負けと壁、時にはバカも必要、ハチロクカーボン、マイペース、出番があるか分からないけどきっちり仕上げる、予想外、意外性
★「まあ今度のことはアイツらにとっちゃあいい薬になったろう。こういう刺激が大事なんだ。走り続けていく限り色んな壁に突き当たるもんだ。酒井にしても大輝にしても、今は一つの壁にきてるところだったのさ。苦しんでもがく奴だけが壁を越えて上に行ける。乗り越えられない壁に出会った時がドライバーの限界ってわけさ。だけどな智幸、お前が今突き当たっている壁はまだいくらでも乗り越えれるはずだぜ」「参ったな…分かってたんですか社長」「それぐらいのことが分かんねえようじゃ東堂塾の塾長は務まらねえよ」「厳しいですよ、俺の壁は。つくづくレースって資金がすべてだと思い知らされましたよ。ストレートで負けるからどうしたって無理しちまうんで、つまんないミスやトラブルに巻き込まれちまうんですよ。チームのムードは悪くなるし、不景気でスポンサーも集まんないし、お先真っ暗です。俺一人の力じゃどうにもならない壁かもしれねえけど、ほんと…どうしていいか分からないんですよ」「それは違うぞ智幸、お前大事なこと忘れてるぞ」「え?」「それは間違いなくお前自身の問題だぞ。分かんないのか?」「社長…」「お前、やってみたらどうだ?公道レース」「マジで言ってるんですか?プロになったらストリートでバカなことやるなって言ったのは社長じゃないですか」「時にはバカも必要だろ。騙されたと思ってやってみろ、素人相手の公道レースってやつを。今のお前が欲しがってる答えが多分見つかるぜ」
★「ぼちぼち負けてみ。負けることから得ることは多いぜ」「負けてみって…そうあっさり言われてもなあ。チームで戦ってんだから、そう簡単に負けるわけにはいかねえんだよ」「そうは言っても人は実力以上のことはできねえよ。車だって元々持ってる限界性能より速くなることがねえしなあ」「そりゃそうだけど…」「それぐらいに考えていた方が気が楽ってことだ。それなしてもこの車、半分って言ってたけど、すっかりお前に取られた気分だなあ。俺がいじる楽しみもなくなったし、一台買おうかな。別のやつ」「ま、マジ?」「政志に頼んでいい出物があったら回してもらおうかなあ」「何買うつもりなんだよ、車種は?」「秘密だ」
「東堂塾のOBから再戦の申し込みがいってるだろ。その申し込みは受けない方がいいぜ。やめろと言っても聞くような奴じゃないことは分かっちゃいるが、よく聞け。今度の相手はプロのレーシングドライバーだ。館智幸っていって東堂塾の中でもアイツだけは別格なんだ。さすがのプロジェクトDでも100%勝ち目はない。どうしても避けて通れないなら…涼介、お前が出ろ。舞台がストリートである限り、僅かな可能性があるとしたら…お前が自分で走ることだ」
「どうだい?」「いいですねえ。もう文句のつけようがないですよ。これから先は感性の領域っていうか、ドライバーの好みの問題になっちまいますね」「お前の好みに合わせてやるよ。どうしたい?」「そうですか…でも、これだけ戦闘能力のある車にそこまでやる必要があるんですか?相手は素人だってのに」「公道レースだからって手を抜いたらやる意味がないんだぜ?いいか智幸、余計なことは考えず、本物のレースと同じ気合いで走るんだ。お前が今できる最高の仕事を俺に見せてみろ」「…分かりましたよ。社長がそこまで言うなら。足回りにいくらか注文があります。コーナーの入り口でもう少しリアが出るようなセッティングにしてください。今の俺ならその方がタイムを縮められます」
「ほー、随分印象が変わるもんだなあ。ボンネットひとつで。涼介さんからのアドバイスでハチロクの軽量化に取り組むことにしたんですよ。これから少しずつやっていく予定です」BGM - GIVE ME YOUR LOVE
「これが今日撮ってきたばかりのコースのビデオだ。これを見てもらえば分かることだが、上りと下りが半々にミックスされた複合ステージになっている」「そういう場合は俺と藤原のどっちが走ることになるんだ?」「それは、コースに着いてから決める。2台でプラクティクスをして、その仕上がりを見て俺が決める」「〈なんだよ、そんなの俺に決まってんだろ。エースなんだからよ〉」
「勝負はやってみなけりゃ分からないさ。俺なりに考えたうえで、やると決めたんだ。どんな相手だろうと絶対に逃げない。それがプロジェクトDのモットーだ」
「俺の方は公道レースに何かを期待してるわけじゃない。ただ、社長の行為には素直に従うべきだと思うからやるんだ。やると決めたからには素人が相手でも手加減はしない。プロとアマの間にどれくらいの差があるのか、お前らもよく見ておけよ」
BGM - NIGHT TRIP
★「気合い入ってるなあ、啓介さん」「そうですね…」「こっちはじっくりマイペースでいこう。出番があるかどうかは分かんないけど、きっちり仕上げるだけはしておこう」「はい」「いつものことだけど、俺たちの敵はコースだからな」
★「臨床病理学のレポートにかかりっきりで3日間徹夜だったのを思い出した。どうも頭の回転が鈍いと思った。起こさないでくれ」
「なるほど…アップダウンがキツいうえにコーナーのバリエーションが多くてバランスを取るのが難しい。兄貴がタフなコースと言ったのはそういう意味だろうな」
「とうとうボスキャラが出てきやがったな。どいつが今日のドライバーかいっぱつで分かったぜ」「俺もですよ。やっぱ、違いますね」
「予想もしてなかったことだなあ」「どういうことなんですかね?」「フッ、やってくれるぜ。群馬の兄ちゃんたちは。100パーセントFDでくると決めつけていたこっちの対応がモロに肩透かしを食らったよ。非力なハチロクを出すとは」
「随分舐められたもんだぜ、智幸も。だがな、それならそれで面白いことになるさ」
笠置サバ緒memo
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