秀ポン

平穏世代の韋駄天達の秀ポンのレビュー・感想・評価

平穏世代の韋駄天達(2021年製作のアニメ)
2.0
キタニタツヤのOPかっっっこよ。

原作者が異種族レビュアーズの人と知って納得。
人の形をした異物を、あくまで人に寄せずちゃんと異物として描いてる。

この作品において、人間は彼等(魔族、韋駄天)の異常性を示す物差し程度の役割しか持っていない。彼らにとって人間は自分達を増やす為のリソースでしかなく、人間としては彼らに感情移入のしようもない。
まるで敵のように描かれる魔族の方が人間の脳を持っているため比較的感情移入しやすいという逆転現象が面白い。救いを求める人間と、そんな彼等のことを気にもかけない韋駄天達のシニカルな世界観が良い。

戦争ものとしても面白かった。基本的に正面きった戦いでは主人公達韋駄天側が圧勝し、魔族に勝ち目は100%ない。なので必然戦いは魔族がどうやって種を存続させるのかという生存戦略の形になる。
そして生存戦略の面でも魔族側が圧倒的に不利だ。概念と生物では勝負にならない。
Web漫画っぽい、極限をとったような勝負の条件設定が面白い。
そんな最初から負けが決まっているような戦いの中で不敵に動くミクが見ていて楽しかった。

しかし、一番大きな不満点として「そもそもこいつらなんで戦ってるんだ?」ってのはあった。
魔族が人間に取って代わって、魔族の思念から韋駄天を増やせばよくね?人間には知性魔族を生み出すリソースとして働いてもらってさ。
人間を物語から省くとこういう身も蓋もない解決法が可能になってしまうので、一応の人間代表としてシスターが用意されていたけど、正直あれでは足りない。韋駄天と魔族が人間の言うことを聞く道理が無い。
作中でイースリイは上記の人間にとっては地獄みたいな解決法を提示することで「人間としてはそんなの受け入れられないでしょ?」とシスター達に和解の不可能性をご高説してくれてたけど、こっちからしたらなんでそれを即座に実行しないの?とただただ疑問だった。今すぐ瞬時に速攻で人間を家畜化しろよ。なんで人間に若干気を遣ってんの?
人間側に発言権が無いので、怪獣バトルに巻き込まれる人間側の視点は唯のセンチメンタル要素にしかなっていない。(はずなのに、人間に対してなんら憐憫を抱いていないはずの韋駄天が何故か人間に配慮している根幹部分の矛盾)

ついでに、主人公?のハヤトには死ぬほど魅力がなかった。
韋駄天と魔物の間には既に圧倒的な戦力差があるので、主人公の戦力が多少増減したところで特に意味はない。同じ理由で直接戦闘にはほぼ意味がないので、タケシタ戦とかはかなり退屈だった。
イースリイの様に策略をめぐらす訳でもないし、師匠と違って心情面にブレがあるわけでもないのでマジで無のキャラになっていた。
『強さを求める王道主人公』的な理解しやすい話へのミスリードの(そして非人間的な内面という種明かしの)役割しかないロケットブースター的なキャラが、役割を終えた後も切り離されずに残ってる違和感。

──その他、細かな感想。

OPがかっこいい。韋駄天達の外側を割ると非人間的でナンセンスな中身が見えちゃう映像が、これがどんな話なのかをコンパクトに伝えてきていて良い感じ。

マジでOP曲が良い。ポツポツポツポツってBad Guyみたいなくぐもったビートがいい感じ。

余りにシニカルな態度に振れすぎてて辟易したりもした。
主役が人間じゃないので仕方ないというか、むしろ「人型であるにも関わらず異形な思考、生態をもつ存在への認知的不協和」こそが持ち味の話なのだろうとは思うので、これは単純に好みの話。
(個人的には狂気を実現する為の手段として頭脳戦を描いたデスノートとかが好き。スカさないで欲しい)
人間要素を増やしてほしいという視聴者に残された唯一の望みとしてシスター韋駄天が居るので、彼女の今後に期待。
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