犬さんの映画レビュー・感想・評価

犬

映画(3196)
ドラマ(0)
アニメ(0)

黒の報告書(1963年製作の映画)

-

『落下の解剖学』より余程のこと解剖学をやっていて楽しいし、この高度経済成長期の光と影を赤裸々に描く黒シリーズには見応えを感じる。『黒の試走車』に次いで主人公が報われない後味の悪さはバッドエンドというよ>>続きを読む

テトロ 過去を殺した男(2009年製作の映画)

-

あまりピンと来なかったが、現在がモノクロで過去がカラーという演出やオールデンエアエンライクが交通事故に遭うときのシーンには目を見張るものがあったが、、蓮實重彦がその年のベストに入れていたらしく相変わら>>続きを読む

黒の試走車(テストカー)(1962年製作の映画)

-

向かいのビルで行われている会議をハイスピードカメラで撮影して読唇術で価格を暴こうとしたり、自らの恋人をスパイとしてホテルに向かわせて設計書を盗ませたり、ちゃんとスパイ映画をやっているし悪くないのだが、>>続きを読む

突撃隊(1961年製作の映画)

-

暗闇の戦地を蛇行しながら進む様子が版画のような黒主体に細やかな白で輪郭が生まれるバキバキなショットで目を凝らす。ラストのマックィーンによるタッチダウンからの慟哭しながら火炎放射が何とも言えない戦場の苦>>続きを読む

馬三家からの手紙(2018年製作の映画)

-

病名が公表されていたけど遺族の意向は無視されたらしいし孫氏の突然死が闇深い。昨今の日本でもそうだが、やはり国の問題は内側からではなく外側から糾弾してもらうことが一番効果的なのだろう。

外人部隊(1933年製作の映画)

-

心底どうでもよくて全然ノレなかったのだが、一人二役を演じ分けたマリーベルよりフランソワーズロゼーにシフトして悲劇のヒロイン面して終わるの裏で私情が働いてる気がしてならない。

犯人は21番に住む(1943年製作の映画)

-

それぞれキャラ立ちしていてエスプリの効いた娯楽的バランスではあるが、俺が求めていたのはフライシャー的なゴリゴリのサスペンスなので「犯人はこの中にいる!」という展開には興を削ぐ。歌手が歌唱中に真犯人に気>>続きを読む

エドワールとキャロリーヌ(1951年製作の映画)

-

ドレスが〜スーツが〜っていう痴話喧嘩からの演奏会を途中退場して無難なハッピーエンドになりそうなところで起伏を作って冒頭の延長として円環構造に着地させる周到さ。

市子(2023年製作の映画)

-

脚本に多少の期待を寄せていたが、最近鑑賞したのにも関わらず記憶が曖昧な『ある男』に類似性を感じてしまい可もなく不可もなし。杉咲花の演技力の高さについては言うまでもなく、不遇な家庭環境から転化されたファ>>続きを読む

ヴェラの祈り(2007年製作の映画)

3.0

ショットが堂々としているしフレーム外まで行き届いた人物配置が二作目にして卓越している。激渋なコンスタンチンラヴロネンコをカメラの裏に回らせて反対側からフレームインさせるのはズビャギンツェフにとって遊び>>続きを読む

巴里の空の下セーヌは流れる(1951年製作の映画)

-

ナレーションの主張が強いこともあってそこまで興味を持てなかったが、終盤の落第医学生が絶体絶命の手術室にて「見殺しには出来ない」とオペを開始するシーンは意外と見応えがある。医師たちの目元のカットで繋いだ>>続きを読む

モスキート・コースト(1986年製作の映画)

3.0

消費社会と物質主義に塗れたアメリカからの離脱により未開の地を求めて0からのスタートを図るハリソンフォードと振り回される家族。文明を築く発明家が文明批判、原理主義との対立、移民問題からパワーバランスの崩>>続きを読む

女の中にいる他人(1966年製作の映画)

4.0

『乱れる』に匹敵する成瀬ベスト。冒頭の煙草のマッチカットから不穏な空気感が漂っており、また濃淡の濃い陰影が異色として際立つ。長く暗いトンネルに車を通らせるシーンも然る事ながら、終盤による打ち上げ花火と>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

-

ミステリー、法廷劇、人間ドラマ、全ての要素として程度が知れていて肩透かし。息子の首振りに合わせた左右パンやドキュメンタリー然としたクイックズームもこれ見よがしと言ったようで余計。結局、今作に於いては真>>続きを読む

ルース・エドガー(2019年製作の映画)

-

真相は闇の中とされているが、もし全ての犯行がケルビンハリソンジュニアによるものであればなんだか夜神月を想起するような欺瞞。優秀な人物像と潜在意識が混濁するオクタヴィアスペンサーの主張と「発音が難しいか>>続きを読む

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

-

これから銃乱射事件が起きてしまう店内は不気味な空気感が漂っており、その凄惨な模様はエンタメとして描写せずとも十分な痛ましさを余韻として残す。どうしても『エレファント』が想起されてしまうので比較も兼ねて>>続きを読む

ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999年製作の映画)

-

ホラーとしての恐怖品質ではなくモキュメンタリーとしてのエポックメイキングを評価するべき作品であり、内容より存在の功績。恐怖演出を過剰にしてもリアリティ(バッテリーが長持ちすぎるのは見逃す)が薄れて本末>>続きを読む

馬上の二人(1961年製作の映画)

-

あれほど強そうな戦闘部隊のリーダーを見せられたら「軍隊が先住民(コマンチ族)に交渉するも一筋縄では行かず、武力行使で攫われた白人を取り戻す」っていう勧善懲悪な単純構成で十分そうだが。息子が首吊りに処さ>>続きを読む

燃える平原児(1960年製作の映画)

-

白人と先住民族に於ける対立構図の中で分断を余儀なくされたエルヴィスプレスリーが混血である自身のアイデンティティを見つめ直し苦悩と葛藤が描かれる。砂塵が吹き荒れる荒野の中を耐え忍びながら歩くドロレスデル>>続きを読む

女経(じょきょう)(1960年製作の映画)

-

市川崑の『物を高く売りつける女』が脚本や演出を含めて一番面白い。次点で撮影は吉村公三郎が一番良い。増村保造は若尾文子頼りで特筆すべき点がない。

好色一代男(1961年製作の映画)

-

女を口説いては悦びを与える好色家の一代記を年月ではなく距離として描き、軽妙な語り口に乗せて日本各地(場面転換)を渡り歩かせる。これが最後の色恋だと思われる中村玉緒が呆気なく殺され、本来のヒロインとされ>>続きを読む

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

-

マスコミではなくドキュメンタリーなのだと矜持を保つ瀧内公美の天秤は前半の仕事と後半の父親に於ける公私の選択によって思わぬ亀裂を生んでしまう。川瀬陽太や光石研にスマホのカメラ(録画)を向けて自供を促す手>>続きを読む

空の瞳とカタツムリ(2018年製作の映画)

-

題材や役柄によっては仕方ないことだが、なんだか俳優の性的消費に思えてしまった。詩的な独白は静かなトーンの作風としてそこまでノイズに感じなかったが、『草の響き』同様に印象的なシーンやショットがないと脚本>>続きを読む

エターナル・ドーター(2022年製作の映画)

-

『シックスセンス』の下敷きに言及するのは流石に野暮だと思うが、それにしても本当にそれがやりたかったの?と思わざるを得ないほどに切り返しの主張が激しいので蝋燭の火を吹き消してカメラが引いても「でしょうね>>続きを読む

太陽は光り輝く(1953年製作の映画)

-

以前と今回で二回ほど鑑賞したが、葬列に感動することが出来なかったので何回観ても琴線に触れることはなさそう。

音楽(1972年製作の映画)

-

ロマンポルノ然としたATG作品であり、ハサミとの因果関係は過去の近親相姦や心的外傷からなるもの。電話越しの「あるわよ、首のグリグリ。喉頭癌で死ぬんだわ」「典型的なヒステリー症状です」には笑った。

稲妻(1952年製作の映画)

-

高峰秀子が意気消沈して心ここに在らずのときに向こうの空で稲光り(この瞬間が無条件に良い)してからの台詞と動線のリズム感が良すぎる。まず「今日泊まっちゃえば?」に対してノータイムで「帰る」って返す浦辺粂>>続きを読む

迷子(2003年製作の映画)

-

迷子になった孫を捜索すべく公園内を奔走したり警察署に駆け込んだりするシーンはロングショットで冷淡なのに、なぜか祖母がトイレにいるシーンに関しては個室空間にまで入って(発端の公衆トイレでは洋式の上でヤン>>続きを読む

悪徳(1955年製作の映画)

-

以前は時間に追われながら鑑賞して「そろそろ終盤かな」と思い時間を確認したらまだ半分も進んでないことがあったが、「今回こそは」と思い改めて再見したものの全く同じ感覚に襲われてしまい退屈。

やくざ絶唱(1970年製作の映画)

-

勝新太郎の暴力が殺陣並みに速くて本当にアクションが上手い俳優だと痛感する。シスコンと貫禄のギャップに笑ってしまうのだが、そこが最大限に活かし切れてないというか、父性に落ち着いてしまわずボディガードのよ>>続きを読む

赤い天使(1966年製作の映画)

-

生と死が隣り合わせの環境下にて、兵士による性欲と暴力が露悪されるも献身的に使命を全うしながら罪をも赦し自らの枷とする若尾文子の歪なナイチンゲールが異様な艶かしさを放っている。従順、且つ愛欲な「西が勝ち>>続きを読む

兵隊やくざ(1965年製作の映画)

-

殴るだけの暴力ばかりで相当退屈。シリーズものみたいだが、増村保造が監督している作品以外は鑑賞しなくていいかな。

清作の妻(1965年製作の映画)

3.0

目潰しだからギリ反戦映画として留まっているように思えるが、切り落とす部分が性器であればメンヘラ映画として確立されている。しかし、本当に異常なのは若尾文子ではなく目潰しされても惚れ込んでしまっている田村>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

松村北斗と上白石萌音の前職と現職、及び二人を取り巻く環境の中で誰一人として陰口や嫌味を言う人間には焦点が当たらず、説教臭さや親切の押し付けなんてこともなく全てが適切な優しさと思いやりに満ち溢れていて泣>>続きを読む

からっ風野郎(1960年製作の映画)

-

三島由紀夫の動きが悉くダサく段取りが透けて見えて恥ずかしくなってしまうが、『遊び』の内田朝雄に比べたら断然許せる。ラストもそのまま潔くエスカレーターに運ばれれば良いものを、ジタバタするから滑稽に映る。

瞳をとじて(2023年製作の映画)

-

ヌリビルゲジェイランのような長尺なりの強度があるショットを求めてしまう(靡くシーツを抜けて漆喰を塗る二人を捉えるトラックインは良い)ほどに切り返しが占める乏しい画面展開には退屈を余儀なくされるが、何よ>>続きを読む

>|