手水舎

アクダマドライブの手水舎のネタバレレビュー・内容・結末

アクダマドライブ(2020年製作のアニメ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

惜しいです

いわゆる少年ジャンプ等によく使われる紋切り型「昔、〇〇がありそこから国の治安は悪化。そこには〇〇というとんでもない奴らがいた!」というプロット嫌いじゃないですが、もっと工夫を凝らせた気がします。

この作品は客観的に観た時と自分の意見を分けて書きたいです。


客観的に見た時:それぞれが悪玉・犯罪者であり各々に意思や目的があってそれを表現していた。だからこそ裏切りが錯綜したり化けの皮が破れた本性が見える所もあった。集団ではなく結局のところ個としてやりたい事を優先した顛末。


自分の意見:喧嘩屋がいた時は楽しかったなぁーーーーーー。言い換えると各自、特筆した武器を活かして協力してミッションをこなしていくのが面白かった。最後までこれだったらもっとワクワクしたのになあ。。

だから導入の時に感じた色々とガバガバの展開も許容できたんです。現金しか使えないから連行されるだったり、警察に処刑科っていうコッテコテの組織がいたりといったムチャクチャ粗いけど、展開面白いからまあいっかみたいな序盤の空気が好きでした。

ですが喧嘩屋が相打ちになって亡くなってしまった後から歯車が崩れ始めます。まず医者が裏切ったことを皮切りにチームはバラバラとなります。

まず双子ちゃんが逃げようとした月はホログラムで「既に破壊されていた!」というのがいきなりすぎるし、どうやってやったの?感。そして不老不死の兄妹を作った方法として選ばれた5000人の子供が変な溶液の中に入れられて凝縮されたというしちゃかちゃ科学。もっと練れなかったのかと思ったので納得はできない。それから悪玉達に支払ったお金ってどこから出てるんですかね。

民衆が暴徒化した時の警察と処刑科の対応があまりにも杜撰。所長あれだけ焦って考え抜いた結論が皆殺しとはちょっと責任のある大人の行動とは思えない。端的に言うと無能。後の事を全く考えられていない。それから喋る仮面ことカントウさんから所長は階級を下げられるはずだったのに暴徒鎮圧をした後では褒められていたのが謎。それでいいのか…?

確かに最後ではその愚かさに気づいていたがそんな命の大切さを伝える作品でしたっけこれ。初めから人の命めっちゃ軽かったのに。

そもそもカントウとカンサイの戦争がどうして起こったのか、カントウの目的とはなんだったのかが分からなかった。ここ重要でしょう。カントウの正体がありきたりなSFとしか分かってないのに終わってはいけなかったと感じます。

ムチャクチャ粗いけど勢いで突き抜けるのかと思ったら中盤からは雑なのにシリアス路線だったのが受け付けなかった。シンプルにそっちの路線向いてる物語じゃなかったと思います。


そしてキャラ達も解釈違いな所たくさんありました。

医者は最初あたり「ここで今必要なのは信頼」だと発言していて彼女の仕事に対しての真摯さなどを感じていたが、裏切ってからは三流悪役でした。喧嘩屋を失血死させるように縫合したり、チンピラを使役したりと姑息。つまらなくなった。

殺人鬼は初め処刑台から解放された時の「推定懲役967年!」と出た場面ではすごい味方が来た!とワクワクしていたが最期はただのイカれ野郎だった。一般人を特別視していたことから彼女に引っ叩かれた場面もあった様に何かしら変わるかもしれないと思っていたが見当違いでした。ただ単純なサイコパスだったという結末も面白くない。


ただ個人の意見として最も言いたいことは物語の終着点が素晴らしかったという事です。確かに中盤ひどくモヤモヤしていたのですが一般人と兄妹、そして運び屋、ハッカーだけになってからラストにかけては過去類を見ないほど良かったと思います。

まず一般人は妹ちゃんを守るために髪を切ったり、覚悟を決めて初めての殺しを行います。これでもう彼女が一般社会に戻ることはできなくなってしまったんです。それから運び屋に全てを託し囮となって時間を稼ぐ姿勢には脱帽。最後、情報を操作し民衆を処刑科にぶつけさせた本物の詐欺師となった所は震えました。安らかな彼女の顔が忘れられない。

そして運び屋も追いかけてくる処刑科に対して文字通り命を賭して仕事を遂行した。

2人の兄妹は吹雪の中、山を越え、かつて「シコク」と呼ばれた場所まで辿り着いた。

トンネルの外の明かりがだんだん強くなっていって2人の手を繋いだ影が光に溶けていく終わりは圧巻でした。これは間違いなく今まで3本の指には入る終わり方。

こんなにも綺麗な終着点の魅せ方ができるのにどうしても中盤でのグダリが残念すぎる。オールタイムベストの素質があったのに。。

それから黒沢ともよ可愛すぎか!!!!
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