑑賞史においてもっとも途絶した作品が多い監督でぶっちゃけ「東京物語」と本作しか最後
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

4.0

大した理由もなく昨夜アカウント名を本名にした。佐々木卓宏。今後ともみなさんよろしくお願いしますね。

佐々木、イン、マイマイン
人生で最も苗字の連呼を聞いた時間だった。(2番目は「お耳に合いましたら。
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そばかす(2022年製作の映画)

3.5

伊藤万理華さんの演技が見たくて見に行ったのでなおさら思うのですが、予告で色々と見せ過ぎなのでは?

作品の感想はというと、映画の主題である「アロマンティック」に関してはその生きづらさ、つまづきの多さと
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青葉家のテーブル(2021年製作の映画)

4.0

松本壮史監督は映画というお伽話で、私たちそれぞれがそれぞれに抱えている「青春のわだかまり」を昇華させる。この手腕が見事すぎて「これは監督自身の青春への諦観の反動なんじゃないのか?」なんて勘ぐりたくなる>>続きを読む

ドグラ・マグラ(1988年製作の映画)

3.1

大学の講義で鑑賞。監督の松本俊夫さんがゲストでしたが、何を話されたかは忘れてしまいましたね…