てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

眠狂四郎 殺法帖(1963年製作の映画)

3.5

眠狂四郎シリーズ第1作。ニヒルな狂四郎のキャラクターがまだ確立されていなく、チラチラとらしくない正義漢が見える。世を儚む冷淡な色気、悪のダンディズムの本領発揮は次作からになる。狂四郎対伊賀忍者群の戦い>>続きを読む

野良猫ロック 暴走集団’71(1971年製作の映画)

2.7

野良猫ロックの解散式をハチャメチャな好き放題で描き殴る。シリーズを賑わした役者たちを揃え、満を持して原田芳雄登場。思いつきのアドリブと若き映画人のエネルギーの猛りを藤田敏八監督が集約した感性の羅列。ま>>続きを読む

母と暮せば(2015年製作の映画)

3.4

死んだはずの息子二宮和也が幽霊になって母吉永小百合の元へ戻ってくる。戦争で引き裂かれた親子の絆、悲劇の熱演は見応えがあった。裏テーマ、この映画は誰の視点で観るかで印象が変わるように作られていて、例えば>>続きを読む

ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

3.4

ロバート・エガース監督の新作、豪華キャストの顔ぶれもあり期待値は高かった。人間を闇に誘うカラスの冷徹な目、人間の底辺にある悪意と憎悪を残酷な獣性と捉えたエガース監督らしい作品ではあったが、闇の掘り下げ>>続きを読む

still dark(2019年製作の映画)

4.1

盲目のハンデを乗り越え、料理人を目指す青年ユウキの無謀とも思える挑戦。七転八倒しながらも、前を向くユウキのひた向きな姿に釘づけになりました。修行でスライスした玉ねぎの山、ナポリタンの何とも言えぬ愛おし>>続きを読む

サスペリア(2018年製作の映画)

4.2

いきなりハイジャックテロとベルリン暴動の市街戦、プロビデンスの瞳の不穏な雰囲気に包まれた不気味な空気に呑み込まれた。キリスト教と魔女狩り弾圧の歴史を、かつてナチスが存在したドイツの地で収容所の悪夢の記>>続きを読む

蜩ノ記(2013年製作の映画)

3.9

小泉堯史監督の真摯な生真面目さと、実直で清廉な武士の生き様が、日本の四季の静謐な風景と見事に溶け合う。「侍としてあるがまま正直に生きる」岡田准一の崇高さ、「鏡に美しい姿が映る事を」と願う役所広司の気高>>続きを読む

アーカイヴ(2020年製作の映画)

3.5

ロボットがアンドロイドになり、ヒトとなる。亡き妻の記憶を搭載した3体のロボット。心まで再現する膨大なアーカイブの記憶。有無を言わせぬあのラストなら、3体(人?)のロボットの能力の差異は自然に受け容れら>>続きを読む

青春の海(1967年製作の映画)

3.5

日活青春スター豪華顔見せ興行。女教師とチンピラの純愛、強気の吉永小百合は惚れ惚れする程美しく、渡哲也の孤独はどこまでもカッコいい。元気印和泉雅子と、甘えん坊末弟山内賢を絶妙に絡ませる西村昭五郎監督の手>>続きを読む

野良猫ロック マシン・アニマル(1970年製作の映画)

3.3

サイケでキッチュ、世間からハミ出たアウトローを独特の世界観で描く野良猫ロック第4弾。交通法規無用、長谷部安春監督は中華街店内にバイクを突入させパチンコ店通路を駆け抜ける。LSD、ベトナム脱走兵藤竜也の>>続きを読む

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

3.6

2つのアニメ制作現場の混乱の裏側を多方向の視点で描いたプチ群像劇。モノを創造する苦悩と妥協、作品を商品として数値化する柄本佑のビジネスライクな立ち位置が、業界の基本的な必要事項を端的に言い表していて物>>続きを読む

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)

4.5

魂の底から絞り出す声を殺した嗚咽、"じゃぱゆきさん"サキの生涯を、サキに憑依したかのように渾身の演技で演じきった田中絹代に尽きる。社会派熊井啓監督が鋭くメスを入れた日本の黒歴史、時代に翻弄され差別と汚>>続きを読む

ニュー・ミュータント(2020年製作の映画)

2.8

X-MENのスピンオフと、アニャ・テイラー=ジョイ目当てで観た。5人のミュータントの卵と管理するドクターの物語。制御出来ない凶器、暴走する自分の超能力との葛藤を描くが、個々の能力をただ羅列しているだけ>>続きを読む

クイーンズ・ギャンビット: 制作の舞台裏(2021年製作の映画)

1.0

ドラマの舞台裏、長めの予告編。アニャ・テイラー=ジョイのインタビュー。ドラマレビューは書きました。記録用便宜上の1.0です。

ビー・ジーズ 栄光の軌跡(2020年製作の映画)

4.0

思っていた以上に最高の映画だった!透き通るハーモニーのポピュラー音楽からファルセットボイスとシンセサイザーのディスコミュージックへの大変換、大成功のキッカケはあの大物ミュージシャンの一言だったとは驚き>>続きを読む

カランコエの花(2016年製作の映画)

4.3

39分の短い時間に凝縮された繊細で濃厚な時間。多感な高校生の現実にLGBT問題が投げこまれ、感受性の違いが引き起こす差別と戸惑い。デリケートな問題を優しく包み込む中川駿監督が掬い上げた高校生たちの傷痕>>続きを読む

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)

4.1

清水宏監督が自宅で世話をしていた戦災孤児たちと起こした蜂の巣プロの傑作。戦後の荒廃した風景の中に孤児たちを溶け込ませ、戦禍の跡の生々しい町、引揚者と浮浪児でごった返す駅舎の、時代を切り取ったオールロケ>>続きを読む

君よ憤怒の河を渉れ(1976年製作の映画)

3.4

公開時、あまりにもブッ飛んだ衝撃の展開においてけぼりを喰らった作品でしたが、あれからン10年、様々な不条理な映画を観てきましたので再挑戦。高倉健の破天荒な逃避行の行方、原田芳雄と中野良子の行動は今観て>>続きを読む

オリエント急行殺人事件(1974年製作の映画)

4.2

豪華絢爛オールスターキャストの百花繚乱咲き乱れる華やかさ、アクの強いポワロを怪演したアルバート・フィニーのケバケバしさ。クセ者揃いの芸達者達から存分に演技を引き出したシドニー・ルメット監督の辣腕振り。>>続きを読む

OK牧場の決斗(1957年製作の映画)

3.4

スタージェス監督"決斗3部作"の1本。アープ兄弟とクラントン一家の私怨、OK牧場の決闘をダイナミックなガンファイトで描く。ドク・ホリデーを演じたカーク・ダグラスの肺病病みの絶望が物語に深みを増し、ジョ>>続きを読む

風の向こうへ(2018年製作の映画)

3.0

映画製作の舞台裏を手持ちカメラで追う、意図なきカットの羅列と見紛うばかりの混沌とした撮影現場。怪童オーソン・ウェルズの未完の遺作は、枯渇した才能に苦悩する映画監督の孤立を描いていて、オーソン・ウェルズ>>続きを読む

2001年宇宙の旅 新世紀特別版(1968年製作の映画)

5.0

宇宙空間に身を委ね、無音と永遠の闇に五感を研ぎ澄まし漂う。タイムワープの光を浴び、全身で体感する宇宙生命の誕生。無機質に機械化した人間と人間化したコンピュータの人間臭さが猿から進化した2つの人類の姿を>>続きを読む

ゴジラ ミニラ ガバラ オール怪獣大進撃(1969年製作の映画)

3.0

怪獣がいない現実世界を描く異色怪獣映画。ゴジラやミニラは救世主あるいは友だちとして一郎少年の夢物語の中に存在する。現実世界では、一郎少年の目線を通した子ども社会の生き辛さを語るが、鍵っ子問題等大人の都>>続きを読む

ポーラー 狙われた暗殺者(2019年製作の映画)

3.5

定年(?)を迎える殺し屋の企業年金(?)システムを巡り、雇用先の組織と血で血を洗う殺し合いという荒唐無稽な発想の面白さ。孤高の殺し屋"ブラック・カイザー"を楽しそうに演じたマッツ・ミケルセンに尽きます>>続きを読む

アムステルダム(2022年製作の映画)

3.3

お伽話のようなファンタジーかと思いきや、ロバート・デ・ニーロの演説のリアルな実話性を孕んだ現実と絵空事のような空想が混在する不思議な作品だった。デヴィッド・O・ラッセル監督の人徳か豪華オールスターキャ>>続きを読む

燃えよドラゴン ディレクターズ・カット版(1973年製作の映画)

4.0

空前のドラゴンブームを牽引した不滅の金字塔。ブルース・リーの鍛えられた身体から繰り出されるアクションのキレ味の鋭さは、この作品に凝縮されている。怪鳥音を発し、目にも止まらぬ速さで振り回すヌンチャクに歓>>続きを読む

クライング・ゲーム(1992年製作の映画)

5.0

LGBTなんて言葉がなかった時代に、セクシャルマイノリティにスポットをあてて、新しい映画のミューズを誕生させた快作でした。この作品の鍵を握るディルを演じたジェイ・デヴィッドソンの内面から滲み出る妖艶な>>続きを読む

野良猫ロック セックス・ハンター(1970年製作の映画)

3.6

シリーズ第3弾、梶芽衣子の堂々たるヒロイン振りと、若き日の安岡力也に目を奪われた。ホタテマンからは想像出来ない、スリムな体躯から放たれるアクションのキレの鋭さには目を見張った。敵役の藤竜也も良い、コン>>続きを読む

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)

3.6

コロナ禍、養老介護、リストラ、社会的弱者差別。守られるべき社会ルールに裏切られ続ける不条理の現代、世に蔓延る理不尽さを一身に背負い、怒りの矛先に困惑し、追い詰められた表情を見せる尾野真千子の怪演に尽き>>続きを読む

プリティ・ベビー(1978年製作の映画)

3.7

無邪気な少女のあどけない笑顔と、ゾクッとする程妖艶な大人の顔が交差する。美少女ブルック・シールズの素顔の変化を捉え、禁断の少女娼婦に仕上げたルイ・マル監督の危うげな野心。引き離された幼き夫婦を悲劇と見>>続きを読む

大巨獣ガッパ(1967年製作の映画)

2.8

ガッパの親子愛の絆の深さの前では、エゴ丸出しの日本人はもう完全に悪役だ。身勝手な人間の粗暴さが、動物虐待レベルの残酷さで描かれている。チープな程擬人化されたガッパの涙の抱擁、何故か巨大ダコを咥えて登場>>続きを読む

ワーロック(1959年製作の映画)

3.2

ワーロックの町を無法者から救った保安官の銃の力による正義。その銃の脅威に怯える住民達の正義が変化し、住民のズレていく視点が救世主ヘンリー・フォンダを悪として邪魔者のように追い詰めていく。少々解りづらい>>続きを読む

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)

3.0

ナイル河の雄大で美しい景色、豪華クルーズ客船の水面下で繰り広げられる弱肉強食の残酷性の対比が、密かに潜む陰謀の不穏な影を予見する。アガサ・クリスティの代表作だが、希薄な人間描写が、登場人物たちの事件の>>続きを読む

百円の恋(2014年製作の映画)

4.2

一子の本気度を鮮やかに体現した安藤サクラの本気。「勝ちたかった」と泣きじゃくる一子の可愛さったらない!公開当時大絶賛していた『百円の恋』。『アンダードッグ』を観てからの、この作品との再会は必然だった。>>続きを読む

アンダードッグ 後編(2020年製作の映画)

4.3

森山未來と北村匠海、アキラとリュータのラストマッチの壮絶などつきあい。前編から続いていた耐えに耐えたチロチロと燃えていた導火線が一気に加速し爆発する様な壮絶な殴りあいだった。まさに激闘、凄まじく強烈な>>続きを読む

アンダードッグ 前編(2020年製作の映画)

3.9

峠を越えたボクサー森山未來の惨めな負け犬っぷり。二世タレント勝地涼の真剣な意地が交差した執念の戦いの歓喜と失望。戦いに臨む両者のバックボーンの描き方が秀逸で、リングの攻防に両者を応援する不思議な感覚を>>続きを読む