犬さんの映画レビュー・感想・評価

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天城越え(1983年製作の映画)

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如何にもな演出や編集過多は置いといて、当時二十八歳?の田中裕子が童顔ながら色気を漂わせていて流石に伊達ではないのだなと思う。長回しによる金子研三との性描写はこれ見よがしといった感じで汗が滲み出る昭和エ>>続きを読む

墓泥棒と失われた女神(2023年製作の映画)

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パンショットや編集の妙が冴え渡る監督だと認識していたが、今作では上にも下にも360度パンにより反転(水溜りも然り)させたりして面白い。更には、絶体絶命の状況から『蜘蛛の糸』の如く垂れ下がった運命の赤い>>続きを読む

車夫遊侠伝 喧嘩辰(1964年製作の映画)

3.0

親分を二周するスピンショットや漫画のコマ割りのような構図とカットにニヤける。無論、ラストのシークエンスが白眉なのだが、あの静寂に淀むような霧の濃淡が絶妙であり、前後による人物の配置が完璧。返り血を浴び>>続きを読む

袋小路(1965年製作の映画)

3.0

舞台設定や夫婦の主従関係は『水の中のナイフ』であり、直に精神が崩壊していく構造は『反撥』とも言えよう。何かしらのサムネを見たときはプレザンスが異常者なのかと思ったが、冒頭の女装した状態でスタンダーと対>>続きを読む

反撥(1964年製作の映画)

3.0

男性性に侵食されるミサンドリーの末路、、と言ったら軽々しく語弊があるかもしれないが、嫌悪というのは一度目覚めると固定観念として崩れることは難しく、その要因が性的なものによる心的外傷なら尚更であろう。何>>続きを読む

水の中のナイフ(1962年製作の映画)

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水上のヨットに夫婦と青年と一本のナイフ。このナイフがサスペンスを誘っているようで実際は夫の意地の悪さが露呈されたことに起因している気がする。これが開放的かつ閉塞的な空間であり死を連想させたからなのか、>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

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人は見かけによらないってか第一印象によらない。千原せいじのようなガサツだけど悪い人ではない、寧ろ良い人かも?みたいなタイプと列車で相部屋になって数日を共にする訳だが、俺なら初日で心が折れている。これお>>続きを読む

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)

3.0

前提として当時はナチス占領下にも関わらず、冒頭とラストに於けるエキストラとオープンセットの規模感に圧倒されて泣きそうになる。群衆を掻き分けながら進むシーンでは『鶴は翔んでゆく』を想起したが、今作は密度>>続きを読む

山の焚火(1985年製作の映画)

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雄大かつ静謐な山岳の生活に調和した一夜の近親相姦。弟が甘えて姉に膝枕をしてもらったときに邪推したが、予兆に過ぎず。余りにも唐突な展開は摂理として捉えてしまいそうなほどの成り行き。段取りや筋書きが見透か>>続きを読む

ギリシャに消えた嘘(2014年製作の映画)

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ロケーションと主要キャストが抜群なことで弛緩なども気にせず没頭は出来たが、後半が特に捻りもなく逃亡劇に終始してしまうのが流石に勿体ない。遺跡の暗闇と雷雨の閃光によるキルスティンダンストの輪郭が一瞬だけ>>続きを読む

エリザベスタウン(2005年製作の映画)

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飽くまで穴埋め同士(友達)という関係を建前にしたキルスティンダンストとの出会いと別れ、彼女がプレゼントしたオリジナルのマップに従うロードムービーとして収めれば見応えも尺も丁度良さそうではあるが、告別式>>続きを読む

シングルス(1992年製作の映画)

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最近鑑賞した『彼女と僕のいた場所』を想起するような恋愛群像劇。キャメロンクロウの初期ということもあってロックバンドが欠かせない。恋愛の信じる/裏切られる、すれ違う/衝突する、急接近/遠回りなどが肯定的>>続きを読む

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)

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毒親から解放されるズーイーデシャネル姉ちゃんに授けられたベッドの下にある「自由」と出会ったときの広がる世界とレコードに針を落としたときの衝撃が全ての始まり。マクドーマンド母ちゃんやホフマン師匠との要所>>続きを読む

ザ・エージェント(1996年製作の映画)

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トムクルーズの中では珍しい等身大?のサクセスストーリーなのだが、苦労や葛藤はあれど並行してシンママであるドロシーボイドとの恋愛も成就させてみせるところが如何にもトムクルーズらしい。『マネーボール』のよ>>続きを読む

現金に手を出すな(1954年製作の映画)

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ながら見をしてしまい、そんなにピンと来ず。ギャバンが室内にいる三〜四人の男女を漏れなくビンタするシーンには思わず感心。

テレフォン(1977年製作の映画)

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『フォーンブース』的なクライムサスペンスを想像していたが、ドンシーゲルだし普通に社会派でした。キスされたあとに「やったーやったーバンザーイ」が可愛い。

珈琲時光(2003年製作の映画)

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居間の構図が相当に小津的で泣ける。電車内からの並走ショットや四本の電車をフレームに収めるなど雑踏な東京を情緒として描くことに電車が多用されている。小林稔侍を笠智衆よりも寡黙な父親像として演出しているの>>続きを読む

野獣死すべし(1980年製作の映画)

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松田優作と鹿賀丈史が一緒の画面は胸焼けする。カリスマ的かつ彼ありきなのだから仕方ないとはいえ、流石に独壇場が過ぎて惹かれない。あれだけスマートに銀行強盗の下見をしておきながらバディ鹿賀丈史が必要以上に>>続きを読む

豚が井戸に落ちた日(1996年製作の映画)

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如何にもロメールや今泉力哉などが描く恋愛群像劇のすれ違い模様で初期の中としては嫌いではないのだが、やはり家父長制気質や無自覚なハラスメントが他の監督よりも露悪的に映ってしまうようで好きにはなれない。キ>>続きを読む

阿賀に生きる(1992年製作の映画)

3.0

阿賀野川に垂れ流された水銀で汚染した魚を食べたことで新潟水俣病の被害に遭われた村の人々を過去として、未来である今も変わらず鮭漁に励み焼いて食すことの生活と誇り。複数のボートで魚を釣り上げるシーンのマジ>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

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円環構造からなるイヘヨンの死生観。結局のところ彼女の余命に関しては嘘か真か不分仕舞だが、そんなことはこの映画に於いてどちらでも良いしどちらでもあるのだと思う。煙草は一人で吸えば孤独だが、一本シェアして>>続きを読む

イントロダクション(2020年製作の映画)

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紛れもなくホンサンスのフォーマットだが、制作期間や尺の短さからして隙間時間で撮られた出来栄えであり特筆すべき点がない。喫煙と抱擁の映画として煙草は何かしらの象徴か道具やキッカケに過ぎないのか。

悪魔のような女(1955年製作の映画)

4.0

黒沢清が好きそうなクライムサスペンスからの訳ありホラー展開で久々に純粋などんでん返しを喰らった気分で嬉しい。殺人幇助をするシモーヌシニョレの心強さと説得力も過去一で好き。階段を用いた化粧箱の落下と生徒>>続きを読む

ドコニモイケナイ(2011年製作の映画)

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彼女を通して日本とは本当に狭い国だなと思う。特に昭和から平成初期に限っては「成功を掴み取るなら東京へ」という漠然とした夢に苛まれ、辞め方や出口を見失い途方もない猶予に踠き続ける若者で溢れ返る。それでも>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

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加速する狂気と迸る愛憎はミアゴスの顔芸以上に彼女自身の魅力他ならない。鬱屈とした家庭環境からの脱却を夢見るミアゴスが希望のオーディションに落ちては鼻水を垂らすほど泣き喚き、義理の妹ミッツィーもドン引き>>続きを読む

みなに幸あれ(2023年製作の映画)

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近年の韓国や台湾で流行っているような土着的ホラーであり、側は悪くないのに中身が伴っていない。カメラを動かしすぎているかと思えば車に轢かれるアクションも過度な演出。笑いに逃げているのかホラーとの表裏一体>>続きを読む

美しき仕事(1999年製作の映画)

4.0

ドニラヴァンの身体性が遺憾なく発揮されていて度肝を抜かれる。彼の脈打つ血管すら高貴に感じるとは思わなかった。塩類平原にてサンタンが気を失うシーンの一瞬にして白光りが空間全体を包み込む白昼夢のような光景>>続きを読む

大統領の陰謀(1976年製作の映画)

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『ペンタゴンペーパーズ』と合わせて観たい一本。地味ながらダスティンホフマンとレッドフォードが足と電話とタイプライターで着実に奔走しては翻弄が付き纏う闇深さ。ラストでズームしていきニクソン大統領とレッド>>続きを読む

セックスと嘘とビデオテープ(1989年製作の映画)

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邦題以上でも以下でもなくセックスをして嘘を吐いてビデオで発露して破綻するという内なる対話。人はカメラを向けられることによって何かしらの期待に応えようとしたり心情を吐露してしまう傾向があるらしい。妻の妹>>続きを読む

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

3.0

レッドフォード相手に余りにも軽妙で鮮やかなロウリーの手腕がどうかしているし、引退作として選んだレッドフォードもまた然り。牢屋の中に佇むレッドフォードを捉える中で差し込まれる彩光に照らされたハウスダスト>>続きを読む

炎の人ゴッホ(1956年製作の映画)

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カークダグラスの怒りの顔圧だからこそゴッホの繊細さと狂気的な爆発が引き出されていて魅力的に映る。ゴッホの内情や機微というよりは真っ当な伝記映画であり一般的に知られている彼の半生が凖られる訳だが、ゴーギ>>続きを読む

ドッグ・イート・ドッグ(2016年製作の映画)

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ポールシュレイダー本人が「いまいちな映画で本当すまん」と不満らしいが、言うほど悪くない気がする。そもそもニコケイとウィレムデフォーのクライム映画っていうだけでお釣りが来るのかもしれない。極彩色な演出と>>続きを読む

ラスト・リベンジ(2014年製作の映画)

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ポールシュレイダーの作家性が希薄であり、それこそ既にニコケイ本人かリーアムニーソン主演でやっていそうな凡作。憔悴したテロリストのアジトに乗り込んでからシーリングファンの影がニコケイの顔を断続的に遮るの>>続きを読む

ライト・スリーパー(1991年製作の映画)

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また日記だし面会で終わる。何故こうもポールシュレイダー作品には品性が備わっているのか。病院の食堂で話しているシーンで敢えて柱側からのカットを挟んだり指輪を窓から放り投げたあとに掃き溜めの俯瞰ショットな>>続きを読む

アメリカン・ジゴロ(1980年製作の映画)

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男娼の設定にしてはリチャードギアが普通に恋愛しているだけで特筆すべき点を感じられない。ブラインドによる縞模様の影が上がっていくのは演出として面白いが、唸るほどでもない。ラストの面会でガラスに手を添える>>続きを読む

魂のゆくえ(2017年製作の映画)

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秩序として均衡が保たれた構図から沸々と湧き上がる内なる感情はラストに向かって制御が効かなくなる狂気と鎮圧。『田舎司祭の日記』を下敷きに如何にもポールシュレイダー的な脚本が脳汁を刺激して扱う題材以上に楽>>続きを読む