Kz氏

日本沈没2020のKz氏のネタバレレビュー・内容・結末

日本沈没2020(2020年製作のアニメ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

カッパ・ノベルスの原作を読んでおり、森谷司郎監督の映画も見ているけれど、なにせ50年弱昔のことなのでうろ覚え。日本人が日本を失うポリティカル・フィクションで、末法思想みたいな終末ブームの先駆けだったと記憶している。地震のメカニズムを周知せしめたハードSFの印象が強い。
本作は、政治や地質学よりも個人に視線を据え、沈没から逃れる一家族の放浪を描く。が、愁嘆場の暇もなく次々とあっけなく近しい人々は死ぬし、出会う人々は害意か無関心かのいずれかというのがリアル。善意の人も皆無ではないが、親鸞みたいな宗教的慈悲でなければ、国際的Youtuberとかモルヒネ中毒の老人とか流浪の大道芸人という、隠者で、無常観の匂いが濃い。姉弟がゴムボートで大海を漂流する8話の絵が象徴的だ。レイシストは登場するが、国家の姿はあまり見えない。
結末10話で、世界の善意によって日本は小国として再生するが、「日本沈没第二部」(2006年小松左京+谷甲州)にあたる、移民日本人や領有権暗闘が、ざっくりとカットされていて、唐突なハッピーエンド。
石油ショックが「日本沈没」を生んだことを鑑みれば、やはり、コロナ禍が生んだ、中世虚無文学のSF的リブートが本作ではないかと思える。
Kz氏

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