てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

シルバラード(1985年製作の映画)

3.5

ローレンス・カスダン監督を筆頭に若き映画人を集結させた西部劇復活の狼煙。随所に感じられる過去西部劇へのオマージュ。4人の主役たちの中ではケヴィン・コスナーが秀逸、軽佻浮薄な2丁拳銃早撃ちガンマンを嬉々>>続きを読む

ブローニュの森の貴婦人たち(1944年製作の映画)

3.9

ロベール・ブレッソン監督長編第2作、手探りで自分のスタイルを模索しているような貴重な作品。台詞監修のジャン・コクトーとの出会いから学んだ映画製作スキルが活きた豊饒なラストシーンや、流転する手紙にはブレ>>続きを読む

悪魔が夜来る(1942年製作の映画)

3.2

人心を惑わす悪魔の誘惑、悪魔が使わした2人の侍者を演じたアラン・キュニューとアルレッティが悪魔に心を売り渡した人間の弱さを好演する。マルセル・カルネ監督が描く真実の愛の崇高さに対比する悪魔の俗悪振りが>>続きを読む

プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)

3.6

何百年も前から地球に飛来し人間狩りをしているプレデター、今回は300年前のネイティブ・アメリカンとの戦いを描く。シュワちゃんの頃の近代兵器を備えた精鋭部隊との戦いと違い、武力の差は歴然で一方的な殺戮に>>続きを読む

5つ数えれば君の夢(2014年製作の映画)

3.3

絶えず流れ続けるピアノの劇伴、詩のような会話。女子高生たちの赤裸々な残酷性とあざとさを備えた幼さ。少女とダンス、花を育て無邪気に花を摘む揺れ動く少女たちの心の多面性を繊細に掬い取る山戸結希監督の審美眼>>続きを読む

木枯し紋次郎 関わりござんせん(1972年製作の映画)

3.0

からっ風、突風砂埃舞う上州玉村宿に立つ市原悦子の毒婦ぶり。宿場に現れる紋次郎・菅原文太を陽炎のように映し出す望遠レンズのハレーションが、対決前の不気味な静けさを効果的に捉えている。マカロニウエスタンに>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.8

ジョーダン・ピール監督のベースにある人種差別の比喩として登場する凶暴化したチンパンジー、雲に擬態化する「何か」の不気味さは、さすがにピール監督らしく抑圧された悪意を超えた不穏に満ちていた。バイクシーン>>続きを読む

マネーボール(2011年製作の映画)

4.1

"パパはおバカね、パパはおバカ…もっと野球を楽しんで"愛する娘に、こんな歌を歌われたらブラピじゃなくてもメロメロですね!アスレチックスGMビリーの娘がパパだけに歌う素敵な弾き語り、バックミラーに映る今>>続きを読む

デアデビル ディレクターズ・カット版(2003年製作の映画)

2.6

子供の頃事故で視覚を失い、同時に他の感覚が研ぎ澄まされ超人になったデアデビル。盲目のヒーローのハンデをまるで感じないスーパー超人振り。ベン・アフレックがヘタなのか、製作側に障害者の理解が乏しいのか?こ>>続きを読む

女相続人(1949年製作の映画)

3.9

ワイラー監督の熟練の演出。動きの少ない会話劇を逆手にとり、セリフの強弱のメリハリと、仰角に仰ぐ階段と見下ろす俯瞰のカメラワークで心理をコントロールする匠の技。2時間を全く飽きさせる事なく物語に集中させ>>続きを読む

眠狂四郎 悪女狩り(1969年製作の映画)

3.5

眠狂四郎シリーズ第12最終作。公開後市川雷蔵の訃報と大映が倒産する。病魔に侵された雷蔵渾身の演技、映画に命をかけた執念がヒシヒシと伝わってくる。厚く塗った化粧の濃さ、座り演技の多さが痛々しい。執念で演>>続きを読む

眠狂四郎無頼控 魔性の肌(1967年製作の映画)

2.8

眠狂四郎シリーズ第9作。江戸から京都への道中、狂四郎に張り巡らしたカルト教団の罠が珍妙で、狂四郎と同行する鰐淵晴子が居たり居なかったり、久保菜穂子が急に現れたりと忙しい。ハニートラップの罠、女刺客たち>>続きを読む

眠狂四郎 女地獄(1968年製作の映画)

3.5

眠狂四郎シリーズ第10作。降りしきる雪の激闘、市川雷蔵のクローズアップ眼光の鋭さ。大映美術を結集したかのような鮮やかな降雪だった。次々と登場する色仕掛けの女刺客を冷たく遇らう狂四郎のクールさが冴え渡る>>続きを読む

眠狂四郎 無頼剣(1966年製作の映画)

3.8

眠狂四郎シリーズ第8作。シリーズ屈指の好敵手天知茂登場!敵役が強力だと流石に作品は締まるのだ。大映スコープ横長の画面左右に対峙する黒の市川雷蔵と白の天知茂のコントラストは重厚さを携えた見事な構図だった>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安2(2023年製作の映画)

3.8

死を覚悟した仕掛人の優しさ、梅安と彦次郎の寄り添う心。追撃の魔手に備え、天井裏と居間に別れたゆうげの食卓、互いに声を掛け合い励まし合う屈託のない些細な会話。梅安と彦次郎の仕掛人の孤独と信頼関係の深さを>>続きを読む

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)

2.9

ガル・ガドット嬢、今回も大活躍の巻なのだが、敵があまりにも雑魚すぎた。敵が弱いのでアクションは少なめ、動きのないドラマが間延びしている2時間30分は長かった。エンドロール後のオマケ、オールドファンには>>続きを読む

湯殿山麓呪い村(1984年製作の映画)

2.9

邪悪で気味の悪い雰囲気が良く出ていて、即身仏ミイラの不気味さが脳裏から離れない。ミステリーの謎解きは雑で、犯人の動機も不十分。永島暎子と中川梨絵の見せ場少なく勿体なかった。池田敏春監督の映画文法を無視>>続きを読む

県警対組織暴力(1975年製作の映画)

3.3

このタイトルを訳すと、"県警の対組織暴力装置"という皮肉になるだろうか?警察とヤクザの癒着、ズレていく警察の倫理観を辛辣に描いていて、警察が同じ穴のムジナのヤクザにしか見えないという皮肉。深作バイオレ>>続きを読む

O嬢の物語(1975年製作の映画)

3.4

その昔、この作品でオトナの階段を登らせて貰いました(笑)。淫靡な雰囲気の旋律からソフィスティケートに洗練された曲調に変わるテーマ曲を聴くと今でも当時を思いだします。今再見すると作品の中でコリンヌ・クレ>>続きを読む

ファイナル・カウントダウン(1980年製作の映画)

3.0

アメリカ海軍の強大な軍事力を、世界にまざまざと見せつけるアメリカの国威発揚映画。この強力な軍事力が太平洋戦争開戦時にパールハーバーに駐屯していたら…のタラレバがこの映画で描きたかったナショナリズム。強>>続きを読む

生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.2

黒澤明『生きる』を解体して再構築し、オリジナルより40分短い短尺で仕上げた神技的作品。オリジナルの香り、風味をしっかりと残しながら、根幹となる人間ドラマをブレる事なく再現したカズオ・イシグロの脚本、オ>>続きを読む

ワイルド・ギース(1978年製作の映画)

3.4

4人のスーパースターが第一線を退いた傭兵を円熟味を増しながら演じるが、老兵のOB感は免れない。10年前の60年代の感覚で撮るアンドリュー・V・マクラグレンの演出の古さに、戦争アクションが西部劇とともに>>続きを読む

眠狂四郎 多情剣(1966年製作の映画)

3.3

眠狂四郎シリーズ第7作。『女妖剣』に続き、能面を被りサディスティックに狂気の殺人を繰り返す将軍の娘菊姫登場。ほぼ能面なれど、そのドSなキャラクターはシリーズ屈指のインパクトがあり、菊姫を演じた毛利郁子>>続きを読む

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

3.6

伏線回収のユーモアセンスが抜群に伊坂幸太郎を感じさせ、流転する"ボトル"を見ているだけで面白かった。ファンキーな日本描写もキル・ビル的な日本愛を感じ、全く悪い印象はない。機関車トーマスかーっ!ブラッド>>続きを読む

ダイナマイトどんどん(1978年製作の映画)

3.8

血で血を洗う抗争の決着を、野球の試合でつける荒唐無稽な岡本喜八監督快作!乱闘、反則技何でも有り、仁俠道を逆手に有望ヤクザ選手を引き抜いて野球賭博に走る実にヤクザらしい野球の謳歌。西本聖ばりのフォームで>>続きを読む

愛してるって言っておくね(2020年製作の映画)

4.0

最愛の命を理不尽に奪われた夫婦の悲しみ、絶望が深く深く心に染み渡る。セリフの無い12分のショートムービーの中から聞こえてくる声なき慟哭、嗚咽と叫び。

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.8

陸に打ち上げられた瀕死のクジラのような、自分の増え過ぎた体重に苦しむブレンダン・フレイザーの怪演に尽きる。ソファーから重そうに立ち上がる様子は海上から伸び上がるクジラのような重量感があった。動けない人>>続きを読む

キル・ボクスン(2023年製作の映画)

3.8

「殺し屋」を職種として選び、「企業」に帰属し、「業務」を遂行する。そこには正義も悪もなく、プロフェッショナルな仕事としての殺人が成立している。罪悪感なき殺人を格闘アクションとして描く清々しい程に振り切>>続きを読む

ゴジラ対メカゴジラ(1974年製作の映画)

2.8

全身に装着したミサイル、レーザー砲を一斉砲撃するメカゴジラの圧倒的な武力が、ゴジラ・キングシーサーを蹴散らす圧巻の爽快感は流石!脚本レベルは悲惨な程酷く、葉巻を燻らせブランデーを嗜む宇宙人の姿にはニガ>>続きを読む

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)

4.5

強烈な余韻を残すたけしのクローズアップと坂本龍一の音楽の力。反逆児デヴィッド・ボウイのカリスマ性を抉り出す語り部ロレンス、トム・コンティの視線。異なる思想と哲学を衝突させ、抗いきれぬ人間の根底にある欲>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.0

スチール写真が、鮮やかな編集で動画のように物語を語りだす。過去と現在、未来の時空を旅する男の瞬間的な時間の視覚イメージとして捉えさせる着眼点の鋭さ。空港での彼女の哀しげな表情と、彼女のうなじの静止画は>>続きを読む

眠狂四郎 魔性剣(1965年製作の映画)

3.1

眠狂四郎シリーズ第6作。劇画チックな血飛沫と淫靡な黒ミサ儀式、狂四郎が築く死体の山。エログロに舵をきりつつも、狂四郎が子供を護る回なのでクールなニヒルさも、女好きも封印するどこか健全で不思議な回。ヘビ>>続きを読む

荒野の大活劇(1969年製作の映画)

3.8

絶好調ジュリアーノ・ジェンマのドタバタ大活劇。走る列車の屋根を駆け回り、得意のアクロバティックなガン捌きを披露する。昔、大爆笑した懐かしさと、今でも通用する身体を張ったコメディの面白さを再確認。ツボを>>続きを読む

しなの川(1973年製作の映画)

2.6

文芸作品を装いつつも、内容は歴然としたポルノであり、文芸寄りの演出が邪魔をして中途半端な描き方になっている。ドロドロの血の宿命として重要な両親の性癖が色物のようで、由美かおるのヌードも物語の中で必然性>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.7

庵野秀明監督のcult怪作『キューティーハニー』を彷彿とさせる昭和感に目尻が下がり、浜辺美波に綾波レイを重ねながらニヤリと微笑む。庵野ワールド全開!シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンを想起させるキャステ>>続きを読む

眠狂四郎 炎情剣(1965年製作の映画)

4.0

眠狂四郎シリーズ第5作。狂四郎が寺院回廊の階段を駆け上がり縦横無尽に斬り抜ける殺陣のケレン味たっぷりの様式美の艶、三隅研次の匠のアングルが冴え渡るシリーズ屈指のクライマックスだ。モタモタとわかり辛い物>>続きを読む