イシダコさんの映画レビュー・感想・評価

イシダコ

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ヒューマン・ボイス(2020年製作の映画)

4.0

さすがの洗練度合い。抜群のルックと舞台設計(家の外がスタジオ内になっているのはシンプルに主人公が囚われていることの象徴だろう。見たまんま)。話はほとんど“ペトラ・フォン・カント”の三幕目と一緒。言うま>>続きを読む

審判(1999年製作の映画)

3.5

『オールド・ボーイ』以前の製作ながら、横スクロールのカメラワークなど尺26分の中にチャヌクのトレードマークとも言うべき技が散見できる。ブラックな笑いとグロテスクな特殊メイク。クライマックスの展開はトリ>>続きを読む

THE MOON(2023年製作の映画)

4.0

+0.5オマケ。『神と共に』が本当につまらなすぎて全く期待していなかったのに、逆に期待して臨んだ『密輸』よりも面白くて意外すぎた。改めて映画は実際に観てみるまでわからんもんだな、と。とくに韓国映画の場>>続きを読む

あるスキャンダルの覚え書き(2006年製作の映画)

4.0

メイ・ディセンバー事件を参照しているということで初鑑賞。脚本と俳優陣の演技合戦は申し分なし。それに比べるとちょっと演出に物足りなさを感じるが、余計なことはとくにしていないし、階段を使って二人の差を表し>>続きを読む

楽園(2023年製作の映画)

3.5

あらすじを読んでもらえればわかるように、まずもってプロットが秀逸。すでにキャラクター同士の葛藤が感じられてドラマチックなメロの気配が漂っている。ただ終盤でそれもおじゃんになってしまったというか、そこに>>続きを読む

ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(2023年製作の映画)

5.0

最高、超好き。でも長編で観たいとかそんな野暮なことは思わない。30分の尺で完璧に語り切っているところに魅力がある。表情の変化にすべてが表れている主演二人の好演、色合い抜群な衣装、シネスコに映えるロケー>>続きを読む

密輸 1970(2023年製作の映画)

3.0

うーーん、決してつまらないってほどではないけれど、ここ10数年のスンワン作品の中ではいちばん下の部類。話の進行や展開のために(主人公の行動のための動機づけとして)、ある脇の海女キャラを単なる道具扱いな>>続きを読む

メイ・ディセンバー ゆれる真実(2023年製作の映画)

4.5

ほとんど完璧。笑えて奇妙で哀しくて怖く、示唆に富んでいるシーンやショットで溢れている。ジョン・ウォーターズ、なんでこれ去年のベスト10に入れなかったんだろ? ぜったい好きなはずなのに。あとトッド・ヘイ>>続きを読む

ローラ(1981年製作の映画)

4.5

むっちゃオモロい。上半期いちばんリピートした映画。資本主義の体現とも言えるマリオ・アドルフが、主演のバルバラ・スコヴァ以上に尋常じゃない魅力を放っている。自分に対して敵意を向けている者をも手中に収めて>>続きを読む

フィリップ(2022年製作の映画)

3.0

喪失の傷から女たちを次々とヤリ捨てていくこじらせに『2046』のトニー・レオンに近いものを感じて鑑賞。動きまわって疲れ果てたい主人公の欲望に基づいているだけあって、とにかく長回しでの移動撮影がやたらと>>続きを読む

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作の映画)

2.5

いい話すぎる、悪い意味で。劇伴の使い方もなんかシラけた。アレクサンダー・ペインってあんなあざとかったっけ?

蛇の道(2024年製作の映画)

3.5

いかにも黒沢映画な淡々とした進行に若干の物足りなさもあるものの、柴咲コウ演じる小夜子のブレなさに魅入った。そもそも復讐にとっていちばん大事なのは一度実行すると決めたらそこから何があっても一切揺らぐこと>>続きを読む

チャレンジャーズ(2023年製作の映画)

2.5

『ボーンズ アンド オール』よりはまだマシぐらいの面白さ。とくだん目新しいことは何もやっていないし、三角関係であっち行ったりこっち行ったりするぐらいで解放的なモンを描いた気にならないでほしい。展開含め>>続きを読む

AGGRO DR1FT(2023年製作の映画)

2.0

上映前の舞台挨拶でハーモニー・コリンがこれから観る観客に向けた「感覚的に楽しんで」という言葉、若干の自信のなさというかある種の予防線のようなものも受け取ったが、実際に観てみると全編サーマルレンズ撮影(>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.0

終盤、拍子抜けしてしまうような省略というか展開もあるものの『怒デス』に比べたら全然面白い(前作はテン年代ワースト級のガッカリ)。クリヘムがこんなに魅力的だったことが未だかつてあっただろうかというぐらい>>続きを読む

ドライブアウェイ・ドールズ(2023年製作の映画)

3.0

まあまあ。よくもわるくも全てにおいて過剰。いい意味でのくだらなすぎる真相に引っ張られて見過ごしがちになるけど、ヘンリー・ジェイムズの複数回に渡る引用など単独監督作でもコーエン印のインテリっぷりはしっか>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

1.0

ズバ抜けて高いってほどではないけど、そこそこの高さの完成度は認める。でもどこにも好きな要素がなくて今回は嫌い、安っぽいヒューマニズムだらけで洒落臭い。撮影は色彩設計含めて技巧的だし目を見張るショットは>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

1.0

バカ映画なりに今回はちょっと面白いかも、そう期待して観に行ってしまった自分がいちばんバカだった。付き合いきれないつまらなさ

プリシラ(2023年製作の映画)

4.5

エルヴィスという伝説的な巨大アイコンを向こう側にまわして描いたことで(またこのあんばいが絶妙。明らかに批判的な意図をもって描いているもののそれに対してのめんどくせえ批判はできるかぎり噴出しないように抑>>続きを読む

貴公子(2023年製作の映画)

3.5

ある一人の中心人物を周りの他の連中が奪い合うという『V.I.P.』と同じ構造。『V.I.P.』のような苦みやドライ感はないものの、ベタっとはしていないフィリピンの熱帯に合わせてきたかのようなカラッとし>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

つまんなくてもムカつくけど、面白かったら面白かったでそれもまたなんか癪にさわるヴィルヌーヴ案件。IMAXの真四角に近い画角より、横長のシネスコの方が映えそうなショットが多い気がしてそっちも近々行くつも>>続きを読む

WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)

3.0

『異人たち』よりは全然いいものの、世評の高さのわりにはあんまピンとこなかった。とくに秀でている箇所があるわけでもなく至ってフツー。アンドリュー・ヘイって、セクシュアリティを描くときにそこから端を発した>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊と同じ枠組みに入るザック・エフロンの好演。前作『不都合な理想の夫婦』から続く80年代マチズモ批判であり、不健全なコミュニティからの脱却という意味ではデビュー作『マーサ>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.0

ありえない設定や多少の話の粗も許容できるというか、むしろ映画的ハッタリのカマし具合が心地よく好感を持って観れた。前作『ポゼッサー』ほどではないにせよ、安定して今回の3作目も面白い。目が冴えるようなカラ>>続きを読む

キングダム エクソダス〈脱出〉(2022年製作の映画)

2.5

うーーん、最終回の5話目にしてようやく話が動き出した感。これなら5時間もいらないのでは? ってなったけど、それまでに一応の積み重ね的なものがあったからこそラストはそれなりに観れたところがあるのかもしれ>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

思いのほか良かった。一線級と絶妙な人選の懐かしい顔触れが交じり合った大量の豪華キャスト。ベタなアプローチとはいえ感情と状況が一致しないアンビバレントな批評性。ダレる箇所はありつつも全体としては3時間の>>続きを読む

美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.0

大島渚の『御法度』やフィンチャーの『ファイト・クラブ』のことなんかも思い出しながら観てた。武力的なマチズモの集団、そのなかで一人の美しき男に対する嫉妬や羨望が入り交じった複雑な感情、自縄自縛にも近いよ>>続きを読む

けもの(仮題)(2023年製作の映画)

1.5

題材も手法もどこにも目新しさなしで古臭い。が、作り手自身は恐らくフレッシュなことをしているつもりだから観ていて余計に痛いし白ける。これをクローネンバーグが撮っていたらどんなに良かったことか……

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.0

『別れる決心』以降の作品でいちばん『別れる決心』に肉迫していたと言えるかもしれない。それは殺人とメロの両立やマーラーの交響曲第5番の選曲といった表面的な要素だけではなく、もっと本質的な肝の部分において>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

4.5

クールな筆致には好感が持てるものの、インパクトは想定の範囲内といった感。ラストの編集は独特で面白い

※ おかわりしたらやはりインパクトはそこまでじゃなかったものの、ディテールで語り尽くそうとしてる姿
>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.0

いい意味での不明瞭さがあり、観客の想像力、ひいては思い込みや読み込みに裏打ちされた映画の美学に貫かれている。が、結局のところは真実と事実の違いや、我々が知っているのは常に“全体の一部”でしかないといっ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

膨大な情報量にのっけから驚かされる。が、さり気なくもそのひとつひとつの提示もきちんと統制がされているので非常に見やすい。そして良い意味で狂っていない。不条理なようでいて筋が通っているロジカル且つ真っ当>>続きを読む

ジェントルマン(2021年製作の映画)

1.5

そもそも脚本があまりよろしくない印象。構成はいびつだし、テーマは良くともストーリー自体は冗長的(解決パートも後出しの域)。シリアスとユーモアのバランスも悪くてギャグはことごとく上滑り。演出も面白みなし>>続きを読む

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)

2.0

教科書どおりとも言えるベタな演出のオンパレードで冒頭からして失笑してしまった。意外性皆無の王道すぎてつまらん。この話を英語で撮っている時点で、作り手もどこまで真剣に取り組んでいるんだか…… ともなる。>>続きを読む

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

2.0

本筋入るまでのお膳立てがモタついている。そしてようやく面白くなってきたとなるも、仁祖にヘジンをキャスティングするその狙いも、ヘジン自身のアプローチもあざとくて完全にはノリきれない。ラストは韓国映画の悪>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

2.0

勝手に今年ベストワンを期待してたんだけど、ちょっとこのスコアじゃ無理かな。嫌いではないけど、主にダメだった点を挙げると…… まず2012年パートで主演二人が24歳に見えなくて無理ある。ユ・テオは兵役シ>>続きを読む