このレビューはネタバレを含みます
ノスタルジーの罠。
過去に意識を向けるうちに、遡行的に「思い出」が作られていく。序盤の演出が秀逸で、時間の境が曖昧な編集が観客を回想に引き込むのだが、それはヌードルスが語る物語の一つに過ぎない。
ヌー>>続きを読む
ジャンルが変わっていくのではなく、法廷劇の中にメロドラマや若者の非行モノが組み込まれている構成。
男が挫折するメロドラマは、ニコラス・レイって感じ。『孤独な場所で』しか観てないけど。
陪審員や裁判官、>>続きを読む
ヘナヘナと橋を渡る少年を見るおとっつぁんの表情が好き。
それまでのロングショットではわからなかった人間味が一気に見える。
こんな高く登っていたのかとわかる木登りの編集。
今はいない人、かつていた人。
証拠性が写真や映像には常に遅延を伴っているのに対して、かつてそこで聞こえた音はダイレクトに語りかけてくる。耳馴染みの良い西島秀俊の朗読や、素朴なインタビュイー達の語りと違>>続きを読む
滅茶苦茶格好良い。
最初に2時間の物語と提示してるのに、ランタイムは90分だから、どうやって省略するのかと思っていたら、観客の時間感覚を手玉に取るかのようなリズムにやられた。超楽しかった。
カラーとモ>>続きを読む
ミゲルの暮らす共同体や施設を取り囲む柵とその後ろに広がる海岸が印象的。
ミゲルは、帰る場所ではなく、むしろ向かう場所を喪失しているかのよう。
映画の中にしかいなかった父親について語るのが、2人のアナを>>続きを読む
エリセ映画の境界は、横に伸びる壁ではなくて、画面手前から奥に、もしくは垂直に伸びる。
超えるものではなく進むものであり開くものである。
画面の美しさよりも俳優の表情の方が印象的。
レストランで顔を上げた父の表情が忘れられないと語るモノローグは既に映像に遅れていて、画面は父親ではなく彼が書いていた手紙を映す。
言葉では語ろうとすれば何も>>続きを読む
面白かった。そもそも映画見るってデジャヴュだよなと思いつつ、語りが映像としてデジャヴュされる快感は新鮮だった。
ダニエル・シュミットの描く夫婦ドラマは、美しいけど怖い。
最初から主人公2人は、隠し合い>>続きを読む
誰かの社会的立場を曖昧に(不可視に)したままの状況に加担しないための「説明」の声が、そのままプラネタリウムを彩る「良い」声になる。
良い声が、良い時間が共有されるにあたって、最早同じ場所や時間を神経質>>続きを読む
ベルリン映画祭で鑑賞。
ハンター・シェイファーの所在なさげな佇まい。
前半の音楽や編集の盛り上げ方とか格好良かった。
※
パレスチナへの連帯を表明した映画祭の参加者に敬意を払いたい。
結局その意>>続きを読む
モノガミーや結婚という制度と友情という関係性の衝突についての寓話だと思った。
多様なテーマを次々と出し入れしながら物語を展開し続けることのできる「ジャンル映画」のポテンシャルの強さ。
ネタバレになるの>>続きを読む
キャンプな演出と静かなアメリカの風景。
ゴシップ的に消費される状況と共に描かれる「スキャンダラス」な題材。
これカルチェラタンで見たのは面白い体験だったかも。
話はよくわからない部分が半分以上あるので>>続きを読む
サスペンスというよりは歪んだ男性性からの解放。
密室と外界を繋ぎ、密室で起きたことの証拠となるのが写真。
家行ったらすぐWi-Fi確認しないか?とか、ドイツ人はもっと英語話せるのでは?とか疑問は尽きな>>続きを読む
ライオネル・リッチーの場面がとても良い。
クソ最高。
切り返しショットがいちいち強い。
「Du bist Maria」には、映画の原初的な感動がある。
精緻なミニチュアで作ったメトロポリスを誇らしげに見せる序盤のシークエンスで心を掴まれるし、>>続きを読む
ジョゼフ・ゴードン・レヴィット、久しぶりに見た。
クライマックスの曲を聴くと元気が出る。
主に70-80年代のヴェンダースが提示し日本で流行した文化達が、リバイバルされるどころか「パターン化」とまで言われている2023年に、再びヴェンダースが生活を提示すると「文化的」と捉えられる現象。
実>>続きを読む
再鑑賞
感動する。映るもの、聞こえるものの洪水。
アンリ・アルカンの撮影や、ユルゲン・クニーパーの音楽などがそれ単体で注意を惹きつけてくれるのは間違いないが、でも個々の要素が「街全体が移動している都市>>続きを読む
モノローグとダイアローグの境目が曖昧で、どちらもナラティブの中に回収される。
自作の詩の朗読や夢の話、孤独とは何かなどをまずテキストとしてペーター・ハントケが作り上げた上で、それを俳優達が声に出して発>>続きを読む
再鑑賞
高校の時に地元のシネコンで見て、New Orderとか'Til TuesdayとかSiouxie & The Banshes辺りの80sの洋楽を初めて知ったので思い入れがある。
「Blue M>>続きを読む
労働とその合間に断片化された生を今描くことの意味は間違いなくあると思う。
ジャームッシュの『デッド・ドント・ダイ』が引用される、一見ただの楽屋オチのような場面について考えてしまう。
詩や言葉が個人の内>>続きを読む
本作のレビューで散見される「型に嵌められない」とか「性のゆらぎ」などの表現は、バイナリー的に分節化された秩序の中でルシアが自らのジェンダーアイデンティティを示す言語を持た(て)ない状況を不可視にしてい>>続きを読む
芸能界における権力構造を盾にした暴力に対して、軽妙洒脱な物語で立ち向かう。
落とし前の付け方すら雑にしか描かれない点も含めて抑圧者は書き割り的な悪に還元し、被抑圧者の立ち回りだけを描くのが本当に良い。>>続きを読む
全画面でワイドスクリーンが決まってる。
正攻法におしゃれな映像を作れるくせにストロベリーの家の幻想性にしか使わない。
楽しい。無機物が有機的に見えてくる不気味さが気持ち良い。
逃げがないスラッシャー描写は、ジャンル映画としての強度を維持しつつ、この物語世界の殺伐さと寄るべさなさも微かに保っている。
アリソン・ウィリア>>続きを読む
定型的な主題に見えて実は視点が複雑に絡み合ってもいるという脚本を、笑えて泣ける演出の積み重ねで魅せてしまう手練れの技。
ノスタルジックな世界をロトスコープで塗りつぶした『アポロ10号 1/2』の実験性>>続きを読む
1970年初頭のパレスチナ情勢ということで身構えて見たけど、意外と腑に落ちる。
勿論耳馴染みのない固有名詞も多く出てきてそれは勉強するしかないのだが、ゴダールが「ここ=フランス」と「よそ=パレスチナ」>>続きを読む
「戦争が終わったんだ」と呟く森山未來が人間に見えない。
扉=境界を開くスリルが張り詰めるからこそ、あの閉じた別れが切ない。
焼け跡や暗闇の中にまさに火影として顔を覗かせる人間性。
エンドクレジットでイ>>続きを読む
トシェクにとって、自らの鬱屈や生きづらさを最初に解放してくれるアイテムとしてファッションがあるので、それらが魅力的に、あるいはモチーフとして印象的に登場するのは必然性があると思う。
常識や慣習が突き崩>>続きを読む
水面を挟んだ無言の超能力バトルは静かにアガる。
団地というロケーションはもう少し使って欲しかった気もしなくもないけど、編集とサントラでノリノリに怖がらせてくれるので満足!