いずみたつやさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

いずみたつや

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ビリーバーズ(2022年製作の映画)

3.5

自分を厳しく律して、教えを守るために欲望を殺す。

戒律を守ることが「人間らしさ」と相容れないところにカルトや宗教の不健全さがあると思います。

この映画は純粋な人間としての欲望と「守るべき教え」に引
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Zolaゾラ(2021年製作の映画)

3.0

Twitterでバズったツイートを基にした映画という興味深い作品ですが、蓋を開けてみればあまり驚きがないという残念な事態に。

現実世界のショッキングな内容がそのまま映画においても通用するかというとそ
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スワンソング(2021年製作の映画)

3.5

死と喪失、後悔の話ですが湿っぽくなりすぎないところが良い。

時の流れは残酷で、主人公パットの旅路には物寂しさが付き纏います。しかし、彼の出会ってきた個性豊かな面々や、彼が学んできた技術と経験といった
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激怒(2022年製作の映画)

4.0

「みんなの安心・安全」が誰かの住む場所を、自由を、人権を奪うことのおぞましさ。「正しさ」の押し付けが窮屈な社会を生む地獄。

「正義」の名の下では何をやってもいいという感覚の危うさは、ネット上の犯人叩
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ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)

3.5

『ロッキー4』を、なんと42分ものシーン差し替えで再構築した作品。未公開シーンの追加ではなく「差し替え」なので、アポロが蘇るような大胆な変更はないのでご安心を。

別テイクを使用したり、編集の調整を加
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

3.0

美しい景色と「羊人間」という不気味で可笑しいアンバランスな設定に惹きつけられます。

アイスランドの殺伐とした風景と張り詰めた空気感もとても相性が良いものの、さすがに見どころが少なすぎるように思いまし
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L.A.コールドケース(2018年製作の映画)

3.5

有名暗殺事件を聞こえの良い「物語」で片付けず、その裏にある社会の闇をあぶり出す硬派なクライムドラマで痺れました。

分厚い装飾を剥ぎ取り、真っ黒い真実を暴こうとする元刑事を渋く演じたジョニー・デップが
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C.R.A.Z.Y.(2005年製作の映画)

3.5

マチズモが「普通」だった時代を舞台にした家族映画。

主人公の少年はそうした男性優位主義的な環境やキリスト教社会のなかで、自身のアイデンティティーと家族との関係性がなぜか相容れなくなってしまったことに
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ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2021年製作の映画)

2.0

これほど画がわりのないシリーズもなかなかない。。

今回あらすじに「アメリカ本土に連れられてきた恐竜たち」とあり、『新・猿の惑星』じゃないけど、現代の地球に恐竜が闊歩する超凄いものが観れるのでは!と期
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女神の継承(2021年製作の映画)

3.8

堂々たるタイ版『エクソシスト』。

元々は『哭声』でファン・ジョンミンが演じた祈祷師の物語として構想していたものだそう。それはそれで観たかった。

クライマックスには『哭声』を思い出させる、これまた衝
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PIG ピッグ(2021年製作の映画)

4.5

出会いと別れは人生につきもの。人はあらゆる痛みを背負って生きているし、これからも多くの喪失を味わうことになります。

そんな厳しく辛い道に立ち向かう勇気が湧いてくるような、優しく穏やかで力強い作品。
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X エックス(2022年製作の映画)

4.0

オマージュやパロディーが盛りだくさんで、タイ・ウェストの映画オタクぶりが存分に発揮された作品。本当に70年代に撮られたもののように錯覚してしまう瞬間があるほどの「時代性」の再現に驚きました。

ジャン
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ミニオンズ フィーバー(2022年製作の映画)

3.8

『ミニオンズ』ほどの笑いと感動はなかったものの、70年代カルチャーをふんだんに盛り込んだ賑やかで楽しい作品。

ミシェル・ヨー、ドルフ・ラングレン、ダニー・トレホ、ヴァンダム!といった豪華面々が演じる
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エルヴィス(2022年製作の映画)

4.2

ものすごい熱量と質量。息つく暇もないほど次々に目と耳から情報が飛び込んでくる!

エルヴィス・プレスリーの曲はそれなりに知ってはいるものの、正直特別好きなわけではないのでスルーしようか迷っていたんです
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ニューオーダー(2020年製作の映画)

4.0

貧富の格差についての映画はたくさんあるけれど、ここまで身も蓋もない殺伐とした空気が途切れない作品はなかなかありません。

金持ちが創り上げたまやかしの平和が音を立てて崩れるまさにその瞬間を描いた緊迫感
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哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)

2.0

めちゃくちゃ評判良くて楽しみにしていたんですが、ビジュアルの過激さ以外に見るべきところがなかった…。

確かにゴア描写は目を見張るものがあるし、主要人物があっさり深手を負ってしまう展開ゆえに、先の読め
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ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

オープニングから姿勢を正しました。舐めていてすみません!いきなり神様の首をぶった斬って生首ゴロンなんて、誰が想像したでしょう。

しかも神殺しの男を演じるのは、名優クリスチャン・ベイル。敬虔な信者だっ
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マーベラス(2021年製作の映画)

3.0

傑作『復讐捜査戦』、シリアスなジャッキーアクション『ザ・フォーリナー』に続くマーティン・キャンベルの復讐三部作(?)とあって、復讐モノに目がない自分は期待大でした。

結論からいうと、なんか物足りない
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モガディシュ 脱出までの14日間(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

南北の対立をソマリアに持ち込むことで、サスペンスフルでドラマチックな展開を生むことに成功していました。

画的な迫力も目を見張るものがあり、本と砂袋を纏った簡易装甲車で疾走するデス・ロードシーンは強烈
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バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)

2.5

お決まりの台詞「無限の彼方へ」の裏に、夢と希望と物理のドラマがあったとは!予想外のSF展開に驚きました。

ただ、中盤からは意外性のない展開の連続で急激に失速していったように感じてしまいました。悪役も
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FLEE フリー(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

祖国、家族、性的指向など、自分を形成するためのあらゆる要素を剥ぎ取られ、暴力や差別にさらされる想像を絶する体験。ただ普通に生きることが許されない状況がどれだけ恐ろしいことか。

コンテナ船の貨物に紛れ
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

5.0

「君を忘れるわけない。君も僕を忘れない。」
これはもう今年ナンバーワンの台詞でしょう。クーパー・ホフマンがピュアな瞳をこちらにむけながら、身の丈に合わないこんなキザな台詞を吐く。子どもが大人の服を着せ
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.5

「がんばれ!」「大丈夫!」と言ってくる熱っぽさはないのに、観終わると前向きにさせてくれる温度感が心地良い。

人生は思い通りにいかない。この先も間違い続ける。どんなに逃げ回っても、孤独や不安は解放して
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鬼が笑う(2021年製作の映画)

3.5

暴力、偏見、差別、搾取。私たちが目を背けてやり過ごしている世の中の闇を真正面から描き出す力作。

毎日のように目にする殺人事件をすべて自分ごとのように受け止めていては身が持ちませんが、本来「人が殺され
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神は見返りを求める(2022年製作の映画)

4.2

成功者が富や名声を得たことで人が変わってしまう話はよくありますが、主語がYouTuberに置き換わるだけで新しいおもしろさが生まれていると思いました。

ネットストーキングや顔の見えない人物からの怨恨
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ブラック・フォン(2022年製作の映画)

4.2

この世ならざる者への恐怖が次第に別の感情へと変化していく上手さ。

黒電話が異界との通信機となるアイデアが面白く、予知夢も絡めたスリリングな展開から目が離せなくなりました。

ゾッとする装いで存在感を
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ザ・ロストシティ(2022年製作の映画)

3.0

肩の力が抜けた緩いロマンスアクションコメディーアドベンチャー映画。間違いない役者をそろえており、”お約束”もきちんと押さえて抜かりのない出来に思えるものの、どうも薄味に思えてしまいました。

男性優位
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

4.2

さまざまな矛盾を抱えた登場人物たちの精緻な描写が素晴らしい。それぞれが葛藤のなかにおり、その摩擦が物語を展開させていく。

『そして父になる』よりもスリルがあり、『万引き家族』よりも希望がある。エンタ
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炎の少女チャーリー(2022年製作の映画)

3.5

粗さはあるけどむしろそれが悪くない。なんでもかんでもカッチリ真面目に作るのがいいってわけじゃないよなと思いながら楽しみました。

もう少し派手でも良かったけど、カーペンターの音楽が鳴るとそれだけで仕上
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.2

「奇跡を2回やる」という、もはや作戦でもなんでもないブッとび奇策にこんなにも熱くなれるのはなぜ?

バカバカしいなんて思う暇もなく手に汗を握り、ひとりも死ぬんじゃないぞと彼らの無事を祈り、いつの間にや
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犬王(2021年製作の映画)

3.8

ロックという掛け合わせが奇をてらったものではなく、権力者や親からの理不尽な暴力、悪しき慣習に対する反骨の物語と共鳴する。

エレキ琵琶と野性のステップという荒唐無稽さの中に、音楽の力という時代を超えた
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夜を走る(2021年製作の映画)

4.5

何もかもどん詰まりの息苦しさ。不安に付け入ってくる新興宗教。薄っぺらい日常を、声を殺して黙々と生きる。

日常と非日常をよどみなく行き来するうち、手が届いたはずの些細な幸せさえ、分厚いガラスの向こう側
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チェルノブイリ1986(2020年製作の映画)

3.0

さすがのロシア大作映画で、ド迫力の映像とメロドラマというベタだけど手堅い娯楽性で「おもしろい」作品だと思います。自らの命を賭して立ち向かった人々がいるという事実にも頭が下がります。

しかし、彼らの英
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

2.8

アニメ演出とエヴァ演出をそのまま実写に持ち込んだことによる違和感が、最後までノイズでした。

あれは「実相寺アングル」というリスペクトの表れであって…というのは分かりますが、あそこまで多用されると内容
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死刑にいたる病(2022年製作の映画)

3.5

これPG-12??
R指定避けの小技はいろいろあると聞きますが、そんな風に上手いことやってる感なしの直接的な痛々しい場面がたっぷりです。

犯人の動機やら手口やらが本当に胸糞悪いので、映像だけではない
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ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年製作の映画)

4.0

あっと驚く死に方、残酷かつおかしな描写の連続で「サム・ライミの新作」として楽しめる一本。

サイケデリックな曼荼羅トリップの前作も最高でしたが、「マルチバースの面白さはいくらでも人を殺せることだ!」と
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