この作品の解説として「予測不能な物語」と書いたものもみたが、実際前半と後半で登場人物の印象も、言動も全く変わる。その展開がスリリングなのだが、映画を見終わって考えると、エピソードの一つ一つが周到に作ら>>続きを読む
予告編をみて、性暴力がテーマという先入観を持っていたのだが、そう単純に語ることのできる映画ではない。しいていえば、第2章の台詞にあった「人はすべて罪人」という台詞が、物語のテーマに近いものかもしれない>>続きを読む
三田村というサラリーマン(芥川比呂志)と、実家で歯科医として働くその妻幸子(高峰三枝子)、三田村と先妻の間の子供、三田村の妹(高峰秀子)という家族が、三田村の転勤に際して、それぞれ自分の人生にとって何>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
チラシの作品紹介では、ヒロインのジャンヌは、「思春期の息子と共に」、「‘’平凡な‘’暮らしを続けている」とあるのだが、映画の時系列的な印象は少し違う。映画は、まず彼女が家事の合間に男を家に迎え入れると>>続きを読む
シネマヴェーラ渋谷で。予想以上の傑作だった。冒頭のヒロイン(マーラ・パワーズ)が男に追われる場面の影や音を使った演出、その後の彼女の怯える演技が見事で、彼女が家を出た後の展開(心の傷は容易には癒されな>>続きを読む
ラピュタ阿佐ヶ谷で。再見。大人たちの利益のために利用される(「生け贄」と呼ばれる)若者を描く。初見の印象は登場人物が泣いてばかりいる、気が滅入る映画という印象だったが、見直して見ると、悪くない。特に風>>続きを読む
国立映画アーカイブで。「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ作品だけあって、エピソードにやや月並みな感じはあるが、シナリオは緻密に作られているし、演出も秀逸だ。「ガールズフッド」という題名だが、女子の友>>続きを読む
ラピュタ阿佐ヶ谷で。ウェルメイドな喜劇として、素晴らしい出来映えだ。親思いのOLの岩下志麻、モダンな医学生の鰐淵晴子、下町娘の倍賞千恵子と三者三様のキャラクターが、女優陣、とりわけ実質主役に近い鰐淵晴>>続きを読む
ロバート・ライアン演じる街の顔役の狂犬ぶりがいい。短気かつ暴力的すぎて、元ネタらしい「ビッグ・コンボ」にあったジリジリとしたサスペンスや恐怖感はなくなっているが、これはこれで面白い。ウィリアム・タルマ>>続きを読む
花嫁シリーズの中でも出色の面白さのある作品。倍賞千恵子の可愛さはもちろんだが、バーのマダム淡島千景をめぐって鞘当てを演じる伴淳と三井弘次、台詞回しの小気味良い桂小金治など、ベテランの芝居で面白さが増し>>続きを読む
アテネ・フランセ文化センターで。ある種の戦争映画なのではという予感を持って見始めたが、少し違ったかもしれない。確かに機動隊に対峙する学生や農民の姿や、投石や自身の体を使った抵抗の姿は描かれているのだが>>続きを読む
テアトル・クラシックの上映で。ジュデイ・ガーランドの唄が素晴らしいミュージカル映画の傑作。アメリカが大国になりつつある20世紀初頭の雰囲気が何とも楽しい。ジュデイが恋人とパーティーの終わった屋敷の電気>>続きを読む
シネマヴェーラ渋谷で。冒頭の階段での銃撃戦(撃たれて落ちてくる警官!)から、少年院で少年たちに浴びせられる水、遠く妻の葬列を見送る男、最後の神の声のように聞こえてくる判決を聞く弁護人ボギーと被告の姿ま>>続きを読む
素晴らしい映画だ。マイベストでは、昨年公開された外国映画の中で二番目(一番はペイン・アンド・グローリー)。一言でいえば、18世紀を舞台に、束縛の多い不自由な環境の中でいきる女たちの、芸術への情熱と愛を>>続きを読む
ラピュタ阿佐ヶ谷日活映画バイプレイヤー特集で。冒頭の場面がとてもいい。夜の製鉄所を煙を吐いて走る機関車、運転席に立つ小杉勇の姿、流れる霧、汽車の光に照らされた走り去る男たちの姿、突然響く銃声、闇に隠れ>>続きを読む
奇想天外映画祭アンコールで。予想外に普通の、面白いサスペンス映画だった。叔母の経営するホテルを訪れた若い女が、ハンサムな写真家と視線を合わせる場面からただならぬ雰囲気が漂う。誰もいないはずの部屋から聞>>続きを読む
ハード・ボイルドというに相応しい秀作ミステリー映画。冒頭殺人現場でニコール・キッドマン演じる刑事が謎の言葉に始まり、過去の事件との関わりなど謎がテンポよく提示されて、興味をひく。過去と現在を交互に描く>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
飯田橋ギンレイで、再見。1990年代の韓国を舞台に、家族や友達、恋人、先生などの人間関係を丁寧に描いた素晴らしい作品。主人公のウニの父親は、叱責と命令ばかりで、兄には暴力もふるわれている。学校では、先>>続きを読む
蒼井優がとにかく素晴らしい。「あせもができた」というときの可愛らしさは、高橋一生演じる男だけでなく、観客をも虜にする。最後の方(高橋一生が彼女の顔に触れるところなど)では、ほとんど神々しいほどで、小津>>続きを読む
4時間の間全く飽きさせない秀作。男(森崎ウィン)が、踏み切りで立ち往生した女(土村芳)を助け、なり行きで二人は親しくなるが、映画前半で男が、後半で女が自分の相手に対する本当の気持ちに気づいてゆく。土村>>続きを読む
怖い映画である。親と別れた少年が、ナチスとソ連が戦う東欧の土地をさすらうのだが、拾われては土地の住民に苛められる。少年を苛めるのが、普通の住民であるのが怖い。弱者がさらなる弱者を苦しめるという構図であ>>続きを読む
両親の事故死を契機に、叔父の所有するタワーマンションに住み始めた女の変化を描く。恐らくは人に合わせる流されやすい優等生的なタイプだったヒロイン(多部未華子)が、叔父夫婦との関係の変化、婚約者ではない男>>続きを読む
シネマヴェーラ渋谷の秋吉久美子特集で。久しぶりの再見だったが、思っていた以上の傑作だった。サイコ・スリラー、あるいはサスペンス映画風の物語の中で、三つの形の恋愛を対比的に描くという構想が見事。草刈正雄>>続きを読む
PFFで。ヒューマン・トリロジー3部作を今回順番に見ることができた。その最後の作品だが、ロイ・アンダースンの作風に慣れたこともあり、一番面白く見られた。他の作品同様不幸な人たちが多く出てくるのだが、こ>>続きを読む
PFFで。少年少女の恋愛を描くのに、原付が印象的に使われている。最初のデートで、二人で原付を押して歩く微妙な距離感や、仲違いし少年が一度は彼女を置いて原付で去った後戻ってくる場面など、詩情が
漂う。何>>続きを読む
シリア政府軍と反体制派が激しい戦闘を繰り広げ、空爆が日常化したアレッポで、自由な未来を信じ、医師として、ジャーナリストとして生きる夫婦とその子どもを描いたドキュメンタリー。カメラが向かう先に何があるの>>続きを読む
「キングコング」のコングの鳴き声や、「トップガン」のエンジンの爆音がどう作られたかを教えてくれるとともに、映画史について知見を与えてくれる作品。コッポラからルーカス、スピルバーグに至るハリウッド・ルネ>>続きを読む
アテネフランセ・文化センターのドロシー・アーズナー特集で。セクシーなダンスでブロードウェイで人気を得、金持ちの男を誘惑するダンサーのバブルス(ルシル・ポール)と、芸術志向で真実の愛を求めるダンサーのジ>>続きを読む
アンスティチュ・フランセのピコリ追悼上映で。追悼にふさわしい何ともピコリが魅力的に見える作品だ。河でザリガニを採る姿に、ピコリの自由闊達な魅力が現れている。彼は、「河と自然なしでは自分は生きられない」>>続きを読む
国立映画アーカイブの松竹100年特集で鑑賞。スケールの大きな伝奇時代劇の佳作。映画の中盤城の絵図面の争奪のあたりから、俄然面白くなる。取りつぶされた大名の姫を演じる美少女然とした鰐淵晴子が拷問にかけら>>続きを読む
新文芸座の幕末映画祭で。「隠れた傑作」というチラシの言葉通りの映画だった。岡田以蔵(島田正吾)が、藩の勤王派に利用されたあげく、見捨てられ困窮のあまり、仲間を裏切ることに…という話だが、彼が新撰組の詰>>続きを読む
アンスティチュ・フランセのオノレ監督特集で。ヒロインの母親マドレーヌの若き日を演じるリュディヴィーヌ・サニエが何とも魅力的だ。靴屋の店員なのだが、靴をスカートに隠して持ち帰る姿も、娼婦と思われて値段を>>続きを読む
国立映画アーカイブの松竹100年特集初日の上映作品。島の旅館の娘(坪内美子)が、借金で身売りを余儀なくされ、恋仲の船員(江川宇礼雄)と別れるが、出航後島を訪れた失意の学生により救われて…という話。娘が>>続きを読む
ヒッチコックの映画では、しばしば祝祭の場や娯楽の場で、事件が起こる。多くの人々が楽しみ、笑っている空間に悪意が入り込むことで、その怖さが浮かび上がるのだ。この映画の最初の犯行シーンとラストが遊園地を舞>>続きを読む
新文芸座で観賞。久しぶりの再見だったが、予想以上の秀作だった。若い日の叶わない恋を、切なくも甘い感情と、悔恨をもって描いている。その象徴ともいえるのが、何度か繰り返される「見送る」という動作だろう。好>>続きを読む
映画館の自粛が終わった後最初に見た新作映画。「17歳の高校生は完璧な優等生か、恐ろしい怪物か」という興味を入口に、現代の社会で黒人の置かれている状況を明らかにしていく。終盤のケルビン・ハリソンとオクタ>>続きを読む