てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.4

最高級レストランのフルコースメニューに込めた毒性の濃さ。そもそも招待客は何で選別され、何故誰も逃げないのか?色々と?なのだが、コース料理のサプライズな恐怖の甘美さに目が離せなくなっていた。愛情と執着の>>続きを読む

リトル・ブッダ(1993年製作の映画)

2.9

独特の色調、ヴィットリオ・ストラーロの重厚な撮影の美しさは流石だが、セットのスケールが小さく奥行きの広がりが小さい。ベルトリッチ監督のブッダの掘り下げ方が絵本レベルの浅さなのも残念だった。お釈迦様を描>>続きを読む

夜が明けるまで(2017年製作の映画)

3.8

ロバート・レッドフォードとジェーン・フォンダが元気な姿を見せてくれるだけで、もうそれだけでいい!かつての黄金コンビ4度目の共演にして集大成。高齢者の孤独はもっと残酷かも知れないが、二人の溌剌とした会話>>続きを読む

いつか晴れた日に(1995年製作の映画)

4.3

エマ・トンプソンの内なる激情が爆発する号泣に心鷲掴みにされた。抜群に研ぎ澄まされた脚本、大きな樹の上に建つハウスがあんな名シーンに繋がるとは思いもしませんでした、凄い!全編貫かれたトンプソンの静謐とウ>>続きを読む

猫と庄造と二人のをんな(1956年製作の映画)

4.0

どこ吹く風の猫のリリィの目から見える滑稽な男と女。かかあ天下の尻に敷かれ意気地のない庄造と、醜い女のエゴと意地がぶつかり合う先妻と後妻のドロドロ戦争。山田五十鈴と香川京子のズブ濡れバトルの可笑しさった>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

4.1

差別と偏見、暗く長引く不況。かつて栄華を誇った巨大スクリーンの映画館エンパイア劇場に集う人々に焦点を当て、80年代のイギリスを見透し描く。映画産業の衰退から、多分現在では閉館されているだろうと思えるエ>>続きを読む

ジェレミー(1973年製作の映画)

5.0

ニューヨークの冷たい空気感を青白いフィルムで凍てつかせ、ドキュメンタリーのようなカメラワークが小さな初恋を鮮やかに映し撮る。ジェレミーの分厚いメガネのレンズ越しにスーザンを見つめる優しい瞳に、初恋の甘>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(1978年製作の映画)

3.2

「さくらちゃん。あんたも娘の時分憧れていたねぇ、SKDに。入ってたら今頃どうなってたかねぇ?」「さぁねェ…?」おばちゃんとさくらのなかなかに楽しい楽屋オチ。SKDダンサーに扮した木の実ナナがマドンナだ>>続きを読む

日本の悪霊(1970年製作の映画)

2.8

前衛的な実験映画を製作していた頃のATG作品。若き日の黒木和雄監督の斬新な野心が空回りして迷走した怪作。フォークの神様岡林信康のヒッピー風な空気と作品が噛み合わず衝突している(衝突させている?)が、ギ>>続きを読む

続・飢える魂(1956年製作の映画)

2.8

川島雄三監督のベタなメロドラマ。襖あるいはドアを閉めた閉ざされた向こう側の秘め事を、方程式のように繰り返し描く事で作家性をチラリと見せながらも、個性を消した大衆向けに撮り上げたプログラムピクチャー作品>>続きを読む

眠狂四郎 女妖剣(1964年製作の映画)

3.5

眠狂四郎シリーズ第4作。平然と人を斬るクールなキャラクターが確立されたシリーズの心臓部のような作品。美しい魔物の醜さを前面に据えた池広一夫監督の猟奇性が如何なく発揮されている。菊姫の狂気、陳孫との再戦>>続きを読む

アンブリン(1968年製作の映画)

1.0

スティーヴン・スピルバーグ監督の原点、26分ショートフィルム。男女のヒッチハイカーの出会いと別れを描いたロードムービー。若きスピルバーグの完成された映像スキル、『続・激突カージャック』のような俯瞰した>>続きを読む

エレニの旅(2004年製作の映画)

5.0

川の対岸から望遠レンズで村の風景を追う、画面の隅々まで村人を配置する完璧な構図。エレニを迎える馬車を移動撮影で捉え、上流から小舟で運ばれるエレニと合流するこれ以上ない絶妙のタイミング。何度入念なリハー>>続きを読む

とらばいゆ(2001年製作の映画)

3.3

夫婦喧嘩は犬も食わない。プロ将棋の世界に生きる姉妹棋士のピリピリとしたプライベート空間。オロオロと振り回されるパートナー達の腫れ物に触るようなギスギス感が何故か可笑しい。軟弱だが優しい夫を好演した塚本>>続きを読む

貸間あり(1959年製作の映画)

3.8

川島雄三監督の座右の銘、「花に嵐のたとえもあるぞ、サヨナラだけが人生だ」を、この作品の中で桂小金治のセリフで語る。軽妙洒脱なコメディを装いながら、エネルギッシュで猥雑な群像劇の裏にある人生の影を色濃く>>続きを読む

眠狂四郎 円月斬り(1964年製作の映画)

3.5

眠狂四郎シリーズ第3作。斬られた腕が飛ぶ安田公義監督のバイオレンス性が加味され、徐々に猟奇色に傾斜していくシリーズの方向性が固まってきた。焼け落ちる橋をバックに、ケレン味たっぷりに円を描く円月殺法と美>>続きを読む

エルヴィス(2022年製作の映画)

3.4

蛭のようにエルヴィス・プレスリーに喰らいつく悪辣マネージャーのトム・ハンクス大佐がエルヴィスに張り巡らす罠の狡猾さ。無名の頃のステージを一瞬で熱狂させるオースティン・バトラーの眩しい熱演はゾクッとした>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.5

正直、地に足が着いていないマルチバースの世界観が苦手であり、この作品でも最初は怒涛のように畳み掛け続ける異次元への場面展開についていけず疎外感を感じていたが、途中からその展開速度にも慣れ、意外にもカオ>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(1977年製作の映画)

3.2

シリーズ第20作。藤村志保の清潔感のあるマドンナの美しさ以上に存在感を示した大竹しのぶの生活感。中村雅俊は『俺たちの旅』カースケそのままに人懐っこいキャラクター。若いカップルの世話を焼く寅の奮闘努力篇>>続きを読む

電子的迷宮/THX-1138:4EB(1967年製作の映画)

1.0

ジョージ・ルーカス監督の原点、学生時代の自主製作15分短編映画。機械化された未来、デジタルコンピュータに管理されるアナログな人間がユートピアを目指す逃避行。記録用便宜上1.0。

真昼の決闘(1952年製作の映画)

3.5

決闘までの僅かな時間をリアルタイムで描き、人間の自己中心的な正義のエゴを炙り出す。1対4の戦いに町の住民に助成を求める保安官と巻き込まれる事を恐れ尻込みする住民の心の弱さ。町の住民すべてと戦う可能性は>>続きを読む

青べか物語(1962年製作の映画)

4.6

川島雄三監督の信奉者から絶大な支持を受けていた"幻の名作"。埋め立て前の浦安をモデルに、山本周五郎が架空の漁師町"浦粕"として書き上げた私小説の映画化。下世話な欲望剥き出しのエネルギッシュなバイタリテ>>続きを読む

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983年製作の映画)

4.0

竹下景子が寅の一張羅の裾をソッと掴む、その秘めた恋慕の想い。その後の寅の一言にグッときた。寅の大人の分別に溢れた優しさ、竹下景子の複雑な表情を捉えた名シーンだ。ヒロシの父(志村喬)の墓参り、山田洋次監>>続きを読む

嵐の勇者たち(1969年製作の映画)

2.5

もの凄いオールスターで、端役にまで日活スターをズラリ揃える。ボートハウスの3匹のドロボー猫に吉永小百合、梶芽衣子、山本陽子なんて贅沢な顔ぶれだった。裕次郎と渡哲也の殴り合い有り、空と海の銃撃戦とド派手>>続きを読む

眠狂四郎 勝負(1964年製作の映画)

4.0

眠狂四郎シリーズ第2作。市川雷蔵の色気と狂四郎の孤高をニヒルに同化させ、円月殺法にケレン味と様式美を加えた三隅研次監督の補正力。三隅監督独特の広角レンズ斜めから捉えた奥行きの拡がりの美しさ、完璧な構図>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

3.3

パク・チャヌク監督の作家性が遺憾無く発揮された作品とは思うが、ゴチャゴチャと散らかった難解な作品になっている。韓国語と中国語の発音の類似から発する愛の誤解と解釈すれば良いのだろうか?だとすればタン・ウ>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.6

日本の中心に脈々と流れる貴族の血、世襲で継承される上流階級と庶民との階層の壁。格差で遮られたスミ分けされた社会、種別された見えない壁を、貴族の箱入り娘と、地方出身の庶民派娘の視点を交錯させて炙り出して>>続きを読む

ちひろさん(2023年製作の映画)

3.8

他人の孤独に寄り添い、手を差し伸べるちひろの優しさ。孤独と向き合い、孤独は悪い事じゃないと自覚している生き方。ちひろの優しさに癒され次々と再生する心、人の心には寄り添うが、ちひろの心には近づけさせない>>続きを読む

荒野の用心棒(1964年製作の映画)

3.7

ダイナマイトの爆煙の中から登場する"名無し男"ジョーの亡霊のような浮遊感、ガトリング銃を乱射するジャン・マリア・ボロンテの狂気、モリコーネ流"皆殺しの歌"高らかに鳴り響くトランペットと"さすらいの口笛>>続きを読む

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

4.0

モリコーネの映画音楽と共に、キラ星の如く散りばめられた名画の数々をスクリーンで再会しながら、走馬灯のように甦る記憶の懐かしさ。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『ニュー・シネマ・パラダイス』の名ラストシー>>続きを読む

男はつらいよ 翔んでる寅次郎(1979年製作の映画)

3.4

シラケ派女優桃井かおりのアンニュイな気怠さと、正統派の清純女優倍賞千恵子とのバチバチ演技の化学反応を期待したが、山田洋次監督が桃井かおりの独特の雰囲気ごと上手に寅さんファミリーに溶け込ませていた。馴染>>続きを読む

ホット・ロック(1971年製作の映画)

3.5

畳み掛ける絶妙なスピード感、失敗につぐ失敗にめげる暇もない怒涛の急展開、リズムも良い。唐突なオチの薄い脚本でも難なくスピードで魅せてしまうピーター・イエーツ監督の鬼才ぶりが発揮された佳作、アフガニスタ>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976年製作の映画)

3.9

シリーズ第18作。縁側で壇ふみに背を向けた渥美清の後ろ姿が、寅の悲しみでいっぱいに溢れている。哀しみに包まれた異色作なれど、愛と優しさがいつも以上に心に沁みた。シリーズの中では地味な作品だが、とらやの>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.5

息苦しさとせつなさ、希望も救いもない。巷には後期高齢者が溢れ、長寿化の波は年金支給の逼迫と老介護施設の飽和を加速させる。PLAN75制度にある姥捨山のようなドス黒い因習の不気味さが、プラン勧誘マニュア>>続きを読む

薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.0

アポロンの地獄、オイディプスの刃、ジョナス・メカスの実験映画をモチーフに、松本俊夫のアヴァンギャルドな実験を、マリファナに溺れるゲイボーイの姿を通して描いた禁断タブーの野心作。この作品のイメージはブル>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)

3.9

池波正太郎の「食」へのこだわり。彦さんの何も足さない湯豆腐の美味しさが、殺し疲れ、擦り切れた仕掛人の心を温める名シーンが映画にもキチンと描かれている。梅安と彦次郎が二人で鍋をつつくシーン「梅安さんはい>>続きを読む