ジャンさんの映画レビュー・感想・評価

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音楽(1972年製作の映画)

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フロイトの自由連想法とは全く違うし、錯語もとってつけたようだし、三島の原作はこうじゃないはずと信じたいが、この適当な感じもなぜか魅力になる不思議。

遊び(1971年製作の映画)

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男が「よおし、抱くぞォ!」と言って結ばれ、衣服を脱ぎ濡れた白い下着姿で空を見上げ、頼りない船尾に捕まり不器用にバタ足する男女を見ていると、もはや苦笑を通り越してにんまりとしてしまった。

しとやかな獣(1962年製作の映画)

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オープニングクレジットの間、夫婦と思われる男女が二人で家具を移動させる息のあった動きを遠くから捉えるショットを微笑ましく見ていると、それが後に来訪者に質素な暮らしを装う企みの動作であることが分かる。こ>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ブランドンの新作ということで期待して見に行ったが、意外にも軽めのホラーという印象。本来の自分かクローンか分からなくなるとか(このモチーフはセリフであっさりとすかされる)、主人公が劣等感の奥深くに沈潜し>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

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何よりクリストファー・ウォーケンを見れて嬉しくなったし、ティモシー・シャラメの線の細い体格とその裏に芯がありそうな感じが存分に活きる役でそこが一番の魅力だと思う。
顔の寄りのショットが多かったり、砂漠
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情熱の航路(1942年製作の映画)

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母親に抑圧された女性が自らの意思と選択を獲得する話という意味ではもちろん、男女が恋愛ではなくフレンドシップ(のようなもの)で結びつくエンディングの先進性には驚いた。男がタバコを2本口に加えて火をつけ、>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

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水面の波紋とそこをゆっくりと走る船のリズムの調和(薪を割る動作と布をはたく動作のリズムも?)に身を浸す幸福。ミルクを運ぶ女の子に赤いワンピースを着せるなど、随所のちょっとした工夫に心を掴まれた。

落下の解剖学(2023年製作の映画)

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一生懸命に工夫して作った脚本で押し切った映画という印象だが、この内容で2時間半はさすがに長すぎると思う。個人的には、主人公の女性をもう少し突き放した視点で語るというか、殺したかもしれないと薄ら寒くなる>>続きを読む

季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

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活気ある過去と静寂に満ちた現在の対照や、かつての出来事への郷愁はそれだけで大好物だが、人物たちを平等に切り取っていくフレーミングに何より癒される思いがした。
『ペイン・アンド・グローリー』や『とらわれ
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ダニエル・シュミットのKAZUO OHNO(1995年製作の映画)

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薄く水が張った地面を彷徨するように踊る。そこに重ねられる水の音の付加をどう考えればよいのか。途中で挟まれる自宅でメイクなしの素顔で踊る姿をどう考えればよいのか。

デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

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現実に過去が侵食してくるというと、シュミット映画の無表情で緩慢な動きをする男女たちの夢幻的な存在様態はそもそも通俗的な時間を超越していたじゃないかと思うし、今回もそれを観れるんだろうと期待して行ったの>>続きを読む

パズル(2013年製作の映画)

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さすがに早回しは奇を衒ってる感があるなあと思っていたところに、怒り狂った高橋和也が屋上に行くあのショットは笑った。狂った野村周平と狂った高橋和也の戦闘からの二人仲良く落下という展開も良かった。
「一回
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Helpless(1996年製作の映画)

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バイクに乗る人物をロングショットで、時にロングの横移動で撮る画の素晴らしさ。電車に乗っている片腕の光石研も、ビール瓶を落とす、瓶が転がっていく、それを足で止める、これだけで傑作に違いないと思わせる。喫>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

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男性に対する嫌悪とその裏側にある攻撃性をベースにしたホラー。身内の転落死、それをきっかけにした森への移住、鹿の登場など、『アンチクライスト』を連想するものの、テーマとしては全く別。
縦に真っ二つに切ら
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ゴダール・ソシアリスム(2010年製作の映画)

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馬やらロバやらアルパカやら(動物詳しくないから正確には分からない)動物が多ければ、子供のショットも多いのが意外。帽子を隠しておきながら堂々と知らないと言ってのけるいたずらっ子ではあるものの、子供が母親>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

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ホテルの部屋の窓近くに女性が立っており、窓から入る光を受けて女性の影が左に延びている。窓際に立ってタバコを吸っていた男性は、近くのベットに座りカメラに黒い背中を見せたかと思うと、そのままベッドに横にな>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

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冒頭、妻が無駄のない動きで家事を一つ一つこなしていく様子を固定ショットで捉え、しかも今度は朝食のパンとサラミの支度をする妻と娘の息のあった連携を真上横移動のカメラで捉える。『少女ムシェット』におけるム>>続きを読む

神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版(1950年製作の映画)

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再見。冒頭、雨が降る中、画面の奥から僧衣を纏った男たちが手前に歩いてくる、その移動の画だけでなぜか幸せな気持ちになる。その理由は、フランチェスコが他の修道士たちと等価に映し出される「集団の映画」として>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

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文学の引用や女優らの写真、そこに添えられるゴダールの言葉や声、そして静止画の連続に軽やかに差し込まれる『アワーミュージック』の一場面。ゴダールにより接続される数々の素材が呼応しあい、あるいは反発しあう>>続きを読む

その夜の妻(1930年製作の映画)

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銀行強盗のシーン、拳銃だけを捉えたショットの切れ味が素晴らしい。カメラを横移動させて捕えられた男たちを映していく演出も、後期の小津映画を考えると贅沢すぎるショットだと言える。両手に拳銃を持つ妻の頼りな>>続きを読む

ディア・ハンター(1978年製作の映画)

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ベトナムに行く前の結婚パーティー兼送別会の一連のシーンが良かった。ぐるぐると回りながらダンスする男女は、『天国の門』の素晴らしい円環のダンスシーンをしっかりと準備している。ベトナムのシーンも大木に捕ま>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

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ペトラが終始部屋の中に閉じ込められた室内劇である一方、彼女はさらに鏡などのフレーム内フレームに閉じ込められている。しかし最も痛々しいのは、終始セリフを奪われているだけでなく、被写界深度の深い画面で後景>>続きを読む

赤い河(1948年製作の映画)

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オープニング、インディアンにジョン・ウェインが拳銃を放り投げると、インディアンがウェインに飛びかかり、2人は水中で揉み合うことになる。クライマックスも、銃で撃ち合う展開になるかと思いきや、ウェインはモ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

不条理受難劇マニアとしては面白く観れた。特に第3幕では、ホアキンの未来まで幻視するアニメーションとのマリアージュが見る側の現実感覚を特段に失調させる。
最後に急速に親子問題に回収されていくが(伏線は張
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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幸福な映画。上白石萌音と松村北斗の人間的な魅力を引き出す演出の妙。もちろん役者としての素晴らしさも言うまでもなく、特に『舞妓はレディ』で圧倒的な新人俳優としてスクリーンに登場した(その前から少しの映画>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「特殊性癖」について優等生が一生懸命考えて作ったような話。水に性的興奮を感じる人がいるのかは正直分からないが、「正常な人」の理解可能・受容可能な範疇に落とし込むことの暴力性にも目を向ける必要があるので>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

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冷蔵庫を空にするために、残っている野菜でスープを作り配って回る主人公という性格づけが素晴らしい。ジャームッシュの映画のように、主人公が色んな場所を巡って、色んな人と会話を繰り広げていく。やはり、苔の研>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

異性といる娘を盗み見したり、病院にズカズカ侵入したり、おばさん(愛称の意味を込めて)特有の図々しさが良かった。娘に気を取られて、送ってくれた親切な女性との会話が雑になったり。
男がいなくなった時の娘の
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ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

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再見。主人公アンドレイは心臓病とのことだが、世界に対する絶望それ自体に苦しんでいるように見える。彼に去来する子供の頃の記憶も、懐かしさを喚起する(=ノスタルジー)というよりは、事実として想起されるだけ>>続きを読む

Bico(2004年製作の映画)

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風景のショットが沢山続いた後に人間が映るとなんか嬉しくなる。そこに犬やら牛やら羊まで出てくるし、老女が羊毛を糸に仕立てたり芋の皮を器用に剥いたりするのを見る幸福。

女地獄 森は濡れた(1973年製作の映画)

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血まみれになりながら乱交する画面が相当ショッキング。その後、裸の男二人の死体を食台に乗せたまま三人が食事するのを俯瞰で撮るというのも訳が分からない。(もちろんいい意味で。)
舞台となる洋館が和の雰囲気
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ステラ・ダラス(1937年製作の映画)

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この話をたった106分でこれだけ豊かに語れてしまう技量には感服する。ステラが身を引くと決めてからは名シーンのつるべうち。最後の結婚式のシーン、窓越しの娘のショットからそれを見るステラの顔に切り返す、こ>>続きを読む

ガス燈(1944年製作の映画)

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神経薄弱に追い込まれる主人公の存在はフィルムノワール的とも言えるが、明らかに夫の罠に嵌められていると分かる作りになっている。もしこれをヒッチコックが撮ったら、途中までどちらか分からないつくりにしただろ>>続きを読む

噂の二人(1961年製作の映画)

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「つらいつらい」と叙情性に叙情性を上塗りするような時間が長すぎてさすがにしんどかった。感情的な演技やクロースアップに頼るのではなく、ちょっとした視線や身振りで示せばもっと短い時間で終わるだろう。一方で>>続きを読む

泥棒成金(1954年製作の映画)

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ケイリー・グラントが警察から逃げるシーン、花を使ったドタバタの逃走、ブレーキ音を響かせながら高スピードで車を運転するグレース・ケリー、『めまい』を準備するかのような抑えた照明と外の花火が室内を照らすグ>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

マッド・サイエンティストとその犠牲者の話か、あるいはまた『籠の中の乙女』的な話か(前に見たけどよく覚えてないなあと思ってたけどどうやら見てない)、とか思っていると、あっさり屋敷から出ていく。結局は自由>>続きを読む

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