てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

突然、嵐のように(1977年製作の映画)

3.8

儚くやるせない青春の残像。生半可な役者じゃ太刀打ち出来ないシラケ派女優秋吉久美子のアンニュイな気だるさに、真っ向から挑む郷ひろみトップアイドルの資質。異業種でトップに君臨する2人のバチバチの演技、圧倒>>続きを読む

シルバー・サドル 新・復讐の用心棒(1978年製作の映画)

3.1

残酷描写のないルチオ・フルチ監督作品で、ジュリアーノ・ジェンマの運動神経の良さを活かしたアクロバティックなアクション満載のマカロニウエスタンだった。孤高のガンマンの心を溶かす少年との友情、相棒のジェフ>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

4.0

さかなクンの人懐っこい優しさが、中性的な"ぽわわん"としたのんの存在感にピタリとハマり何とも言えない不思議な空気を醸し出す。誕生から食すまで、魚に寄り添い愛すさかなクンの姿がまるで妖精のように光を放っ>>続きを読む

まあだだよ(1993年製作の映画)

4.1

黒澤明監督が最後に遺した作品は、明治男の優しさと日常の平安だった。内田百閒をモデルにその教え子たちとの交流の暖かい時間が黒澤流の人間の理想郷であり、その人生を達観した作風が黒澤明監督自身と重なり滋味深>>続きを読む

流されて…(1974年製作の映画)

3.6

なんともシニカルな視点で男と女を見据えた皮肉たっぷりの喜劇だった。高慢なブルジョワ女の差別と卑下の畳み掛けるマシンガントークが一転、流された無人島での弱肉強食の自然界で、オスに隷属する従順なメスに変貌>>続きを読む

M(1931年製作の映画)

4.7

トーキー黎明期に「音」の効果を最大限に活し、サイレントで培った動く「画」と融合させた驚異の傑作。無音の効果に意味を持たせ映画に臨場感と緊張を生む。少女の歌で耳を惹きつけ、無音の転がるボールと風船が目で>>続きを読む

サスペリア・テルザ 最後の魔女(2007年製作の映画)

3.0

ダリオ・アルジェント監督の円熟期作品にも関わらず、物語なんてそっちのけで恐怖をいかにグロくショッキングな映像に出来るかに特化した若々しく尖った作品だった。愛娘アーシアを主演に据え、物語に必然性のないシ>>続きを読む

ガメラ対大悪獣ギロン(1969年製作の映画)

2.8

ギロンと宇宙ギャオスのグロテスクで残酷な戦いが強烈。子供向けにシリーズの舵を切りながら、ギロンの強さを誇示するギャオスの解体は子供にはショッキングでトラウマな描写だった。酷い脚本だが、群で生息するギャ>>続きを読む

クラッシュ(1996年製作の映画)

4.3

性的エクスタシーの極みを具現化したデヴィッド・クローネンバーグの変態性。全編ほぼセックスシーンと交通事故のクラッシュシーンで綴られた異色作。クラッシュは性的興奮度の比喩であり、つまりは全編が異常なセッ>>続きを読む

馬と呼ばれた男(1969年製作の映画)

3.5

リチャード・ハリスの隠れた代表作。先住民の視点で描いた異色西部劇で、先住民の人間性の気高さを謳いあげた激動の人間ドラマだった。英国軍人の気骨を、独特のクセの強い演技で演じたリチャード・ハリスを堪能出来>>続きを読む

バイオレント・サタデー(1983年製作の映画)

3.0

サム・ペキンパー監督遺作、B級感丸出しの低予算映画なれどクセ者俳優をズラリと配置した絶妙なキャスティングは見応え充分。ペキンパーの演出には覇気がなく、アクションにキレもない、命を狙われる程の事件性も必>>続きを読む

ケロッグ博士(1994年製作の映画)

3.8

公開当時、淀川長治さんが絶賛していたが未見のままだった。アラン・パーカー監督の辛口ドライなブラックコメディ、お下劣下品を上手にオブラートで包んで嫌味のない透明感を醸し出す。時に皮肉をチクリ、エロスがチ>>続きを読む

ガメラ対宇宙怪獣バイラス(1968年製作の映画)

2.7

操演の難しさからかバイラスに動きがなく魅力を感じず、ガメラ過去作の流用が雑に多用されたスカスカの内容で、子供向けに製作された作品なのに当時の子供たちにも評判は良くなかった。50年以上経って再鑑賞、見え>>続きを読む

エロスの誘惑(1972年製作の映画)

3.4

藤田敏八監督"エロス三部作"の第2弾。男たちを手玉にとる中川梨絵の気まぐれなメス猫っぷり、愛すべきビッチ像が実に清々しい。助監督に長谷川和彦の名前、ドブ川のヘドロの匂い、熱帯夜の澱んだ湿気がフィルムに>>続きを読む

南極料理人(2009年製作の映画)

3.5

極寒の南極基地、ほのぼのとしたペーソスで綴られる越冬隊員の日常生活。家族に会いたい、パチンコ行きたい、ラーメン食べたい、彼女に逢いたい。堺雅人のおにぎりの何とも美味しそうな事、8人の隊員がガッツく食卓>>続きを読む

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)

4.2

ブレードランナーの世界観を踏襲するだけではなく、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、より深くレプリカントの哲学にまで踏み込んだマニアックで深遠な作品に仕上げている。実体を持たないジョイとKのラブシーンの切なさ>>続きを読む

2048:ノーウェア・トゥー・ラン(2017年製作の映画)

3.3

ブレードランナー30年を繋ぐショートムービー2048〜『ブレードランナー2049』前年のエピソードなので直接物語に関わる。旧型レプリカントの悲哀を描いた5分、リドリーの息子ルーク・スコット監督作品。こ>>続きを読む

2036:ネクサス・ドーン(2017年製作の映画)

3.3

ブレードランナー30年を繋ぐショートムービー2036〜ドゥニ・ヴィルヌーヴ2049版の前日譚、2049の鍵になる天才科学者ジャレッド・レトーの冷淡さを際立たせたエピソード6分。上出来な予告編、2049>>続きを読む

ブレードランナー ブラックアウト 2022(2017年製作の映画)

3.8

ブレードランナー30年を繋ぐショートムービー2022〜渡辺信一郎監督が描くもう一つのレプリカントの叛乱。リドリー・スコットが構築したブレードランナーの世界観をリスペクトを込めてアニメ化した凝縮の15分>>続きを読む

嵐が丘(1988年製作の映画)

3.4

ヌーヴェルヴァーグ吉田喜重監督が、ブロンテの「嵐が丘」を、当時スキャンダラスに騒がせた問題児役者を揃えて製作した時代劇。妖気漂うスモークをふんだんに流し、異次元の様に山あいの居城を描き出した野心作であ>>続きを読む

非行少年 若者の砦(1970年製作の映画)

3.2

非行少年石橋正次のすねた視線、地井武男のヤサグレた眼力の強さ、藤田敏八監督の社会からハミ出た若者を見つめる下から突き上げる視線の鋭さ。屈折した若者の行き場のない怒りを捉えた『八月の濡れた砂』の原型とも>>続きを読む

荒野の処刑(1975年製作の映画)

3.2

残虐描写でカルトな信者を持つルチオ・フルチ、お約束のグロテスクシーンを描きつつも"男たちの町"の優しい演出にグッときた。怪優マイケル・J・ポラードに可憐なリン・フレデリックが出ている貴重さも含め、マニ>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.7

カンヌがナンボのもんじゃ!と厳しく観たつもりだが、坂元裕二の脚本は想像以上、完璧に怪物級だった。様々な正義の視点を交錯させながら、ある感情を線引きしてあえて描かない事で嘘というあらたな視点を浮かび上が>>続きを読む

男はつらいよ 噂の寅次郎(1978年製作の映画)

3.4

大原麗子の突然の「寅さん好きよ!」に立ち尽くす寅次郎のボーゼンとする後ろ姿をとらやの住人の目線で映し撮る。渥美清の背中で魅せる寅の純情な優しさと、さくら達の不安を交錯させる渥美清の名人芸を際立たせた名>>続きを読む

神々の深き欲望(1968年製作の映画)

4.3

今村昌平で1作品挙げろと言われればこの作品になります。海と大地に神々が宿る孤島、古い因習に支配された土着性の根深さ、死の掟と閉塞された島民の生存を意味する近親相姦の凶々しさ。島に根を張り深く密着しなが>>続きを読む

雨のニューオリンズ(1965年製作の映画)

3.2

ロマンチックなラブロマンスかと思いきや、冷淡なリストラとアバズレのドロドロな社会派戯曲の映画化だった。この作品で製作当時メジャーだったのはナタリー・ウッドだけ、駆け出し監督にシドニー・ポラック、ブレイ>>続きを読む

弾丸を噛め(1975年製作の映画)

3.2

西部劇が不人気で絶滅寸前の頃、豪華スター顔合わせで製作された異色西部劇。地方では都内不入りの影響か遂には未公開の憂き目にあった苦い作品。西部横断の命を賭けた過酷なレースに人間も馬もフラフラ、動物虐待シ>>続きを読む

THE WITCH/魔女 —増殖—(2022年製作の映画)

3.6

魔女覚醒後の超能力戦、世界レベルの韓国アクションを堪能できる。あえて苦言を呈すなら、韓国特有の神経を逆撫でするような痛みを伴うドロドロの残酷性がなく、アメリカナイズされたスマートな作品だったのがやや惜>>続きを読む

Single8(2023年製作の映画)

4.0

わかる人には痛いほど胸に突き刺さる。スターウォーズに感化され8㎜映画に仲間と共にのめり込んだ1978年、学生自主映画全盛期の時代だった。この映画で発表される8㎜映画ほど完成度は高くないが、同世代で8㎜>>続きを読む

かぶりつき人生(1968年製作の映画)

3.5

散々な酷評の憂き目に合い、日活ロマンポルノで再登場するまで干されていた神代辰巳監督問題のデビュー作。驚くべきは一般映画にも関わらずこのデビュー作で、ストリッパーや娼婦の性事情を斜視する粘着質な作家性が>>続きを読む

BOLT(2019年製作の映画)

2.8

誰に向けて誰の為に撮ったのか、原発の放射能漏れをテーマに3つのエピソードで映像化するが、現実に起こった事故を報道するニュースの方が深く感じた。エピソード1の「BOLT」の緊張感は好きだが、それでも現実>>続きを読む

豹/ジャガー(1968年製作の映画)

3.1

マカロニの雄、セルジオ・コルブッチ監督とフランコ・ネロとの最強タッグふたたび。血で血を洗う残酷描写ばかりなのに、コメディのようにも見える不思議なテンポが、コルブッチの異端振りを遺憾無く発揮した怪作とし>>続きを読む

サマータイムマシン・ブルース(2005年製作の映画)

3.3

大学SFサークル部室の中に突如現れるタイムマシン、壊れたエアコンのリモコンを巡って昨日と今日を往き来する、タイムマシン史上稀に見る小さなスケールで描くホンワカな面白さ。『四畳半タイムマシンブルース』の>>続きを読む

四畳半タイムマシンブルース(2022年製作の映画)

3.8

『サマータイムマシン・ブルース』そのままに、スケールの小さなタイムトラベルの可笑しさを『四畳半神話大系』の強烈な個性のキャラクターにピタリとハメる面白さ!広角に描く京都の風景が素晴らしく鴨川デルタ、山>>続きを読む

放課後アングラーライフ(2023年製作の映画)

4.0

"メザシちゃん"の閉ざした心に慎重に寄り添う友情の絶妙な距離感、海釣り女子会メンバーの何とも言えぬ優しさに癒された。氷塊した心を熱し溶かすジンワリとした緩やかな時間が愛おしい。恋愛なき青春映画の王道、>>続きを読む

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

4.0

ひと夏の冒険旅行、「タケちゃんまたねー」、「ヒサちゃんまたねー」。キン消し、カブトムシ、青いスニーカー、自転車の二人乗り、綺麗なお姉さん。大切な友達との宝物の時間を瑞々しくも鮮明に切り取った秀作。見守>>続きを読む